第85話 防犯対策の必要性と【反動】の魔法
午前中の魔法実技の授業は終わった。
やってる内容が魔法実技ではないけど、蒼炎がダンジョン外で撃てないのでしょうがない。
結局、ヴィア主任は起きてこなかった。長老だからね。
お昼時間のため学校の食堂に行ってみる。
さすが全校生徒900人を超えるだけはあるな。相当に広い。
メニューもさすが美食の街セントール。各種地域の名物料理が揃い踏みだ。
僕は久しぶりにアクロ名物の魚の煮物定食。
ミカはボムズ名物の香辛料を効かせた肉料理を頼んだ。
ご飯を食べながらミカに聞いてみる。
「そんなに結界の魔法が覚えたかったの?」
「今朝のパメラさんの事を考えてね。何かされるんじゃないかなって。結界の魔法で家の守りが高まれば良いかなって思ったの」
なるほど一理あるか。僕なりの提案をミカにする。
「まずは魔道具でもう少し防犯対策ができないか考えてみよう。今度の休みに魔道具屋に行ってみようか。それからミカは結界の魔法を覚えられるか確認して、その魔法が活用できるか考えよう。後は学校内で帯剣できないから、マジックバッグをミカも持とう。【昇龍の剣】を入れておけば戦闘になってもだいたいは対処できるでしょ。僕の学生カバンには【昇龍の剣】が既に入ってるから大丈夫だね」
「アキくんはどちらかと言えば【昇龍の盾】を入れておいてください。わたしも盾も入れておきますから」
「まぁ僕とミカに手を出して勝てる奴なんて、ほとんどいないでしょ。油断はしないけどね」
午後の授業は教室に戻って魔法史の授業。
クラスに行くと何かみんなグッタリしている。
午前中の魔法実技の授業でシベリー先生に相当扱かれたようだ。
魔法史の先生は平民男性だった。年配の方で暗い茶色の髪色の穏やか人だった。
魔法史で習う事は魔法の発展と喪失の歴史を学ぶこと。
古代の魔法は今より進んでいた証拠がある。国宝に当たるステータスカードの技術や、現在では理解できない保存の魔法、また解読できない魔法陣など実例をあげて教えてくれた。
ダンジョンも古代の魔法で作られたと言う説をあげている研究者もいるとの事。
しかし今のほうが優れているところも多々あり、呪文の文言の移り変わりなど洗練して行くのが良く分かる。
まだ今日は魔法史の授業が1回目のため総論で終わった。
授業が終わり帰宅する。
夜に今日のサイドさんの講義中に記録したノートで復習をした。
僕の魔力の色、その属性、また属性の特性。
1年近く蒼炎の魔法を使っていたが、そんな事は考えてこなかった。足りない部分をこの魔法学校で補えれば良いなと思う。
明日も学校のため僕はいつもより早めに就寝した。
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授業2日目。
今日もヴィア主任は寝ていた。僕は呆れたがサイドさんの講義を受けた。
今日は昨日の続きで呪文の文言は3つのパートの【主文の句】の説明を受けた。
ミカは僕の教科書の【魔法文言集・金属性】から【反動】の魔法の練習をしている。いきなり【結界】の呪文はハードルが高いとのこと。
比較的簡単な【反動】の魔法を練習していた。
サイドさんは僕とミカの両方を同時に指導していた。凄い有能な人だ。
僕が休憩に入った時、ミカの【反動】の呪文の詠唱が聞こえてきた。
【金剛の怒り、我が身を護り敵を粉砕せよ、反動!】
その時ミカの周りに半透明の円筒状の壁ができた。円筒状の壁はミカを囲んでいる。
サイドさんが拍手をする。【反動】の魔法の成功だ。
【反動】の魔法は相手がこの円筒状の壁に攻撃すると、その力を相手に返して攻撃する魔法だ。
サイドさんは雑誌を丸めてミカを殴ろうとするが円筒状の壁に阻まれ、殴った力の分サイドさんの腕が上がった。雑誌の攻撃だからこんなもんだね。
あくまで相手の力を使う反撃だから弱い攻撃にはあまり意味の無い魔法である。
しかし水属性の魔法や風属性の魔法をぶつけるとそのまま反射する感じになる。
火魔法には弱く、ファイアーボールは反射するが、ファイアーランスで攻撃されると壊れるくらいの強度だ。
しかし半日もかからず魔法を覚えるのは早い。
帰る時にサイドさんから明日の予定を聞いた。明日は丸々1日ダンジョンで魔法実技の授業となる。国から言われているのはダンジョン外での使用不可。ダンジョン内なら問題ない。
ただ、ダンジョンに行くのに時間がかかるため丸1日となる。
その日の座学の授業は次の日の午前中にサイドさんが講義する事になる。今のところ、僕は週に1〜2回ほどダンジョンで魔法実技の授業予定だ。
午後の授業はリンカイ王国歴史である。
神話の話と思われる初代国王のウルフ・リンカイの話からだった。【白狼伝説】のファンである僕はその主人公と言われている初代国王のウルフ・リンカイの話も知っている。
ただ今の歴史学者は初代国王のウルフ・リンカイは存在しなかったと言う説が大半だ。
学者はロマンが足りないと感じる。