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第44話 カイ・ファイアージ

 1日休養を取り、次の日に焦土の渦ダンジョンの制覇を目指すことにした。


 休養日はボムズの街をミカとぶらつく事にする。

 今日のミカの格好は水色のワンピースに紺色の上着を着ていた。薄く化粧もしている。改めて見ると本当に美人だなぁ。

 マジマジと見つめているとミカの顔が赤くなる。色白だから赤くなるとわかりやすい。

 何となくイタズラ心が湧いてきた。

 ミカを褒めてもっと顔を赤くしてやろう。


「今日のミカは一段と綺麗だ。水色のワンピースも似合っているよ。素敵だね」


 そう僕が言うとミカの顔がより赤くなる。そして俯いた状態で僕に言った。


「褒めてくれてありがとう。アキくんの水色の髪色を身に付けたくてこのワンピースを買ったの。似合ってるみたいで良かったわ」


 僕の髪色を身につけたいだなんて……。嬉しいやら恥ずかしやらで僕の顔も赤くなったような気がする。


「それじゃ行こうか」


 恥ずかしさを取り繕うように家を出た。


 ボムズの商業地区は北東にある。今日は武器屋や本屋などをぶらつく予定。


 商業地区を歩いて行くと、僕を見て眉を顰める人がたまにいる。

 アクロでは目立たない髪色だったから、このような久しぶりの視線にボムズに帰ってきたんだなっと思った。

 実は僕はボムズでは有名人だ。悪い意味で…。


 僕はリンカイ王国の南の封印守護者のファイアール公爵家の長男。貴族である。

 しかし髪色のせいで公爵家からはいないものとして扱われている。この街では水色の髪色はほとんどいない。そのため街の人はすぐに僕だとわかる。街の人からは出来損ないと陰で言われ、ずっと腫れ物扱いされてきた。


 髪色の話をすると、魔力が全くないと黒に近い茶色になる。平民はほとんど魔力がないため人口の9割ほどの髪色は黒に近い茶色だ。


 余談だが、北の守護者のアイアール公爵家は漆黒の髪色になる。魔力が薄いと黒が薄くなり灰色となってくる。ミカの髪色は綺麗な黒色のためアイアール公爵家と関係があるのかと想像はしている。


 ここボムズでは火を司るファイアール公爵家の影響が強いため、赤系の髪色が多い。火の魔力が弱くなると赤色が薄くなっていく。1割弱がこの髪色だ。

 僕の髪色が目立つのもしょうがない。


 前方から20歳くらいの赤色の髪をした男性がこちらに歩いてくる。髪色の濃さから推測するとたぶん貴族だ。その男性は僕に気がつくとUターンして脇道に入っていった。


 先日、ファイアール公爵家から分家に通達があったようだ。僕に対して干渉しないようにと。

 今までバカにしていた僕に対して、どう対応したら良いのか困っているのだろう。


 まぁ人の視線を気にしてもしょうがない。ボムズで一番品揃えの良い武器屋に来たので入店する。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ここの武器屋はアクロで利用した武器屋と同じ系列店である。店内のレイアウトがほとんど一緒。カウンターの奥の陳列棚にあるダンジョン製の装備は高級品だ。


 何か使えるのはないかな?

 なかなか【昇龍シリーズ】を超える性能の装備は少ないようだ。【昇龍シリーズ】はCランクダンジョンである沼の主人ダンジョンの装備だから当たり前かもしれない。


 目ぼしい装備が見当たらないので魔術杖のコーナーに行く。そこには真紅の髪色をした16歳の少年がいた。なぜ年齢がわかるって?それは知ってる人物だから…。


 少年の名前はカイ・ファイアージ。

 ファイアール公爵家の分家であるファイアージ家の嫡男だ。小太りで脂っぽい顔。細い目と丸い鼻。高級そうな服を着ている。

 カイは僕に気が付いてニヤリと笑ってしゃべりかけてきた。


「これは、これは、アキ様ではないですか。こちらは魔法杖の売場ですよ。魔法が使えない役立たずには必要がないもののはずですが?」


 相変わらず嫌味を口にする奴だな。できれば会いたくない人物である。

 取り敢えず無視だ。僕はカイを気にせず魔術杖を見始めた。


「こちらが話しかけているのに無視ですか。先程も言いましたが貴方には必要の無いものですよ。冷やかしなら帰ったらどうですか?」


 面倒くさくなった。コイツは本家からの通達を知らないのか? しょうがないから口を開く。


「できれば僕の事はほっといて欲しいんたが。ファイアール公爵家からの通達を君は読んでいないのか?」


 カイはイヤミっぽい顔をして返答する。


「通達? 知らないな。僕は王都の魔法学校にいたからね。今日の午前中にボムズについてまだ屋敷には帰っていなくてね。魔法が使えないアキ様と違って僕の魔法は強力だからね」


 どうりで僕に話しかけてくるはずだ。カイと話していると気持ちが暗くなる。


「それでは早く屋敷に帰ってファイアール公爵家からの通達を読むんだね。それが君の身の為だよ」


「さっきから意味不明な事ばかり言ってるね。魔法が使えなくて自暴自棄にでもなったのかい?」


 話す度にイライラしてくる。僕はどうにかならないかと思い口を開く。


「最後通牒だ。これ以上僕に話しかけるならそれ相応の手段を取らせてもらう。僕からは以上だ」


「だから何を言ってるんだ。役立たずに話しかけたからって何がどうなるってんだ? 頭がおかしくなってるのかい」


 もう諦めよう。そう思い息を深くついてから話す。


「君と話していると不愉快になるんだ。もう僕のほうがいなくなるよ。君が屋敷に帰って通達を確認したら、君の父親は僕に謝罪したいと言うと思う。面倒なので謝罪はいらないと言っておいてくれ」


 そう言って武器屋を後にした。

 武器屋を出たところでミカが話しかけてくる。


「先程の人は知り合い? 何か揉めてる感じだったけど」


 僕は一度深呼吸をしてからミカの顔をみる。


「少し話が長くなるかもしれないからそこのお店でお茶でも飲みながら話すよ」


 2人でオシャレなお店に入りお茶を注文する。

 僕は少し落ち着いたので話を始める。


「先程いた少年はカイ・ファイアージ。ファイアール公爵家の分家であるファイアージ家の嫡男だ。昔からずっと突っかかてくる嫌味なやつだよ」


 ミカが首をかしげて言った。


「ファイアール公爵家の分家なら今ならアキくんを干渉しないはずでしょ?」


「それが魔法学校にいて今日ボムズに着いたみたいで公爵家からの通達をまだ知らないみたいだ」


「そうなんだ」


「カイはミカも知っているシズカ・ファイアードが好きなんだよ。シズカの婚約者である僕の弟のガンギのほうがカイより立場が上だから、カイは何もできないんだ。それの腹いせで僕にいつも絡んでくるんだよ」


「とんだ災難ね」


 ミカの口調は呆れていた。


「そうなんだよ。僕には全く関係ない話なのに巻き込むなって思うよね」


 ミカに話していたらイライラが落ち着いてきた。愚痴るのもたまには良いもんだな。


 その後洋服屋をぶらつき、最後にアクセサリーショップにミカを連れてきた。


 ミカが不思議そうな顔をしている。

 僕はアクセサリーを見ながらミカに話しかけた。


「朝に出かける時に僕の髪色である水色のワンピースを着たかったって言ってくれただろ。僕もミカの髪色である黒のものを身に付けたくてね。ミカには水色のアクセサリーを買うからそれを身に付けて欲しいかな」


 話を理解したミカの顔が喜びに溢れている。


「指輪が良いかな? それともペンダント? ブレスレットも良いわね」


 喜色満面で選び始めたミカを見て、僕はミカを連れてきて良かったと思った。


 アクセサリーはお揃いのチェーンを買ってミカは水色の石のペンダントトップ。僕は黒色の石のペンダントトップにした。


「明日の焦土の渦ダンジョンを制覇したら、今度はお揃いのブレスレットを買おう」


「約束したからねアキくん。私、明日は頑張るよ」


 カイと遭遇して嫌な思いをしたが、最終的には気分良く帰ることができた。


 夜に装備の点検をした。

 明日は焦土の渦ダンジョンの制覇を目指す。

 MAPを確認する。全6階。

 ボス部屋までの最短距離で約13キロルくらいだ。足場が悪いから走り抜ける事はやめた。

 一回の戦闘時間も短いため、問題無く1日で帰ってこれる。


 あとわからないことは4〜6階層のサラマンダーの強さがどれくらいなのか? ボスモンスターの皇帝サラマンダーがどんな感じかくらいかな。

 行ってみないとわからないもんね。


 冒険するのが冒険者。全部分かっていたらワクワクしないよね。

 胸のペンダントトップを握りしめて眠りについた。

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