託された呪文
次の日の朝、ミカに開封できた封筒を見せて手紙を読ませる。
「なんか凄い内容ね。でも最後はAランク冒険者にならないと駄目なのね」
「ヴィア主任に見せて、何か分かれば良いんだけど」
「蒼炎の友達って凄いわね。やっぱり昨日の実験でその段階になったんでしょうね」
「僕もそう思うよ。でも【白狼伝説】では、簡単に黄龍を倒しているよね。何でだろ?」
「さぁどうしてなんでしょうね。私にはさっぱりわからないわ」
ヴィア主任とサイドさんとトウイが朝練のためにウチの庭にやってきた。
早速ヴィア主任に手紙を見てもらう。
「なるほど。封筒を開ける鍵は君と蒼炎の絆の醸成だったか。封印のダンジョンにいるのは黄龍?神獣?それとも何かの封印の魔法陣?何とも判断がつかないな。黄龍がどこに封印されているのかもわからないな。【白狼伝説】が戦いの記録か、小説風にするとは…。これでは正確に伝わらないぞ」
「そうなんですか?」
「小説は娯楽性の高いものだ。長い年月で大衆受けになるように話が変わって行ってしまうんだよ。古い【白狼伝説】があれば良いが…」
そんなもんなのか?そうかもしれない。
「あとはこの水属性の魔法と金属性の魔法だな。研究室に戻ってから調べてみよう」
そう言って朝練を開始するヴィア主任。
ヴィア主任は何かに気が付いたように、僕に振り返りトドメの言葉を口にする。
「蒼炎の魔法を作るレベルのウルフ・リンカイが白炎の魔法しか使えなかったのか。残念だが、これはアキくんも諦めたほうがよさそうだな」
やっぱりと僕は肩を落とした。
午前中にヴィア研究室にて手紙に書かれていた呪文を調べていた。
【清らかな水、清浄なる御身をもって不浄を流せ、浄化水流!】
【金剛の底力、強固な絆は永遠なり、金剛防壁!】
サイドさんが呪文の文言を見て呟く。
「どちらも見た事がない呪文の文言ですね。またどの呪文とも似ていないです。類型の無い文言です」
ヴィア主任が指示を出す。
「まずは研究所の水属性と金属性の魔法が使える奴に魔法が発動するか調べよう。手紙には使い手を選ぶ魔法と書いてあったからな」
その指示を受け、サイドさんは研究室を出て行く。
「あとはなるべく古い【白狼伝説】を探す事だな。古い蔵書となると王家か公爵家だな」
ヴィア主任の言葉に僕は口を開く。
「でもファイアール公爵家の【白狼伝説】は今のと変わらなかったですよ」
「別に古い蔵書があるかもしれない。連絡はしないとな」
そう言ってヴィア主任は王家と各公爵家に手紙を書き始める。
僕は今月の末に後期試験があるため勉強を始めた。
結局、【浄化水流】と【金剛防壁】を発動できた人はいなかった。
【2月19日】無の日
久しぶりに冒険者ギルドセンタール支部に来た。
シズカとトウイとミカの3人と一緒だ
シズカとトウイは冒険者のパーティを組む事になった。
力量的には同じくらいでちょうど良い。
僕らとダンジョンに行くとお膳立てが酷く、自らの成長に繋がりにくいと言っていた。
今日はシズカとトウイのパーティメンバーの募集に来たのだ。
シズカは火属性魔法が使える貴族。
トウイは火属性魔法が使えて、接近戦もこなせる平民。
2人とも相当珍しい冒険者になる。人気になるだろう。その為、変な輩に巻き込まれないように冒険者ギルドから推薦してもらおうと思った。
受付に行き、僕のギルドカードを見せて訪問の理由を告げる。
受付の責任者が現れ、品行方正で能力の高い人を責任を持って紹介してくれる事になった。
これで後期試験が終わった後の3月は、シズカとトウイと新しいメンバーでダンジョン活動ができるはずだ。
僕たちのパーティは3月に北の中心都市コンゴに行く予定である。
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