第63話 センタール支部ギルド長
ご飯を食べて食休みをしてからギルド長が帰ってきているか確認する。
先程戻ってきたみたいでそのまま面会となった。
職員に2階にあるギルド長室に案内される。ノックの返答の声が聞こえた。男性のようだ。
扉が開き中に入る。中にいた男性は35歳くらいの細身の身体、髪型はオールバックで濃い緑色だ。細目で射抜くような視線。
完全に主観だけだが神経質な印象を受けた。
「冒険者ギルドセンタール支部ギルド長のビングス・エアードです。まずはこちらにかけてください」
髪色と名前で西の守護者のエアール公爵家の分家辺りの人かと推測できる。
勧められたソファに座ってこちらから挨拶をした。
「Bランク冒険者のアキ・ファイアールです。こちらの女性がBランク冒険者のミカ・エンジバーグです。この度は来月からここセントールの王都魔法学校に通うために活動拠点の移動をしにきました」
「ボムズ支部から連絡は来ているよ。用意させてもらった家は一軒家だ。鍛錬できる庭もある。王都魔法学校に通うのも近い立地だ。この後案内させるよ。住むのは今日からで良いかな?」
「丁寧な対応ありがとうございます」
「Bランク冒険者に対する当たり前の対応だよ。専属職員は1人で良いかな? 通いになるがギルドの仕事全般と家事全般ができる職員だ。優秀な職員だからきっと満足してくれると確信しているよ。その他にボムズ支部から連絡が来ている。金属性の魔法に詳しい人の紹介だったね。魔法に詳しい人と言えば魔法研究所以外の人はいないね。紹介する方はヴィア・ウォレット。ただ少し気難しい性格をしているが、それは了承してくれ。こちらに紹介状を書いておいた。魔法研究所で渡してくれれば大丈夫だ」
「ありがとうございます。本当に助かります」
「これくらいはなんてことないよ。それとセントールではダンジョン活動をする予定はあるのかな?」
王都近辺のダンジョンはDランク以下しか無い。その為、積極的に攻略しようとは思っていなかった。
「今のところは魔法学校の授業の内容を見てですかね。明確には決めておりません」
「できればダンジョン活動してもらうと嬉しいのだが」
「まあ時間ができれば考慮します」
「君たちには期待しているんだよ。アクロ支部とボムズ支部の話は聞いているからね」
うーん。なんだろ。この人のためにダンジョンには潜りたくないなぁ。この人とは相性が悪いかな。
そろそろ退散かな。
「それではそろそろ新しい家を見たいと思います」
「あぁそうかね。それでは君たちの専属職員を呼ぶよ」
ギルド長のビングスは人を呼びに部屋を出た。
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僕はミカに小声で話しかける。
「僕、なんかビングスさん苦手かも」
ミカも同意する。
「私もダメ。アキくん気が付いた。話している最中にチラチラ私の胸や脚を見てるのよ。気持ち悪いわ」
それは気が付かなかった。女性はそういう視線に敏感って言うからな。
「あまり関わらないようにしようか。Dランク以下のダンジョンじゃあまり美味しくないしね」
その時ギルド長のビングスが1人の女性を連れて戻ってきた。
「こちらが君たちの専属になるパメラだ。パメラ、こちらがBランク冒険者のアキ・ファイアールさんで、こちらの女性がBランク冒険者のミカ・エンジバーグさんだ」
パメラと呼ばれた女性がこちらを見て挨拶する。
「パメラと申します。Bランク冒険者の専属に選ばれて光栄です。頑張りますのでよろしくお願いします」
挨拶が終わってギルド長が話す。
「じゃこの後は住む家に案内してくれ。パメラ頼んだぞ。それではアキさん、ミカさん、これからよろしくお願いします」
ギルド長室を出てパメラの後をついて行く。家までは馬車で行くとのこと。王都は広いからね。
用意されていた馬車はかなり豪華だった。
ちょっと驚いてパメラに聞いてみる。
「この馬車はギルド所有のものなんですか?」
当然のような顔してパメラは答える。
「そうですね。王都支部の馬車です。乗り心地がとても良いですよ。さぁどうぞ」
柔らかなクッションの効いた座席だ。最近いつも1番高い馬車を使ってきたから違いが分かるようになっている。これは間違いなく高い馬車だ。
僕はパメラとのコミュニケーションを図るために会話をしてみた。
「本当に乗り心地が良いですね。アクロ支部やボムズ支部の馬車と比べると雲泥の差です」
パメラは勝ち誇ったような当たり前のような顔をして僕との会話にのってきた。
「ここは王都ですからアクロやボムズと比べるのが間違いです。王都にはこれくらいの馬車で無いと。こちらの馬車はギルド長のビングス様が購入を決めた品のある馬車です」
「やっぱり冒険者の数も王都ならいっぱいでしょうね。納品される魔石の量も桁違いでしょうからね」
パメラは少しだけ口ごもって会話を続ける。
「まぁそうですね。王都支部は冒険者の数が多いですから」
馬車の進む方向を考えるとセンタールの北西側に進んでいる。街の様相が変わってきた高級住宅街地域だ。
馬車が止まった。何となくイヤな予感がする。
馬車を降りると少し小さめだが立派な屋敷がある。どう見ても貴族が住む家だ。確かに僕は一応貴族だけど、この屋敷は手に余る。