第46話 魔法学校への問い合わせ
次の日、冒険者ギルドに入ったら拍手で迎えられる。15年ぶりの焦土の渦ダンジョン制覇に冒険者ギルドは活気に満ちていた。
皆んなに頭を下げて買い取りの個室に通される。早速、昨日の宝箱から出てきた槍の鑑定を頼んだ。予想通り名前が【鳳凰の槍】で、特殊効果は貫通力アップ。
ミカが売らないと強く宣言していた。
今日のお昼はリーザさんと一緒に外食にする事にした。焦土の渦ダンジョン制覇のお祝いである。
個室のあるレストランを選択した。
僕はジュース、ミカとリーザさんはワインを頼み、料理はコース料理にする。
まず焦土の渦ダンジョン制覇を祝して乾杯した。
食事が進み、ミカとリーザさんも少し酔っ払ってくる。お酒のせいか、いつもより喋る。
ほろ酔いのミカが真剣な顔で僕に話す。
「アキくん、【鳳凰シリーズ】の装備を全部集めるわよ。当分焦土の渦ダンジョンね」
こちらもほろ酔いのリーザさんがミカに続く。
「どんどんダンジョン制覇してください。私にも臨時ボーナスが出て助かります。子供を育てるにはお金がかかるのです」
僕はそれを笑いながら聞いていた。
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次の日からは、焦土の渦ダンジョンを1日おきに攻略していた。少しゆっくりしたいので。
ダンジョン攻略をしない日は冒険者ギルドの鍛錬場に行って槍の練習をしたり、王都の魔法学校の試験勉強をした。
街中をぶらつくと無遠慮な視線が気になりあまり出歩かなかった。
家出をする前はそのような視線に慣れていた。
それがアクロではそのような視線が無かったため、今は少し気になるようになっている。
こういう心の変化は良い事なのか悪い事なのか僕にはわからなかった。
ボムズに来てから王都の魔法学校に問い合わせをしてみた。
内容は「僕の蒼炎の魔法は破壊力が凄いので入試の魔法実技試験において、通常の魔法射撃場では実施しないほうがよろしいかと思います。できればダンジョン内でお願いできないでしょうか」といったものだ。
魔法学校の返答は丁寧な言葉を書かれていたが、内容を簡単にすると「何調子こいてるの、このガキは。子供が使う魔法で世界有数な魔法使いエリートが作った魔法学校にある魔法射撃場の結界が壊れるわけないじゃない。壊せるものなら壊してみろ!」って内容だった。
魔法学校には魔法研究所が併立されている。魔法研究所に勤めているのは魔法エリートだ。
その魔法エリートが作った結界の強さに15歳の子供が心配しているということに魔法エリートの人達のプライドを傷つけたみたい。
蒼炎を使って良いと言われても、本当に使うと大惨事になりそう。当日は魔法の威力を抑える【黒龍の杖】でも使うか。少しはマシになるよね?
ファイアージ家の当主のマルク・ファイアージより僕に謝罪したいとの申し出がくる。
嫡男のカイ・ファイアージがファイアール公爵家と僕との契約を破ったことへの謝罪だった。
僕としては面倒だったため、今後は不必要な接触をしないように指導していただければ謝罪は結構ですと、書面にて返事をしておいた。
パーティメンバーを増やすことも考えたが、僕のパーティだと僕が固定砲台。パーティメンバーには最低盾役が務められないとつらい。盾役には金属性の魔法が使えたほうが良いので、スカウトするなら北の中央都市のコンゴで探したほうが良いとの話になった。
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気が向いたらダンジョン攻略をし、そうじゃなければ鍛錬や勉強などをして過ごしていた。
気が付いたらミカがBランク冒険者になった。あれだけCランクダンジョンの焦土の渦ダンジョンでC級魔石を納品すれば簡単になれるよね。
【鳳凰シリーズ】の装備もたくさん溜まる。家に置いておくスペースが無いため使わない装備用のマジックバッグを購入した。
使わないなら売れば良いじゃんとミカに言ったが、僕が魔法学校を卒業したら冒険者クランを作りたいからダメと言われた。
こんな日常を過ごしていたら12月の半ばになった。
ファイアール公爵家では毎年1月10日に新年祝賀パーティーを開いている。
ボムズの貴族やその家族を一堂に呼ぶ大々的なパーティーだ。
その新年祝賀パーティーの招待状が僕のところにきた。
はっきり言いたい。何故!?
今まで僕はこのパーティーに出席した事がない。僕はいないものだったから。パーティーの日はいつもと変わらず一人でご飯を食べていた。
確かに僕はファイアール公爵家の長男として貴族だ。またBランク冒険者として貴族格がある。
しかしながらファイアール公爵家と分家は僕への干渉をしないと契約している。そんな僕になんで招待状を出すんだ。
欠席しようと思っていた。しかしここにもう1通の招待状がある。ミカに届いた招待状だ。
Bランク冒険者としてミカにも招待状が来た。
奴隷の参加など前代未聞だろう。
この招待状にミカが食いついた。
ミカはカンダス帝国のエンジバーグ公爵家の長女だが華やかなパーティーに今まで出席した事がないそうだ。
話を聞くとパーティーに行くのは父親と義理の母と妹だけだったとのこと。
ミカはその時広い屋敷で一人でご飯を食べていたそうだ。
ミカは華やかなパーティーに憧れていた。
そんなミカが僕を上目遣いの潤んだ目で「このパーティーに一緒に行こう」って言ってくる。
このミカの目と、一人ご飯の同志として、僕は出席の返信をしてしまった。
まぁ美味いものでも食べに行くと思えば良いかと今は考えている。





