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蒼炎の魔術師 〜冒険への飛翔〜  作者: 葉暮銀
王都センタール編
421/484

第107話 第二回蒼炎の魔法ダンジョン外実験開始

 今日は5月4日の【赤の日】。

 蒼炎の魔法の第二回ダンジョン外使用の実験が始まった。


 以前、実験を行った王都セントールの郊外の山道を抜けたところの広場に戻ってきた。

 前回の蒼炎の魔法の痕跡が残っている。ところどころに半円球の窪みがある。


 今回も念のため、研究所の水属性の魔法が使える研究員が8名同行している。


 前回と同じようにサイドさんが的を設置を始めていた。

 ミカを見ると強張った顔をしている。僕はミカの横に移動して声をかけた。


「ミカ、大丈夫だよ。心配しないでも」


 ミカが僕を見つめる。不安そうな顔だ。ミカは何も言わない。

 ここ数日、ミカは僕に何かを言いたい顔を見せていた。でもミカは何も言わずに我慢していた。

 僕はミカが僕に言いたい事を理解している。蒼炎のダンジョン外使用の実験をやめさせたいのだろう。

 ミカは自分の考えが僕の意向に沿わない事がわかっている。それで僕に言い出さなかったんだろう。

 僕はミカの心情を理解しながらも、放置してきた。


 僕はミカの不安そうな顔を見つめる。そしてもう一度ミカに言葉をかけた。


「大丈夫って言ってるだろ? 何も心配いらないから」


 ミカが硬く閉じていた口を開く。


「でも…」


「でもも何もないんだ。前にも言ったけど蒼炎は僕とミカを守ってくれる魔法だ。蒼炎の事は信じられなくても、僕の言う事は信じて欲しい」


 その僕の言葉を聞いてミカは寂しそうに俯く。

そんなミカの態度に僕は少し納得がいかなかった。イラついてもいた。


 ヴィア主任から声がかかる。


「実験の準備が出来たぞ。アキくんの準備も大丈夫か」


 僕はイラついた感情に蓋をして返事をした。


「問題ありません」


「それなら早速始めよう。最初の一発目が大切だ。ダンジョン内使用でストレスを溜めた後の最初の蒼炎の魔法だからな。この間と同じように、蒼炎を撃った後に蒼炎から感じた感情を伝えてくれ。最初の一発目は持続時間が長いと思うから、感情の変化があった時にも教えて欲しい。後は魔法の効果が消える時がわかったらそれも教えてくれ」


「わかりました」


 僕はそう言うと的を見据えた。


 今日の蒼炎は喜んでくれるかな? 楽しんでくれると良いな。そう心の中で思い、僕は蒼炎の魔法の詠唱を始める。


【焔の真理、】

 蒼い炎が右手に集まってくる。蒼炎がワクワクしている。


【全てを燃やし尽くす業火、】

 集まって来た蒼い炎が回転をしながら直径20セチルくらいになる。今にも飛び出したい感情が伝わる。


【蒼炎!】

 蒼い玉が的に向かって一直線に向かう! 射精したような感情が伝わる。


 蒼炎は的に当たった。


「喜びの感情と快楽の感情が伝わりました!」


 僕は急いで蒼炎の感情を伝える。

 蒼炎は的に当たると、そこから光が広がって行く。やはり蒼炎のストレスを溜めたせいか半径3メトルを超えても拡大していく。

 蒼炎は前回より大きい半径10メトルくらいで拡大を止めた。


「蒼炎は今、とても楽しんでいます!」


 蒼炎の楽しい感情が僕に伝わり、そのせいで僕の声も弾んでいた。


「今のところは楽しみの感情が持続しています。怒りの感情はありません」


 僕は半径10メトルの蒼炎の回転を見ながら思った。本当に楽しそうだな。ダンジョン内での拗ねていた感情と全然違うや。今日はストレスを解消してくれ。

 蒼炎の楽しい感情を絶えず感じる。僕も段々と楽しくなってきた。

 もっともっと楽しんでくれ! 今日はダンジョン外だ! 気が済むまではしゃいでくれ!


 蒼炎は僕の感情を理解したのか、回転を早めた感じを受けた。

 ちょっとびっくりした。こちらの感情が伝わったのかな?


「気のせいかもしれませんが、今、蒼炎の回転が早まりませんでしたか?」


 僕の近くで蒼炎を見ていたヴィア主任に聞いた。


「どうかな? そう言われると変わった感じも受けるがわかりにくいな」


 ヴィア主任がそう言うなら、やっぱり僕の気のせいかな。そう思いながら蒼炎を見つめていた。


 2分ほど経って、蒼炎が満足したような感情が流れてくる。


「蒼炎が満足しました。もう少しで消えます。」


 僕がそう言って直ぐに蒼炎が白い炎に変わり、赤い炎に変わる。そして球体の形が崩れて消えた。

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