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蒼炎の魔術師 〜冒険への飛翔〜  作者: 葉暮銀
王都センタール編
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第90話 感情を持つ魔法!?

 南門を抜けて城壁外の市街地を抜ける。途中からボムズ行きの街道とは違う道を進んだ。どんどん道が悪くなるし狭くなる。

 馬車で行けるところまで行ってそこからは徒歩となった。林の中の山道を歩く。

 半刻《1時間》ほど歩くと視界が広がってくる。

軽い丘の頂上に着いた。

 とても開けた場所だ。周りには燃えるような木はない。下は土だ。

 確かにこれだけ広ければ周りに迷惑はかけないだろう。


 まずは一息ついて水筒の水を飲む。

 落ち着いたところで、サイドさんが蒼炎を当てる的を準備し始めた。


 ヴィア主任が僕に説明をする。


「念のため距離はしっかりとる。入試の時の蒼炎は半径25メトルくらいだ。50メトル離れて蒼炎を撃って見てくれ」


 的の準備ができてサイドさんがこちらに戻ってきた。同行してきた研究員は万が一に備えて僕の後ろに控えている。


 ヴィア主任の声が上がる。


「よし! それではこれから蒼炎のダンジョン外使用の研究を開始する。アキくん、よろしく頼むぞ!」


 僕はその言葉に頷き、蒼炎の呪文の詠唱を始めた。


【焔の真理、】

 その刹那感じた。蒼炎が喜んでいる!


【全てを燃やし尽くす業火、】

 蒼炎の喜びが膨らんでいく!


【蒼炎!】

 蒼炎の歓喜の感情が爆発した!


 直径20セチルほどの蒼い玉が的に向かって一直線に向かう。

 着弾!


 蒼炎は的の中心に当たると、そこから光が広がって行く。

 半径3メトルを超えても拡大続ける。


 やはり25メトルくらいになるのかなっと思っていたら、半径8メトルくらいで蒼炎の大きさは止まっていた。


 今日の蒼炎は笑っていた。確かにそう感じる。楽しそうだ。

 横では真剣な顔で蒼炎を観ているヴィア主任。

 1分ほど経っても蒼炎は燃えていた。

 ヴィア主任が待機していた研究員に水魔法の対処の指示を出す。


 僕は口を開いた。


「ヴィア主任、大丈夫ですよ。もう少しで蒼炎は消えます」


 その言葉を言って、直ぐに蒼炎は蒼い炎が白い炎に変わり、しばらくすると赤い炎に変わる。球体の形が崩れてきた。

 残ったのは的から半径8メトルくらいの半球体の穴だった。


「どう言うことだ、アキくん。なんで蒼炎が消える事がわかった?」


 軽い詰問調でヴィア主任が僕に聞く。


「蒼炎が満足し終わったからです」


 僕は思ったとおりの事を言った。怪訝そうな顔でヴィア主任が言葉を返す。


「蒼炎が満足? 君は何を言っているんだ?」


「信じられないかもしれませんが僕にはそう感じました」


 額に手を当てて考え込むヴィア主任。しばらく経ってから僕に話しかけた。


「まさか君は蒼炎には感情があるって言っているのか」


 僕はゆっくり返答する。


「今日、蒼炎を撃ってみて確信しました。僕に蒼炎の感情がはっきり伝わってきましたから」


「俄には信じられないな。魔法に感情があるだなんて。私は今まで無数に魔法を発動させてきた。そんな魔法の感情を感じたことはない」


「僕は蒼炎しか使えないから、良くわからないです」


「それなら君はいつも蒼炎を撃つと蒼炎の感情を感じていたのか?」


「そんな事はありません。でも確かに今日は感じました」


 矢継ぎ早に質問をしてくるヴィア主任。


「それでは、今日以外で今まで蒼炎の感情を感じたことはあるかね」


 僕は言うべきだと思ってヴィア主任に話した。


「蒼炎の感情を初めて感じたのは入学試験の蒼炎です。その時には怒りの感情でした」


 目を見開くヴィア主任。

 僕は言葉を続ける。


「実はその後、ヴィア主任達とダンジョンに行きましたよね。その時、蒼炎を撃っているとなんか今まで感じた事の無い違和感があったんです。その違和感はダンジョンで蒼炎を使うたびに大きくなっていました。今分かりました。違和感は蒼炎のストレスです。蒼炎はダンジョンで使われるのを嫌がっています。理由はわかりませんが」


 僕の言葉を聞いてヴィアさんが話し始めた。


「あまりにも突拍子も無い話だから、なんとも評価しにくいな。今後の研究が必要かもしれないな。魔法がストレスを感じるなんて論文を発表したら笑い者になりそうだ。ちょっと頭を整理するから少し時間をくれるかな」


 そう言って周囲を歩き始めるヴィアさん。歩きながらぶつぶつ言っている。

 僕はヴィア主任の考えが纏まるまで少し離れて待つことにした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 僕の横にミカが寄ってきて話しかけてきた。


「ヴィア主任との会話を聞いていたけどアキくんは蒼炎の感情を感じるって事なの?」


「そうだね。入学試験の時も感じたけど、今日の蒼炎で確信したよ。間違いなく蒼炎は感情を持っているんだ」


「アキくんがそういうなら私は信じる事ができるわ。蒼炎に感情があるんでしょう。だけど許せない事もあるんだからね」


 ちょっと怒り顔のミカ。


「な、なんでしょうか? 心当たりが無いのですが?」


 そう言って少し後ずさる。

 ニッコリ笑ってミカは言った。


「先程のヴィア主任との話の中で、最近ダンジョンで蒼炎を使うたびに違和感が大きくなっていたって言っていたでしょ! 何かしらおかしいって感じたならば私にしっかり話してくれないと。私はアキくんの奴隷であり従者であり、そして冒険者パートナーでしょ!」


 ミカの言ってる事は理解できるし、正しい事だ。

 ひたすら謝り許してもらったところでヴィア主任が近づいてきた。


「待たせてすまなかったな皆んな。研究は仮定を立ててみて実験してみる。それで研究結果から仮定が正しいかどうか考察する。当たり前の話だ。私はまず蒼炎の魔法には感情があると仮定を立てる。それに伴った実験を重ねていきたい。突拍子も無い仮定ではあるがそれならば実験でこの仮定が違うことを立証すれば良い。時間は有限だ。早速実験を始めよう!」


 そう言ってサイドさんに迅速に指示を出す。

 僕には細かく指示と確認をした。

 まず、今日これからこのダンジョン外で蒼炎を撃つことは問題ないかどうか?

 また撃った時に蒼炎の感情を感じるか、感じたならばどのような感情か? できれば蒼炎を撃って直ぐに知らせてほしい。

 その他には蒼炎が消える時が分かるようなら知らせるようにいわれた。


 サイドさんが的の準備を終えた。先程とは別の場所だ。


 ヴィア主任が声を出す。


「仕切り直して研究再開するぞ! アキくん、お願いする」


 僕は蒼炎を撃つ準備をする。

 ゆっくりと蒼炎の魔法の詠唱を始めた。


【焔の真理、】

 おだやかな蒼炎の感情だ。


【全てを燃やし尽くす業火、】

 蒼炎の感情は落ち着いている。


【蒼炎!】

 冷静な感情の蒼炎だった。


 僕はすぐにそれを伝える。


「とても落ち着いていました! 穏やかです!」


 蒼炎は的に当たると半径3メトルほどに広がり、そこで止まった。周りには余波が生じている。

 10秒ほどで僕が声をかける。


「もう消えます!」


 そのあと直ぐに白い炎になって、赤い炎、球体が崩れて消えた。

 ヴィア主任が冷静に実験結果を見ていた。ヴィア主任は近づいて来て、僕に質問をする。


「まずは本当に蒼炎の魔法の持続時間を君は見事に当てた。仮定の話だが君が調整しているって事はないかい?」


「それができればボクも嬉しいですけど。そんな嘘をついても僕は得しませんよ」


「念のための確認だよ。一応考えられることは提示して潰していかないとね。今の蒼炎の魔法は随分とおとなしい感じだった。蒼炎の感情と威力がリンクしている感じかな。もう少し実験を続けよう」


 それから5回蒼炎を撃ったが全て落ち着いた感情の蒼炎だ。半径は3メトルくらいで安定していた。


 ヴィア主任が言う。


「君の話から考えてみると今日の蒼炎はもうストレスが解消されて落ち着いてしまったようだね。たぶんこのまま今日実験しても変わらないデータだとは思うけど、あと5回ほどやってみよう。その後、杖を使っても蒼炎の感情が分かるか試してみよう」


 その後、5回ほど蒼炎を撃ったが全て落ち着いた蒼炎だった。

 また杖を使った実験では蒼炎の感情を感じにくかった。


 今日の実験は終了となり帰宅の途についた。

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