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蒼炎の魔術師 〜冒険への飛翔〜  作者: 葉暮銀
王都センタール編
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第97話 難癖の付け方

 綺麗なヴィア主任を見てミカは驚いていた。

 ヴィア主任はソファに座り大きな息を一つつく。

 ヴィアさんはサイドさんにお茶を入れるようにお願いし、ぼくとミカを見て話し始めた。


「君たち2人には言いたい事がたくさんあるがまずは気になっていると思うからここまで分かった情報から話そう」


 そう言って出掛ける時に持っていった鞄から資料を出した。


「まずは確認だ。冒険者ギルドは他の国にも存在している多国間ギルドだ。そして全ての冒険者ギルドでは同じ決まりを作っている。そう言った決まりを作るのが冒険者ギルド本部になる。冒険者ギルド本部はまずここ王国センタールにあるんだ」


 それは知らなかった。冒険者ギルド本部かぁ。冒険者ギルドの総本山って感じかな。

 ヴィア主任が話を続ける。


「冒険者ギルド本部は各地域の管理職の人事権を掌握している。ここ冒険者ギルドセンタール支部のギルド長も冒険者ギルド本部が誰になるか決定している。ギルド長のビングス・エアードも本部で決められた人事だ。人事権があると言うことは監査権や懲戒権も持っている。ここまでは良いか?」


 ギルド長の上司にあたるのが本部って事だね。僕たちが頷くとヴィア主任は口を開いた。


「まぁここのギルド長がどんな立場かわかってもらえれば問題ない。それでは本題だ。ギルド長であるビングス・エアードが君達に出頭命令を出して呼び出そうとしているのは懲罰のためだ」


 王都では冒険者ギルドから距離を取っているのにな。僕は理不尽に感じた。


 「僕は無罪です」と心を込めてヴィア主任を見て話す。


「でも僕たちは身に覚えがないですよ」


「君達は冒険者ギルドに登録した時に冒険者ギルドで注意書の冊子を貰わなかったかい?」


 そういってヴィア主任はその冊子を出してくる。


「この冊子にはまぁ一般的な注意書きが大きく載っている。それは魔石の買い取りやギルドポイント、冒険者ランクなどについての説明がそれに当たる。しかしこれの最後の方のページには細かい字で冒険者規則が並んでいる。これは古代からある冒険者ギルドができた時から変わっていないそうだ。話は変わってしまったな。君たちはこの細かい文字を読んだかな?」


 一応一度は目を通した。ミカも僕と同じくらいだ。それを伝えた。ヴィア主任が話を再開している。


「この冒険者規則第6条を読んでみよう。冒険者はダンジョンに積極的に行き、モンスターの討伐をし、魔石の収集に努めなければならない。次はこれだ」


 そう言って違う箇所を指差して読み上げる。


「冒険者規則第35条、Bランク冒険者になった者は各支部のギルド長の助言を受け、ダンジョン探索に臨まなければならない」


「まずはこの2つから見てみよう。先に35条のギルド長の助言についてだ。この35条はギルド長がBランク冒険者をAランク冒険者に導くために書かれているんだ。たぶん君達もBランク冒険者になった時にギルド長と面会しているはずだ。その時にAランク冒険者を目指すように仄めかされたはずだ」


 僕はどうだったかな。ギルド長からは軽く目指してみたらって感じだったなぁ。でもウォータール公爵家との面会の話はあったしな。ウォータール公爵家では確かにAランク冒険者を目指すように懇願された。

 ヴィア主任が言葉を続ける。


「次に6条の項目、これは努力義務規定と言って、破っても罰則がないものなんだ。ついでに言うと本来の冒険者ギルドの趣旨から言えばBランク冒険者はこの6条を守る必要が無い」


 お茶を一口飲んで話続ける。


「Bランク冒険者はAランク冒険者になる事だけ考えてもらえば良いんだ。クズ魔石なんて収集している場合じゃないんだよ。Bランク冒険者からはギルドポイントも付かないだろ。この事からもAランク冒険者になる事が至上命題だ」


 ここで一つ息をつく。ヴィア主任は話を続ける。


「しかしギルド長のビングス・エアードはこの2つの項目を曲解させてるんだ。魔石を収集しない冒険者は違反、これは6条違反。次に35条でする助言は、魔石を積極的に持ってくるようにって助言するつもりだろう」


 話を聞いていて大人って怖いと思った。僕をみてにこりと笑いヴィア主任が話を続ける。


「元官僚を舐めるな。まだまだあるぞ。次はこの項目」


 そしてヴィア主任は次の箇所を指差し読み上げる。


「冒険者規則第12条、冒険者は問題が生じた場合には、その解決方法としてみだりに暴力をふるってはならない」


 ヴィア主任はこちらを見て確認するように話す。


「君達はこの王都の初日に冒険者ギルドの中で3人の男性冒険者に絡まれただろ? その時、ミカさんが3人の腹部に拳を打ち込んだみたいだね」


 あの件か。あれは相手が理不尽だった。こちらは結構我慢した。僕は反論する。


「あれはあちらが難癖をつけてきて、ミカを寄越せって言い出したからですよ」


 理解しているから安心しろって顔をするヴィア主任。そして僕を諭す。


「いざこざがあったらその後は水掛け論になる。この3人の冒険者は既にギルド長のビングス・エアードの手の内にある。ある事ない事偽証するつもりだ。しっかり対応しないと君達が理不尽に一方的に暴力を振るったことになるよ」


 そしてヴィア主任は呆れた声を出す。


「本当はこの文面も喧嘩しないでねってくらいの項目だ。みだりにって言葉があるだろ。気性の激しい冒険者の暴力沙汰は日常茶飯事だろ。君達の暴力くらいは普通はなんてことないね」


 そして次の項目を指差してヴィア主任は読み上げる。


「冒険者規則第28条、冒険者ランクの高い冒険者はそれより低いランクの冒険者の模範となるように努めなければならない。」


 どんどん話を続けるヴィア主任。


「ランクが高いBランク冒険者が魔石は納品しない、暴力は振るう、ギルド長の助言を聞かないとなると模範では無いと言いたいのだろう。ただこの項目も努力義務規定だから罰則はない」


 まだまだ話が続くヴィア主任。


「冒険者規則第42条、冒険者規則を破る者については各支部のギルド長が懲罰を加える事ができる」


 ヴィア主任はこちらを見て最後のまとめを話した。


「最後はこれで纏めるつもりだ。これだけ違反をする冒険者はランクを下げるか、冒険者登録の失効の懲罰をチラつかせて、それが嫌なら魔石を一杯納品しろって事だな」


 もうお腹いっぱいです。

 難癖付けようとするといくらでもつけられるのね。

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