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蒼炎の魔術師 〜冒険への飛翔〜  作者: 葉暮銀
冒険への飛翔編
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第136話 ファイアール公爵家からの謝罪と血風の乙女

 ファイアール公爵家の謝罪は9月16日だ。

 それまでにヴィア主任をBランク冒険者に上げる予定を立てる。少し早いが9月17日に王都に向けて帰る予定だ。

 9月14日と15日の二日間で430匹のサラマンダーを討伐した。これでヴィア主任のBランク冒険者への昇格が決まった。


 黄金製になったヴィア主任のギルドカード。ヴィア主任が嬉しそうな顔をしている。

 この1ヵ月、ヴィア主任はダンジョン活動がとても楽しそうだ。

 ミカはヴィア主任に頼っているのが良く分かる。またサイドさんはパーティの潤滑剤になってくれている。

 本当にバランスの取れた構成になっている。

 サイドさんに正式に冒険者パーティに入ってくれるように頼もうかな?


 【9月16日】の午前中、僕1人で冒険者ギルドに向かう。

 ファイアール公爵家からの謝罪を受けるためだ。

 冒険者ギルドに入ると2階の応接室に案内される。既に公爵家側の人々は在室していた。僕が入室すると立ち上がり、僕に頭を下げる。


 謝罪の場にはギルド長のインデルさんも同席だ。冒険者ギルドから正式にファイアール公爵家に抗議をしていたからだ。

 ファイアール公爵家側の人間は宗主のシンギ・ファイアールと筆頭執事のベルク・ファイアード、弟のガンギの3人である。

 ガンギは髪を脱色させられたようで真紅の髪色が薄い赤色になっていた。


 魔力は髪色に現れる。髪色が魔力でもある。

 髪を脱色する行為は魔力を制限する行為だ。髪が伸びて色が戻るまで魔力が弱いままとなる。髪を脱色された貴族は恥さらしだ。

 ガンギは不貞腐れた表情をしている。時たま僕の方を見て睨みつけてきた。


 まずはシンギ・ファイアールが謝罪の言葉を口にする。


「この度は不肖の息子がとんでもないことをしでかしまして誠に申し訳なく思っております。本人にも反省を促せて罰を与えているところです。どうぞこれでお許しください」


 ギルド長のインデルさんがキツい口調で話す。


「Bランク冒険者に向かってファイアーボールを撃つなんて、冒険者ギルドに対する敵対行為に当たります。今回は怪我も無く良かったですが、次は無いと思っておいてください。アキさんからは何か無いですか?」


「僕からは一点だけです。魔法は凶器です。簡単に人を殺す事ができます。その事をわからないようでは困ります。やって良い事と悪い事の判別がつくまでは、ガンギくんの髪は脱色しておいてください」


 その言葉を聞いたガンギは僕を睨みつけた。

 ガンギくん、君は視線で人を呪おうとしているのかな? お兄さんとして悲しいよ。


 シンギ・ファイアールはすぐに答える。


「当たり前です。そのような対応をしっかり取らせていただきます。この度は申し訳ありませんでした」


 そう言って頭を下げた。

 その後は当たり障りの無い雑談をしてファイアール公爵家の謝罪の場は終了となる。

 ガンギはずっと僕を睨んでいた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 1ヵ月弱のボムズ滞在も今日で終わりだ。

 リーザさんが腕を奮って料理をしてくれる。ささやかだけどヴィア主任のBランク冒険者昇格のお祝いと送別会をリビングで開いてくれた。

 僕以外の皆はお酒を相当飲んでいる。


「冬の長期休みは北のコンゴに行こう! 【鳳凰の細剣】を試してみたい!」


 ヴィア主任が大声で言っている。

 サイドさんが泣き出しそうな声を出す。


「冬場のコンゴなんて寒くて嫌ですよ。どうせ僕も参加するんでしょうから。【鳳凰の細剣】の試し切りは王都のオウガでやってください」


「そうだな。寒いのは嫌だな。王都に帰ったら早速オウガで試してみよう! 今から楽しみだ! サイド! 一緒に行くぞ!」


 僕は南のボムズ出身のため寒いのは嫌だ。取り敢えずは行かない方向になっていて安心した。

 ミカが僕の横に来て食事を取り分けてくれる。


「アキくん、お疲れ様。剣術レベルもだいぶ上がってるんじゃないの? 動きもスムーズになってるわ」


「そうかな。少しでもそうなっていると嬉しいよ。これからも朝の鍛錬は続けるからよろしくね」


「それよりアキくん、ボムズに来た時にギルド長がヴィア主任に【血風の乙女】って言ってたじゃない? あれ気にならない? 今ならヴィア主任に確認しても大丈夫そうじゃないかな?」


 陽気に話しているヴィア主任を見て僕もそう思った。このボムズ遠征でだいぶヴィア主任と打ち解けている。

 僕はソファでワインを飲んでいるヴィア主任の隣りにさりげなく座り、自然な口調を意識して聞いてみた。


「そういえばボムズに来た時にギルド長がヴィア主任の事を【血風の乙女】って言ってましたけど、何か由来はあるのですか?」


「あぁそれか、大した話じゃないぞ。カッターで冒険者をしている時に6人の暴漢に襲われてな。囲まれてしまって逃げ出せなくて。しょうがないから街中でウインドトルネードの魔法を使ったんだ。暴漢は切り刻まれて、その血をウインドトルネードが巻き上げて赤く染まったんだよ。やり過ぎと言われて、その後は騎士団の独房に1週間入れられたよ。独房から出てきた時には【血風の乙女】と言われていたな」


 ウインドトルネードを街中で使ったのか!?

 あれは術者を中心に切り刻む竜巻を起こさせる魔法のはずだ。

 範囲がそれなりに広く通常の戦闘では仲間を巻き込んでしまう危険性が高いため使う人はいない。それを暴漢に襲われたとはいえ、街中で使うとは……。

 ヴィア主任は美人のため、これからも面倒事に巻き込まれてしまう可能性が高い。

 注意しておく必要があると感じた。

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