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蒼炎の魔術師 〜冒険への飛翔〜  作者: 葉暮銀
王都センタール編
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第64話 ミカの懸念

「こちらの屋敷になります」


 自慢げにパメラが屋敷に歩き出す。冒険者ギルドが提供する住宅としては破格すぎる。たとえBランク冒険者だとしても。


 パメラは鍵を出して屋敷のドアを開けた。掃除はされていたようで埃っぽくない。玄関ドアを開けると小さなホールがあり床は大理石、階段の手すりを見たが高級品の木材だった。細かいところにもお金をかけているのが分かる屋敷だ。


「なかなか立派な屋敷ですね」


 僕がそういうとパメラが誇らしげに答える。


「こちらはギルド長のご実家のエアード家が保有していたのですが、先月王都支部にて買い取ったものです。手入れがしっかりされている屋敷です。ここから王都魔法学校まで歩いてすぐですよ」


 取り敢えず屋敷の中を見て行くか。

 パメラが案内してくれる。部屋数は8つあった。広いダイニングとリビング、キッチンも本格的だ。衣装部屋まである。


「こちらの衣装部屋は湿度が低くなるように魔道具が設定されております。衣装もそうですが貴重な装備なんかの保管にも適しております」


 なんか凄い屋敷だな。

 パメラがこちらを見ながら言った。


「ご飯は今日の夕食からお作りする予定です。私は通いになりますが朝には朝食を作りにきますね」


 急にミカが言った。


「今日の夕食と明日の朝食はそれで良いわ。パメラさんは通いなんですね。大変かと思いますので家事全般をしてくれる人はこちらで探しますので大丈夫です。パメラさんには冒険者ギルドの仕事で専属になってもらえれば良いですよ」


 慌ててパメラが話し出す。


「通うのは特に問題ありません。何か私が粗相を致しましたでしょうか?」


 ミカがパメラを凝視している。

 そして返答する。


「ごめんなさいね。これは私の都合なんだけど故郷であるカンダス帝国の料理が食べたいのよ。それが作れる人に家事をして欲しいのよ。パメラさん、カンダス料理作れますか?」


 パメラは無言になった。

 そして重そうな口を開く。


「わかりました。それでは今日の夕食と明日の朝食はお作りいたします。その後は他の人を雇うってことですね。それでは今日の夕食の食材を買ってきます」


 そう言ってパメラは外に出て行った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 パメラが買い出しに行ったあと僕はミカに確認する。


「ミカがカンダス帝国の料理が好きなのは知っていたけど、そんなに食べたかった? アクロでは全然食べて無かったよね」


「ごめんね、アキくん。別にカンダス料理は食べなくても大丈夫よ。何かイヤな感じなのよ。できればここの屋敷も引っ越ししたほうが良いかも」


「嫌な感じ? そうなの?」


「私の勘だけどあのギルド長のビングス・エアードとパメラは男と女の関係ね」


「えっ! そうなの? 何でわかるの」


「ギルド長室での2人の会話や目の送り方。隠れてやっていたけどギルド長はパメラのお尻を触ってもいたわ。パメラも嫌がってなかったし。あとは馬車でのパメラの発言の時ね。ギルド長の事を話す時に尊敬以上の感情を感じたの」


15歳の僕には分からないことだなぁ


「でも何でパメラの家事を断ったのか分からないよ」


「この屋敷にパメラを入れないためよ」


「そこがわからないんだよ」


「パメラよりギルド長のビングス・エアードとの関係を薄くしたいの。できれば切りたい。あの人西の守護者のエアール家の分家の貴族でしょ。あの髪色ならエリートのはずよ。それが冒険者ギルド王都支部のギルド長。これで分かったかな?」


「何がなんやら」


「私も一応帝国の公爵家の長女をやっていたのよ。貴族のいやらしさは良く分かっているの」


「僕も一応公爵家の息子なんだけど」


「アキくんは貴族とお付き合いがなかったでしょ。私は学校の友達からその親との付き合いとか騎士団で貴族とも付き合いがあったからね」


「まぁ僕のことは良いよ。話を続けて」


「ビングス・エアードが貴族。魔法のエリート。今は王国支部のギルド長。って話ね。まずはギルド長って貴族はほとんどやらないのよ。貴族から見れば平民がやる仕事って感じ。アクロもボムズのギルド長も平民だったでしょ」


 確かにアクロのギルド長はワソランさん、ボムズのギルド長はインデルさん。家名を持っていない平民だ。


「今のビングス・エアードの役職であるギルド長は、貴族エリートから見たら閑職みたいなもの。あの人なら何とか華のある仕事に返り咲きたいと思っているはず。その為にはお金が必要なの。ここにたくさんのお金を持っていて、たくさんの高価な装備をもっている若い世間知らずの人がいます。さぁ陰険な貴族ならどうする?」


「……。」


「それに手駒になる愛人がいます。その他にはギルド長の権限を使えば、不良冒険者を簡単に使えるでしょ」


「ここにいると危ないってこと」


「私のただの勘だけどね。だいたいこの屋敷だって先月にギルド長のご実家のエアード家が保有していたものを王都支部が買い取ったって言っていたじゃない。ギルド長のエアードがこの屋敷について詳しいはずよ。こういう屋敷には隠し通路があったっておかしくないわ。泥棒に入られるなら良いけど、夜中に強盗に入られたら私達でも危ないわ」


「じゃやっぱりここも引っ越そうよ。ミカの話を聞いたら怖くて眠れないよ」


「そうね。やっぱりそうしましょ。お金はたっぷりあるから住む場所はすぐ見つかるでしょ。魔法学校に通っている数年間はここの冒険者ギルドには近寄らないようにしましょう。伝手がないから聞き込みをしてから泊まるところを探しましょう。当分宿でも良いから」


 僕はミカの話を聞いて貴族って怖いなぁっと思った。考え過ぎかもしれないけど、危ないところからは避けるのが良いね。

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