思い出の積み重ね(年末年始)
鎌鼬の庭ダンジョンを出ると雪が舞っていた。
ボムズではあまり降らないために雪を見ると少しテンションが上がる僕。
カッターまでの帰り道、ミカと手を繋ぎながら歩いた。
家に帰り着替えをしてから冒険者ギルドに行く。
ギルド長が僕たちにすぐに会いたいと言っているそうで、魔石の納品と武器の鑑定をカルタさんに任せて2階のギルド長室に行く。
ギルド長室のドアをノックすると女性の声で応答がある。
ドアを開けると30過ぎに見える女性がデスクに座っていた。
「冒険者ギルドカッター支部のハートだ。カッターへようこそ!Bランク冒険者が2人も来てくれて嬉しいよ」
ハートさんは満面の笑みで迎えてくれた。
「冒険者のアキ・ファイアールとミカ・エンジバーグです。2週間ほどの滞在になると思いますがよろしくお願いします」
ハートさんに勧められて応接セットのソファに座る。
「2週間ほどとは少しだけ残念だ。今日は早速ダンジョンに行ったのかな?」
「鎌鼬の庭ダンジョンに行ってきました。カーサスだけでしたので制覇をしてきましたよ」
「何と!鎌鼬の庭ダンジョンをもう制覇したのか!あそこのカーサスは速すぎて冒険者が皆んな切り刻まれてしまうのに。さすがにBランク冒険者だな」
驚きの声を出すハートさん。
僕は知りたい事を確認する。
「実はカッターのエルフ排斥運動がどの程度のなのか知りたいのですが。私のパーティメンバーにエルフがいるためです。そのエルフの仲間はBランク冒険者になりましたがカッターに入って問題はありませんか?」
少し驚いた顔の後に真剣な表情になるハートさん。
「うーん。まだエルフ排斥運動は街中でもあるなぁ。冒険者ギルドとしてはBランク冒険者のエルフなら守る義務が生じる。エルフ排斥運動はエアール公爵家が主導で進めたものだ。私の方からエアール公爵家に話をしてみよう。調整に時間が少しかかると思うが待っていてくれ」
ギルド長のハートさんの言葉を聞いて、何とかなりそうな感じを受けた。その後は雑談をしてギルド長室をあとにした。
冒険者ギルドのロビーに行くとニコニコ顔のカルタさんと大勢の冒険者が僕たちを歓迎してくれる。
冒険者達は鎌鼬の庭ダンジョンを制覇した事を称賛し、僕の肩を叩いていく。
もう少し力加減を考えて欲しい。
カルタさんは魔石の大量納品に喜んでいるようだ。
鑑定を頼んでいた刀を渡される。
鑑定結果は【飛燕の刀】。
特殊効果は斬撃を飛ばす。
魔力を込めて刀を振るとエアカッターの魔法の様に斬撃が飛ぶようだ。
蒼炎以外の遠距離攻撃になるな。
早速、明日ダンジョンで試してみよう。楽しみができたね。
12月24日から12月29日までは毎日、鎌鼬の庭ダンジョン制覇をして過ごす。
【飛燕の刀】は魔力を込めると「ブン!」と軽く音がする。その状態で刀を振ると前方に三日月形の緑色の斬撃が飛ぶ。有効距離は30メトルはありそうだ。
今のところ鎌鼬のダンジョンの宝箱からは【飛燕の刀】しか出ていない。
きっと宝箱を開ける時に僕が考えた踊りを踊ってないせいだと少しだけ思っている。
12月30日と1月1日はダンジョンには行かず休みにした。
去年と同じようにミカと2人でゆっくり過ごす予定。
家のリビングでミカと2人で今年1年あった事を話し合う。
本当にミカは笑うようになったなぁ。
以前は僕に対してオドオドした態度があり、敬語を使う事もあったけど、今はそんな事も無くなった。完全に奴隷という関係から脱却して冒険者仲間になっている。
【白狼伝説】の話で盛り上がった。楽しく会話していた2人の間に一瞬間が生じた。
ミカはこちらを見ている。僕もミカを見ている。
気がつくと唇が触れ合っていた。
1月1日の朝。当たり前だが1年最初の朝である。朝起きて目を開ければ、それが1年最初に見るものである。
今年も最初に見たものは白い肌だった。
眼福、眼福。今年も良い事がありそうだ。
外に出ると少しだけ雪が積もっていた。
白い雪が街を包んでいる。
僕は昨日ミカの白い肌に包まれた。
雪とは違い暖かかったけど。
カッターでは1月1日に風を祀るお祭りがある。ボムズでは火を祀っていたな。
ミカと2人でお祭りを見に行った。
屋台で買い食いし、お祭り名物のスライム釣りがやっている。
今年も熱くなる僕。
横でミカが笑う。
去年と同じ光景だ。
こんな思い出を2人で積み重ねていきたい。
僕は強く思った。
夜はミカと自然と肌を合わせていた。
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