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蒼炎の魔術師 〜冒険への飛翔〜  作者: 葉暮銀
王都センタール編
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第117話 夏休みの予定とザルツ・ウォレット

 僕の学校生活は充実している。学校の年間スケジュールの紙をみる。

【 4月】授業

【 5月】授業

【 6月】授業

【 7月】下旬に前期試験

【 8月】休み

【 9月】休み

【10月】授業

【11月】授業

【12月】15日まで授業、その後休み

【 1月】15日まで休み、その後授業

【 2月】下旬に後期試験

【 3月】休み


 実は僕は長期休みにBランクダンジョンの攻略に向けて動こうかと考え始めていた。

 制覇ではなく、攻略の開始である。簡単にいえば見学に行く感じだろう。


 王都に来てからいろいろあった。僕は振り回されていた。はっきり言って地に足がついていない。

 ダンジョン活動は学校を卒業してからと思っていたが、まるっきり離れるのも良くない事だと思う。

 ミカは僕の冒険者のパートナーと認識するためでもある。

 王都だとDクラスダンジョンまでしか無いから、どうしても作業になってしまう。

 だからまだ制覇していないBランクダンジョンの見学とCランクダンジョンの制覇を目指して行きたい。

 1番長い休みは8〜9月の2ヶ月。この時に冒険者活動をするのが1番良いと考えた。

 ミカと話し合って今年は夏にアクロでの海水浴は止める。そのかわり北の中央都市のコンゴに行き、観光とダンジョン活動をする予定だ。

 ヴィア主任は長期休み中も蒼炎の研究をしたかったようだが了解してくれた。


 今年の夏は、涼しい北の中央都市コンゴに行く事が決まった。


5月29日【黒の日】

 朝にヴィア研究室のドアを開けると知らない男性が目の前にいた。

 僕は挨拶しないといけないのに男性の容姿に驚いて声が出ない。

 緑色の髪色で切長な目、完璧な配置の鼻と口、色白な肌が彫刻に感じられる。

 男性の容姿の感想が綺麗と思ったのは初めてのことだ。年齢は20代半ばに見えるが定かではない。それは耳の先が尖っているから。

 僕が固まっているとその男性が話しかけてくれた。


「これはおはようございます。私はザルツ・ウォレットと申します。お邪魔してます」


 綺麗な声だった。高くもなく低くもなく、穏やかな印象を受ける声。

 僕は慌てて返事をする。


「おはようございます。アキ・ファイアールです。挨拶が遅れてすいませんでした」


 ザルツさんは僕を見ると怪訝そうな顔になった。

 そして僕に質問する。


「王都魔法学校の生徒さんだよね? 制服着てるもんね」


「はい、現在1回生です」


「失礼ながら、良くその髪色で王都魔法学校に入学できたね。信じられないよ」


 僕の頭を見て言われた。水属性と間違われたんだな。


「僕は水属性ではないんです。今は火属性のクラスにいます」


 驚いた顔をするザルツさん。その後、青褪める。

 もう一度僕の頭を確認してから、絞り出すように声を出す。


「ま、まさか君は蒼炎の魔法が使えたりするかな? そんな事はないよね。ある訳ないさ。ね、そうだよね!」


 僕は即答する。


「えっと、使えます。というより蒼炎の魔法しか使えないですけど」


 ザルツさんはその言葉を聞いて彫刻のような顔を歪め、手で覆う。そして「そんな、馬鹿な、本当なのか…」と呟いている。


 そこにサイドさんが来た。顔を手で覆うザルツさんに怪訝な表情を浮かべながら僕にザルツさんを紹介してくれる。


「アキくん。こちらはザルツ・ウォレットさん。例のステータスカードを開けてくれる人だよ」


 サイドさんはザルツさんに向き直る。


「どうしました、ザルツさん。大丈夫ですか? こちらの少年が例のステータスカードの持ち主のアキくんです」


 手から顔を上げて僕とサイドさんを見るザルツさん。そして声を上げる。


「何が何だか分からないなぁもう!」


 そこにボサボサ頭のヴィア主任が現れた。


「やっと来たか兄さん。待ってたよ」


 そのヴィア主任の言葉にちょっとだけ驚いていると、またザルツさんが僕を見つめていた。

 ザルツさんはため息をつく。

 そしてヴィア主任を見て言葉を発した。


「おはようヴィア。残念なお話がある。姉さんがここに来るかもしれない」


 ザルツさんが発した言葉はヴィア主任に衝撃を与えたようだ。

 ヴィア主任はザルツさんに「何を言ってるんだ! 兄さん! 遂にイカれたのか!」と言えば、ザルツさんは「イカれているのはお前だろ! 遠いところから来た兄に言う言葉か!」と言い返す。その後、2人は罵詈雑言を吐き続けた。


 2人が落ち着いてから来客スペースに移った。


 分かった事はザルツさんはヴィア主任のお兄さん。

 ザルツさんは北の中央都市のコンゴで魔道具職人をしている。そしてステータスカードを開けるため王都まで来た。


 ここまでは良かった。ザルツさんとヴィア主任の故郷の話になるとすぐに2人の言い合いが始まる。


 ザルツさんが怒鳴る。


「そもそも何でお前は蒼炎の魔法が使える少年がいる事を里に連絡してないんだ!」


 ヴィア主任が言い返す。


「そんな事、私知らないもの! 知らない事を出来るわけないでしょ!」


 ザルツさんが負けずに言い返す。


「お前はいつから里に帰ってないんだ! それにお前は定期的に里と連絡は取っているのか! お前がそうだから私が姉さんに怒られるんだぞ!」


 ヴィア主任がヒートアップする。


「あんな里に連絡するわけないでしょ! やっぱり兄さんはイカれてるのよ!」


 兄妹の言い合いに居たたまれなくなり、僕は言葉を発した。


「あの、僕たち席を外したほうがよろしいでしょうか?」


 ザルツさんは僕の言葉に反応した。


「ちょっと待ってくれ。悪いが私が里から頼まれている事を話させてくれないか?」


「はい、大丈夫です」


「実は私は里から、蒼炎の魔法が使える人がいた場合、里まで連れて行く事を頼まれている」


 里ってエルフの里の事だよな。西の中央都市カッターから馬車で2日ほど進んで、歩いて1日くらいかかるはず。

 ザルツさんが言葉を続ける。


「ただ君は王都魔法学校の生徒だ。授業があるから、今すぐ里に行けない。早くて長期休みの8月になるだろ? だから里の責任者の代理が君に会いにくる可能性が高くなると思う。僕はこれから直ぐに里に行かないといけない。カッター経由で行けば10日程度の時間かな」


 ザルツさんの話なら僕はここにいるだけだ。特に問題はないか。


「分かりました。僕はここで待っていれば良いのですね。それで里、あ、エルフの里ですよね?その責任者の代理の方が、もし来たら会えば良いのですね」


 大きく頷くザルツさん。ソファから立ち上がり自分の荷物を片付け始めた。

 それを見ていたヴィア主任がザルツさんに強い口調で話す。


「兄さん! まさかステータスカードを開けずに里に出発するつもりかい?」


「お前も姉さんの怖さは知っているだろ。少しでも油を売ってることがバレたら……。悪いが里から帰って来てからにしてくれ!」


 そう言うとザルツさんは僕に「よろしく頼むね」と言ってヴィア研究室を出て行った。

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