黒龍の杖の威力
安らぎ館に帰って自室で夕ご飯まで待つ。少し眠気がしてしまいベットでウトウトしてしまった。現実と夢の狭間がとても気持ちが良い。カチャカチャと少し音がする。またミカが鍵を開けているのか。注意するのも目を開けるのも面倒なくらい夢うつつ。近くに来ている雰囲気を感じる。
「ありがとうね」
ミカのやさしい声が聞こえる。そして唇にやわらかい感触を感じた。えっ!あまりの事に身体が硬直してしまった。時間にして数秒。ミカが離れていく。扉が閉まる音がするまで僕は硬直したままだった。
すっかり眠気が去ってしまった。頭の中が混乱したままでいると、ミカが夕ご飯を食べようと呼びにきた。平静を装い一階の食事処まで来たがミカの顔は恥ずかしくて見れなかった。
食事が半分くらい済むと気持ちも落ち着いてきてミカに普通に接することができるようになった。
明日の予定を話し合ったあと、自分の部屋で身体を拭いてベットに潜りこんだ。今晩は眠れるかなぁ。
朝の日差しがカーテンの隙間から漏れてくる。気持ちの良い朝だ。やっぱり朝に起きるのが気持ちが良い。
お茶を入れて飲んでいるとノックの音がする。扉を開けるとミカが準備万端の格好で待っていた。
「凄いヤル気だね」
軽口を叩くとミカは口元に笑みを浮かべて
「冒険者ってのが気に入ってきたのよ。昨日のウォータール公爵家の権力にもなんてこと無い。場所を変えれば良いんだもんね。本当に自由なんだなぁって!」
「冒険者ギルドランクをBにして、レベルも上げて力を付けるよ。奴隷を解放してあげてこそ本当の自由だもんね」
「いや、それは別に…」
「頑張るから待っててね」
「う、うん。無理しないでね」
「じゃ、朝ごはん食べてダンジョン行こうか」
そう言って一階の食事処に向かった。ご飯を食べて外に出る。快晴だ。安らぎ館から西門を通って沼地の主人ダンジョンの道はとても気持ち良く歩いていけた。不人気ダンジョンだけあって街道から沼地の主人ダンジョンの道には誰もいなかった。
今日はまずやる事がある。昨日買った魔法の威力を抑える【黒龍の杖】を使ってみる事だ。動きの遅い泥のゴーレムは恰好の相手だ。マジックバッグから黒龍の杖を出す。黒光りして見た目はとても良い。
「どうなるのかな?」
黒龍の杖を見ながら興味津々の顔のミカがいる。
「まぁ少しは威力が落ちればダンジョン外で蒼炎が使えるようになるからねぇ。あんまり期待はしないで試してみよう」
数メトル歩くと左側の沼から泥のゴーレムが出てきた。道に上がってくるまで待って黒龍の杖を使って蒼炎の魔法を撃つ。
【焔の真理、全てを燃やし尽くす業火、蒼炎!】
いつもの蒼炎は蒼い炎が飛んで行くが今回のは白色の炎が飛んで行く。泥のゴーレムの胸に当たる。水蒸気が上がり上半身が乾いた砂に変わる。ちょうどコアに当たったようで、割れたコアが転がる。下半身は泥の状態だったがコアが壊れたため崩れ落ちた。
黒龍の杖を使って蒼炎を撃つと白炎になるようだ。泥のゴーレムは上半身が砂に乾き、下半身は泥のままだった。ゴーレムコアは割れたが原型は保っていた。
確かに黒龍の杖は魔法の威力を抑える働きがある。蒼炎で使うと白炎になり、まだ通常のファイアボールより強いがこれくらいならダンジョン外で使っても焦土化までしないのではないだろうか?
「どうかなミカ。これなら外で蒼炎使えないかな?」
「確かに蒼炎よりは全然マシだけど、相当強い炎系の魔法ってのは変わらないわ。どうしても使用しないといけない時以外は控えたほうが良いと思うわ」
「やっぱりか…。まぁ少しは選択肢ができたって事で納得するか」
黒龍の杖の実験は終了。マジックバッグに入れる。
「それでは頑張って泥ゴーレムを倒すぞ!!」
「おー!!F級モンスターのカーサスが来たら即倒すね!」
今日も元気に討伐して行こう。
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