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蒼炎の魔術師 〜冒険への飛翔〜  作者: 葉暮銀
王都センタール編
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第110話 2度目の冒険への誘い

 ベッドに入っても寝付けなかった。

 今日の実験中の僕がミカに抱いていた感情がとても汚らしく感じた。僕はミカとどうなっていきたいのか自問自答していた。


 僕とミカの関係はなんだろ? ミカは僕の奴隷で従者で冒険者のパートナー。

 そうだ! 冒険者のパートナーだ。

 そっか、最近ダンジョンには攻略じゃなくて実験で行ってたから冒険者のパートナーって忘れてた。


 そこでふと【白狼伝説】を思い出す。

 物語の中でパーティメンバーと気持ちの面でおかしくなり掛けていた場面があった。

 あの時、ウルフはどうしてた?

 僕はマジックバックから自分のバイブルである【白狼伝説】を取り出す。

 ずっと1人で読んでいたボロボロの【白狼伝説】の本はファイアール公爵家から持ち出せなかった。これは皆んなに【白狼伝説】の良さを分かってもらおうと思って王都で買ったものだ。


 【白狼伝説】をペラペラ捲る。

 パーティメンバーと気持ちの面でおかしくなり掛けていた場面のページを開いた。

 その中のウルフのセリフだ。


「おいおい、何で皆んな、いがみ合っているんだい? 俺たちは仲間だろ? こういう時は初心に帰ろうぜ。何で俺たちは一緒にいるんだい? それが原点だよ」


 このセリフを読んで僕は初心に帰るのかと思った。僕はミカとの出会い、その時の気持ちを思い出そうとした。

 全然話しかけても反応が薄かったミカ。宿の一室で話しかけた。自分の秘密を話した。

 あの時僕はミカに何て言った?


「冒険者でいろいろ楽しいことをしたいんだよ。だから家出してきたんだ」


 確かこう言った。これは僕の原点だ。

 ミカは確か笑い出して……。


「あなたちっちゃいなりのくせに大胆な行動に出るのね。気に入ったわ。私も一緒に冒険者として楽しみたくなったわ。どうせ私は誰にも必要とされていないからね」


 こう返してくれた。ミカは冒険者を楽しみたくなったと言ってくれてた。

 そして僕はこう言ってた。


「僕も今まで誰にも必要とされてこなかったよ。だけど冒険者としてこれから楽しんでいきたい。それにミカは既に僕から必要とされているんだよ」


 そうだ。それから握手して僕たちは冒険者のパートナーになったんだ。

 これが僕とミカの原点だ。

 孤独な2人の気持ちが1つになった握手だった。


 奴隷じゃない、従者でもない、僕とミカは冒険者のパートナーだ。


 何でこんな事を忘れていたのか?

 愕然とした自分がいた。

 【白狼伝説】の開いていたページが3ページほどめくれた。

 そこの場面は仲直りする場面だった。


 女性のエルフにウルフが言ったセリフ。


「素直になれば簡単さ。つまらない意地は身を滅ぼすぞ。皆んなで冒険を楽しもうぜ!」


 このセリフを読んで気が付いた。そうか僕の複雑な心情はつまらない意地なんだ。僕はミカと冒険者として一緒に楽しみたいし、仲直りしたいんだ。


 素直になれば簡単か……。


 僕は【白狼伝説】の小説を持って、ミカのいるリビングに駆け出した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 リビングにはミカがいた。何もしないでただ座っている。

 僕に気が付いたミカは笑顔を見せてくれた。とても儚い笑顔だ。


 僕はミカにまず謝った。謝られたミカはキョトンとしていた。

 まずは僕の話を聞いて欲しいとミカに言って僕は喋り出す。


 蒼炎の使用の事で話し合ってから、ミカと薄皮一枚の壁を感じている話。最近、僕が感じていた感情。今日の自己嫌悪に陥っていた感情についても話す。奴隷や従者で無くミカは冒険者のパートナーと思っていると素直に全部話した。


 そしてミカの目を見て僕はミカに問う。


「僕は冒険者でいろいろ楽しいことをしたいんだよ。そしてミカは僕に必要な人だ。これからも冒険者のパートナーとして一緒に楽しんでくれないか?」


 2度目の冒険への誘いだ。

 そして僕は右手をミカの前に差し出す。

 ミカはその手を見て左腕の上腕部をさする。そして口を開く。


「腕の隷属紋から熱い感情が流れてきてる。私の好きな感情よ。これだからアキくんの奴隷はやめられないわ。いや奴隷は形だけね。従者も特に気にしない。いつの間にか、私は奴隷と従者という立場に引きずられていたのかもしれない。卑屈で臆病になってたみたい。私はアキくんの冒険者のパートナー。是非一緒に冒険を楽しみたいわ」


 そう言って僕の右手を握り締めてくれた。


 僕とミカは今までの溝を埋めるように話し合った。冒険者としてやりたい事や行きたい場所、好きな事や嫌いな事、これからの鍛錬方針なんかも話した。

 気が付いたら夜が明けていた。

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