プロローグ2
その日は12歳の誕生日だった。何故か動悸が激しく寝付けなかった。何かが僕を呼んでいる気がする。その時気が付いた。カーテンの隙間から青白い光が漏れてきている。
僕は本館ではなく離れに一人で住んでいる。離れの裏には大木があり、その下には祠が祀られている。その祠が光っているようだ。上着を着て祠を確認に行く。
この祠はいつからあるのか誰も知らない。公爵家の歴史書にも記録がない。相当に強い結界が張ってあり、だれも祠に近づくこともできないものだった。
その祠の扉が現在開いている。恐る恐る近づいていくと祠の中のものが青白く光っている。
結界が解けている!?
魅入られたように祠の中を覗き込む。
そこにはカードが1枚光り輝いていた。手を伸ばしカードに触ると青白い光が身体に流れこみ、呪文が頭に流れてきた。
既にカードは光を放っておらず僕は数分ほど呆然と立ちすくんでいた。
離れの自分の部屋に戻りカードを確認すると文字が記載されていた。
【名前】アキ・ファイアール
【年齢】12歳
【性別】男性
【レベル】5
【HP】35/35
【MP】26/26
【力 】15
【魔力】18
【速さ】13
【体力】12
【魔法】蒼炎
ステータスカード!?
国宝レベルの希少カードじゃないか!
魔法に蒼炎ってある!
もしかしたら魔法が使えるようになった!?
呪文は先程頭に流れ込んできたものなのか?
魔法が使えず散々冷遇されてきた。
それが魔法が使えるようになったかもしれない。嬉しさで身体が震えてくる。
取り敢えず朝になったらダンジョンに入って確認してみよう。
ステータスカードと魔法が使えるならば冒険者活動には最適だ。
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魔法の実験は予想を遥かに超える結果だった。火の魔法のファイアーボールは20セチルほどの赤い玉を打ち出すもの。ゴブリンに当たった場合、火傷を負わす程度だ。それに比べて蒼炎はゴブリンを消し炭にしてしまった。破壊力が違いすぎる。
15歳から家を出て冒険者になる予定だったが、僕が火の魔法を使えることが分かったらどうなる?通常の火の魔法を超えている蒼炎の魔法。無理矢理ファイアールの封印守護者にさせられるかもしれない。
家族に愛情は全くない。今更ファイアールの封印守護者になるつもりもない。魔法が使えるとバレる前に家を出るか。
成人前に放逐するとファイアール家の体裁が悪い。父親が赦すわけがない。それなら家出だな。
12歳になった3日後、僕は貯めていたお金と希望を胸に、リンカイ王国南方守護地域の中央都市ボムズのファイアール家を家出した。