エンバラの歓迎の宴
エンバラの住居は木造であった。
周囲の森と調和が取れており、落ち着いた印象を受ける。
エンバラに着いて直ぐに宿泊する場所に案内された。
風呂が用意されており、旅のほこりを落とす。
案内人のエルフが、格段に立派な屋敷に僕を連れて行く。
屋敷の一室に入ると正面に女性が座っている。
見た瞬間に分かった。
ヴィア主任とシニアさんとは血縁だと。
横には左右に2名ずつ男性が座っている。
僕は女性の正面の位置に案内された。
僕が座ると正面の女性が口を開く。
「蒼炎の使い手であるアキ殿に、遠路はるばるここエンバラまで出向いてもらって感謝申し上げる。私はここエンバラの長のオウカ・ウォレットじゃ」
「僕はアキ・ファイアールです。この度はシニアさんからのお誘いでお邪魔させていただきます。よろしくお願いします」
「何を言うか。こちらが無理を言ったのは分かっておる。今日は歓迎のために宴を用意させてもらった。混み入った話は明日にして、今晩は宴を楽しんでもらいたい」
エルフの里の歓迎の宴かぁ。どんなものなんだろう。
僕はエルフの里の広場に案内される。
広場の中央には木で2メトルくらいの簡易的な櫓が組んである。
その櫓を囲む様に席が設置されている。僕の席は櫓が正面に見えて、少し高くなっている席だ。
隣りはミカが座り、反対側の隣りはエンバラの長のオウカ・ウォレットが座る。
ヴィア主任とサイドさん、シニアさんは僕たちの後ろの席に座っている。
空は既に日が落ちて暗くなっている。
広場の中央の櫓と、周囲の篝に火がつけられる。
その火の灯りで周囲は柔らかな赤色に染められた。
エンバラの長のオウカさんが立ち上がり周囲を見渡す。
「皆、盃は持ったか?今日は蒼炎の使い手であるアキ殿がここエンバラに来ていただいた歓迎の宴である!失礼の無いように楽しんでくれ!それでは乾杯!」
その乾杯が引き金になり、櫓を囲んでいるエルフ達は歓談を始めた。
ミカはワインを飲んでいる。エンバラには人間の商人が行商に来ているそうだ。僕はお茶をもらった。
エンバラの料理は素朴だけど、とても美味しい。エンバラでは狩猟の他に、作物も作っていると聞く。
エンバラの長のオウカさんは話す事が好きなようでずっと喋っている。
オウカさんは3人の母親で、一番上がシニアさん、二番目がザルツさん、三番目がヴィア主任とわかる。
ヴィア主任と血縁だと思っていたが母親だったとは驚いた。
オウカさんは3人の子供が幼い時の話を楽しそうに話す。聞いている僕も楽しくなる。
オウカさんは興が乗ってきたようで、シニアさんとヴィア主任の恥ずかしい話をしようとしたら、後ろの席の2人から首を締められた。
櫓の前では里のエルフ達が出し物をしている。弓の遠打ちや二人組の剣舞、ナイフ投げなど、どれも見応えがあった。
エルフの里の皆んなが僕たちを楽しませるために頑張ってくれているのが心に伝わる。
宴が盛り上がりそろそろ終わりかと思ったら最後の出し物が始まった。
壇上の下に男性が太鼓を持って並んだ。
こちらに一礼し、左右に分かれる。
片方に10名ずつ。
太鼓は手で叩くタイプだ。
ゆっくりとしたリズムで太鼓の音を奏でる。
その後、僕は赤面した。
薄手の服を着た10名の女性のエルフが僕の前に整列した。薄手の服の下は裸である。
下着も付けていない。全てが見えている。
僕が慌てていると、10名の女性のエルフは僕に一礼し、横に5人の2列に等間隔に並んだ。
そして太鼓のリズムに合わせて舞い始める。
始めはゆっくりの太鼓のリズムがドンドン激しくなる。
僕はこの舞に心を奪われていく。
櫓と篝火の火で照らされる身体。
飛び散る汗。
太鼓のリズムが僕の心臓を叩く。
なんて幻想的で情熱的な光景なんだ。
生物の原初の意識を揺さぶられる。
そして舞と太鼓のリズムはクライマックスを迎えて終了する。
周囲に静けさが訪れる。
圧倒的な舞だった。
僕が言葉を失っているとエンバラの長のオウカさんが立ち上がり僕の前に跪いた。そして真剣な声を上げる。
「今の舞はアキ殿に捧げるものであります。我々エンバラの心、また祖先であるソフィア・ウォレールの願いが篭っている舞であります。この舞を見ていただきありがとうございました」
この言葉を最後にエンバラ初日の宴は終了した。
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