冒険者登録
家出先はリンカイ王国東部のダンジョン中央都市アクロに決めた。
東の守護者はウォータール公爵家。水を司っている。ウォータール家の髪色は真っ青になる。血が薄くなると青色が薄くなる。
ウォータール家の血を引く傍流貴族や平民が多いため、アクロでは青系の髪色が多い。
これなら僕の髪色もそれほど珍しくはない。
そのためアクロを拠点に選んだ。
ここリンカイ王国南方守護地域の中央都市ボムズからアクロまで馬車で10日間ほどかかる。お金はかかるが駅馬車に乗って移動した。
移動の10日間は天気も良く特に問題無くアクロに到着した。
アクロの西門が駅馬車の停留所だった。到着は昼を少し過ぎたところ。馬車を降りて大きく背伸びした。これから僕の新しい人生が始まる。気持ちが清々しくなった。
アクロの西門の兵隊事務所の厳つい顔の男性に声をかける。
「こんにちは。冒険者ギルドはどちらにありますか?」
「冒険者ギルドならここの中央通りをまっすぐ500メトルほど先にあるぞ。剣と盾の看板だからすぐ分かるだろ」
「ありがとうございます」
「坊主、冒険者になるのか? 気をつけろよ」
片手を上げて返事をし、冒険者ギルドに向かう。
アクロの建物は煉瓦作りであり、石畳の路も綺麗だった。少し歩くと剣と盾の看板が見えてきた。煉瓦作りの3階建ての大きな建物。ギルドに入ると数名の冒険者はいるが閑散としていた。
受付の20歳くらいの女性に声をかけた。
「冒険者登録をしたいのですが」
「年齢はいくつですか? 12歳未満は登録できませんが」
「先日12歳になりました」
「それでは大丈夫ですね。登録いたしますのでこちらに必要事項を記載してください」
記載内容は【名前】【年齢】【特技】の3種類。冒険者登録に虚偽を記載すると犯罪になる。しょうがなく本名を記載する。【特技】は剣術で良いか。
記載内容を見た受付嬢の目が開く。
「アキ・ファイアール!? ファイアール家の方ですか!」
人が少なかったため気がついた人はいなかった。
受付の女性に小声で話す。
「大きな声を出さないでください」
「あ、すいません」
「あまり目立ちたくないので内密でお願いします」
「し、失礼いたしました。それではこちらのオーブに触れてください」
受付カウンターの左側に置いてあるオーブに左手を置く。
「登録は以上です。こちらの冊子に冒険者ギルドでの注意が書いてありますので確認しておいてくださいね」
そういうと冊子と青銅製のカードを渡してきた。
青銅製のカードを確認する。
【名前】アキ・ファイアール
【年齢】12歳
【性別】男性
【ランク】G(0ポイント)
【賞罰】無し
【ミラ】0
【時刻】未
ギルドカードは身分証になる。またお金の支払いもギルドカードでできる。ランクが上がればカードの質も上がっていく。
ギルドの依頼や買取がこれでできるようになった。
ギルドカードを見て冒険者になれたことを実感して嬉しくなった。