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蒼炎の魔術師 〜冒険への飛翔〜  作者: 葉暮銀
王都センタール編
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第93話 不貞腐れる蒼炎と形だけの謁見

 次の日の朝、僕は庭に出て鍛錬を始める。

 一つ一つ丁寧に素振りの型を続けていく。いろんなことを考えていたが流れる汗と共に無心で素振りができるようになってきた。

 単調ではあるが集中力が必要な連続した動きは乱れていた僕の心を平穏にしてくれる。


 朝食を一緒に食べたミカはいつもと変わらない様子だ。

 だけど薄皮1枚、僕とミカの間に壁ができた感じを受けた。


 それから次の休みの日まで、もどかしさを感じながら学校に行き、授業を受けた。


 ヴィア主任からは事細かく蒼炎の感情について説明させられた。

 僕はミカと話して改めて気付かされた事がある。それは蒼炎が僕の感情も理解してくれているって事だ。その事をヴィア主任に言ったら怒られた。

 そういう大事な事は早く言えって。

 だって無意識に感じてたことだからしょうがないと思う。怒られるのは理不尽だ。


 休み2日前の【黒の日】にダンジョンにいつものメンバーの4人で行った。

 今はダンジョン内で蒼炎を使っても感情が良く分かる。

 蒼炎が不貞腐れている。僕に対して「しょうがねぇなぁ」って感じだ。

 僕は蒼炎の魔法を撃っていて微笑んでしまう。

 不貞腐れていながらも呪文の詠唱に応えて蒼炎は発現してくれている。拗ねる魔法って何って思ったら自然に笑みになった。


 その蒼炎の感情をヴィア主任に伝えたら、なんとも言えない表情をしていた。

 蒼炎の威力と不貞腐れている蒼炎とのギャップを感じたみたい。


 来週は2回ダンジョンで蒼炎を撃ちに行く予定で、その次の週にこの間の王都郊外まで出向きダンジョン外での蒼炎の感情と威力をみるようだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 4月19日の【無の日】になった。今日は昼前に国王陛下と謁見をし、会食をする事になっている。

 着て行く服装は今年の新年パーティーで作ったもの。

 ミカも呼ばれているためドレスを着ている。相変わらず綺麗だ。僕を見て微笑んでくれる。

 だけど2人の間の薄皮の壁は残ったままだ。

 どうすればこれはなくなるのだろう。


 王宮からお迎えの馬車が来た。さすがに立派で豪華だ。後から聞いたが特注品らしい。


 王城は王都センタールの城壁で囲まれた部分のど真ん中に位置している小高い丘の上に建てられていて、王城の奥に王宮がある。

 今日はまず王城の謁見の間で国王陛下に挨拶をする。その後王宮に場所を変え、会食するという流れだ。


 謁見はすぐに終わるとのこと。その後王宮の別室に移動して気楽にお話しをしたいそうだ。

 王城の中は無骨な感じの雰囲気だった。通路を歩いていると威圧感を感じる。

 ケーキに釣られてここまで来たが、僕は少し後悔した。


 自分の謁見の順番になる前に別室にて待機する。

 やっぱり緊張してくる。実は謁見についての儀礼はミカから教わった。さすが帝国の公爵家の娘である。


 自分の番が来て謁見の間の分厚い扉が開かれる。

 目線を国王陛下に合わせないよう注意し、赤い絨毯を歩く。後方にはミカがついてきている。国王陛下の前5メトルのところまで歩きそこで片膝をつく。目線は下を向いたまま頭を下げる。


「面を上げてくれて構わんぞ」


 頭上から威圧感のある声をかけられた。


 頭を上げ目に入って来たのは玉座に座っているリンカイ王国の国王陛下であるカマル・リンカイだ。

 歳は今年で42歳。髪色は青色である。目鼻立ちがしっかりしており、その鋭い目は人を萎縮させる。

 その眼光に一瞬怯んだが儀礼どおり挨拶をする。


「ファイアール公爵家のアキ・ファイアールです。本日はお目通りが叶い、光栄に存じます」


 そう言って頭をもう一度下げる。

 次はミカの挨拶と思っていたら頭上から大笑いされた。


「良い良い気楽にやれ。儀礼も付け焼き刃なのが良く分かるぞ。アキ殿にそんなのは望んでいない。そちらがミカ・エンジバーグだな。帝国との戦争は不幸な出来事だったな。今日は気にせず楽しんで行ってくれ」


 呆気に取られ顔を上げてしまった。そこには先程の眼光鋭い視線ではなく、イタズラを成功させたような笑顔の目だ。

 横に控えていた側近らしき男性が眉を顰める。その眉を顰めた側近に陛下は気にせず指示を出す。


「午前中の仕事は終わりだ。ワシはこれから王宮に引っ込んでアキ殿とミカ殿と楽しく会話させてもらうわ。案内はワシがするからお前たちは仕事に戻れ。あとは会食の準備ができたら知らせにこい! それじゃ行くか」


 そう陛下は言い、僕とミカを王宮へ案内した。

 いくらなんでも案内を国王陛下がやるなんて。呆気に取られたまま、陛下の後を着いていった。


 王宮に入ると無骨であった王城の雰囲気とは変わり柔らかい印象を受けた。

 案内された部屋は落ち着いた印象を受けるが飾ってある美術品は高そうだ。


 席に座らされ、お茶が出てきた。少し落ち着いたところで陛下が言葉を発した。


「すまんなぁ。本当は謁見なんかしなくて良いんだが外交部がうるさくてな。やった記録が残ればあとは良いんだよ」


 そう軽く言われた。

 これがリンカイ王国の国王陛下?

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