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蒼炎の魔術師 〜冒険への飛翔〜  作者: 葉暮銀
王都センタール編
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第109話 ヴィア主任の謝罪と複雑な心境

「駄目です! そんなの絶対駄目です! そんな理由でアキくんの奴隷にならないでください!」


 ミカの悲痛な叫び声だった。

 虚を突かれたヴィア主任が口を閉じる。


 無言の空気が流れた。

 少し経ちヴィア主任が「うむ」と言ってから話し始めた。


「なるほど、確かにこれは私が悪かったようだ。私が奴隷になる案は撤回させてもらう。できれば許して欲しい」


 態度が急変して突然謝罪をしたヴィア主任に焦り、僕は慌てて話し出す。


「ヴィア主任が奴隷にならないでくれるならそれで良いですよ。謝る必要は無いし、怒ってもいないです」


 ヴィア主任は心痛な顔で口を開いた。


「アキくん。君からそう言ってもらえると助かるよ。だけど私は軽く考え過ぎてた。それにミカくんの想いを踏みにじる言動だった。これは研究の事になると周りが見えなくなる私の悪いところだ。ミカくん、改めて謝罪させてもらう。本当にすまなかった」


 ミカに頭を下げるヴィア主任。ミカは慌てながらヴィア主任に話す。


「私こそすいません。いきなり大きな声をあげてしまって。頭を上げてください。もう大丈夫ですから」


 ヴィア主任は頭を上げ、ミカに「ありがとう」と言った。

 そして僕の方を向いて話し始める。


「どれ、私の言動のせいで悪かったな。実験を再開する前に確認しておきたい事があったんだ。先程、蒼炎を発動させた時の感情を【喜びの感情と快楽の感情】と言っていたのだが、快楽の感情とはなんだね。どのような感情なんだ?」


 そうヴィア主任に言われて恥ずかしくなった。射精したような感情とは。

 僕は誤魔化そうと努力を試みる。


「そんな事言いましたかね。何か良く覚えて無いんですけど……」


 僕の目を凝視するヴィア主任。

 こ、怖い。

 確信した顔でヴィア主任は僕に言った。


「困るよアキくん、嘘をついては。これは実験なんだ。しっかりとしたデータを取りたいんだよ」


 駄目だ。逃げられない。諦めて重い口を僕は開いた。


「射精の感覚です」


「射精と言うと男性が性器から精液を出す時の感覚って事かな?」


 僕は顔が赤くなり、か細い声で言葉を発する。


「はい、その射精です」


「分かった。なるほど興味深いな。アキくんもしっかりと実験に協力してくれないと困るぞ。蒼炎の魔法の研究は未知の魔法を調べることだからな」


 そうヴィア主任は僕に言って、周りのスタッフに指示を開始した。


 実験が開始される前にミカが話しかけてきた。


「なんかバタバタしてしまったけど、改めてアキくんの言葉を信じ切れなかった事を謝りたいの。すいませんでした」


 そう言ってミカは頭を下げる。

 僕は、分かってくれた事に対する嬉しい感情、それ見た事かと嘲りたい感情、また元のような関係に戻れるかもという安堵感、何ともいえない複雑な感情を持った。

 僕はどんな顔をしているのだろうか? そんな事を考えながら口を開いた。


「ミカが分かってくれて僕は嬉しいよ。それだけで僕は充分だから。気にしないでいてね」


 気にしないでと言ったくせに気にしろと思っている感情もある。いつから僕はこんな性格になったのだろう。元からなのかな? 今まで人と付き合いが希薄だったから分からなかったのかもしれない。

 そんな感情を隠して僕はミカに笑顔を見せる。


「もうそろそろ実験の開始だね。次の蒼炎はどんな感情かな?」


 そう僕は言ってミカから離れた。


 その後、10回蒼炎を撃ったが全て落ち着いた感情の蒼炎だった。半径は3メトルくらいで安定している。

 ただ、その落ち着いた感情にも違いがあるのが今回は感じられた。

 なんだろう。間違いなく蒼炎を撃つたびに蒼炎の感情を一層近くに感じられる感じだ。

 このまま蒼炎を撃ち続ければどうなるんだろう? 不思議な事に恐怖はない。反対に楽しみでしょうがない。休みの日に蒼炎の魔法を撃ちに行こうかな。


 僕は帰りの馬車の中で、ミカの事を考えていた。

 僕はミカとどういう関係でいたいんだろう。

 もやもやした気持ちを持ったまま馬車は研究所の前についた。


 ヴィア主任とサイドさんと別れて学校の食堂に行く。食堂で夕食を食べ帰宅した。

 入浴し、リビングで雑誌を読む。向かいのソファに座りミカも雑誌を読み始めた。

 会話が無く静かだった。

 僕は雑誌の文字を目で追うだけだ。僕は自分の言葉で形容できない感情でいっぱいだった。

 ミカに「おやすみなさい」と言って自室に入った。

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