第101話 説教の違いと不穏な空気
お昼の時間になった。ミカと2人で学校の食堂に向かう。
今日の日替わり定食は焼き魚定食だった。2人とも日替わり定食を頼んだ。
ミカが僕の焼き魚定食の魚の骨を取っている。ミカは僕の焼き魚の骨を取るのが好きみたい。一度「魚の骨の取り方を教えて」と頼んだがその時は何となく断られている。
楽しそうに僕の焼き魚の骨を取ってるミカを見ながら僕は話しかけた。
「僕は生まれて初めて説教と言うものをされたよ。どんなものかと思っていたが、とても良いもんだね」
笑顔の僕を見てミカが言う。
「説教を喜ぶなんて言うのはアキくんくらいですよ。普通は嫌がりますよ。私は学校で良くされましたから」
「ふーん。そうなんだ。でもヴィア主任の説教が終わったらとても暖かい気持ちになれたんだ。ヴィア主任が僕たちの事を真剣に考えて、話をしていてくれたのを感じたよ。ヴィア主任は聡明で、綺麗で、とても優しい人だよ」
ミカが僕の焼き魚の骨を取り終わった。僕の顔を見ながら口を開く。
「確かにヴィア主任は素敵な女性ですね。それに今日の説教の内容は色々と考えさせられました。学校で受けていた説教とは雲泥の差です」
僕は焼き魚を食べながら会話を続ける。
「僕も色々と考える必要を感じたよ。僕はもう少し、どういう冒険者になりたいのか考えていかないとダメだね。今回、ヴィア主任の人としての大きさを感じちゃった。こんな経験は初めてだよ」
お昼ごはんを食べ終わって、赤のAクラスの教室に行った。ここでミカとは一度お別れだ。
教室のドアを開けると皆んなグッタリしている。自分の席に座るとシズカが話しかけてきた。
「午前中の魔法実技の授業は最悪だったわ。魔法を撃って的を外すとその場で腕立て20回、腹筋を20回やらされるのよ。こんなの今までなかったわ」
筋トレが魔法を外した罰なんだ。だから皆んなグッタリしてるんだな。
「それは大変だったね。シズカは大丈夫だった?」
「私は最後の方で集中力を切らして一回だけ罰を受けたわ。可哀想なのはまだ魔法の命中率が悪い人よ。罰の腕立て20回と腹筋を20回がこなせないとシベリーさんの怒声が飛ぶの。その声がキンキン声で神経に刺さるのよ。そのせいで集中力を落とす生徒が続出よ。終わりはずっと説教してるの。早く説教が終われって皆んな思っていたと思うわ」
ヴィア主任とシベリーさんの説教には随分違いがあるらしい。
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その後、授業が終わりミカと合流する。今日の夜から食事を作ってくれていたユリさんがいない。
今日の晩御飯は学校の食堂を使う事にした。
時間を潰すため、学校の敷地にある外のベンチでミカと今日のヴィア主任の話の内容を良く話し合うり
今頃、冒険者ギルド本部からギルド長に僕達の出頭要請を破棄させている頃かなぁ。周りを見ると木々がだいぶ青々としてきていた。
学校の食堂は隣りの研究所からも食べに来る人がいる。研究所職員のために食堂は朝早くから夜遅くまで開いている。
お昼の食堂とは違って学生の制服はほとんどなく白衣姿の人が多い。
夜は2人共、香辛料の効いたボムズ料理を頼んだ。ボムズ料理って、たまに食べたくなるんだよね。
ボムズ料理を食べているとスーツ姿の男性が近づいてきた。校長先生のポーツ・エアージだ。
校長先生も晩御飯を食べに来たようだ。僕らと同じボムズ料理だった。
席が空いているのに校長先生は僕たちのテーブルにやってきた。
「こちらの席に座って良いかな? アキくん?」
「どうぞ校長先生」
そう言うと僕たちのテーブルに座った。ボムズ料理を食べながら校長先生は話し出す。
「どうですか? 学校生活は?」
「何とか頑張っております。まだ慣れていないところもありますが、毎日楽しいです」
「それは良かった。そういえば君が使える新しい魔法の開発はどうなっています?」
「まだまだです。今は呪文の文言の基礎を勉強中です」
「そうですか。私の学生時代の専門が呪文の文言でしたのでね。できれば私も一緒に開発の仲間になりたいんです。まぁ校長の仕事があるから無理ですが」
そう言って校長先生は笑っていた。
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晩御飯を食べて家に向かう。家の前に人影があった。ミカと僕は腰のポーチタイプのマジックバックから【昇龍の剣】を取り出す。
近づいてみると、ギルド職員のパメラだった。呼び鈴を鳴らしても誰も応対が無く、門の外で待っていたようだ。
他に人影は見当たらない。一応ホッとして少し警戒を解く。
パメラに近づいて家の門の前で話す。
「何か用ですか? パメラさん」
「はい、用件を伝えにきました」
「ならこの場で聞きます。なんでしょうか?」
用件を伝えに来た人を家に上げず、家の門先でその用件を聞くのは失礼な行為だが、家に上げる事はしなかった。
その失礼をされたパメラは少し眉を顰めたが話を始めた。
「先日、お伝えしたアキ様とミカ様の出頭要請は無くなりました。もうギルドまで出頭する必要はございません。それでは失礼いたします」
キツい口調だった。そしてパメラは帰っていった。