うるさい研究室
6月30日【白の日】
この日の午前中はサイドさんの講義そっちのけで魔道具職人のザルツさんの手元に注目していた。
ステータスカードの横に特殊な工具を入れていく。あんな薄いカードの横に工具を入れるなんて。
ヴィア主任のお兄さんであるザルツさんは凄腕の魔道具職人のようだ。
緊張感に包まれた時間が半刻(1時間)ほど過ぎた時、ステータスカードの裏蓋が開いた。
ステータスカードの裏蓋の裏には小さいながら、隷属の魔法陣の中央部分と同じ魔法陣が刻まれてあった。
「ありがとう、兄さん。これで蒼炎の魔法に感情がある事が殆ど確定になったよ。そればかりか隷属の魔法陣の解明にも一役買っている」
ザルツさんにお礼を言うヴィア主任。
ザルツさんはステータスカードの中を見ている。そしてピンセットでステータスカードの中から小さな魔石を取り出す。
「この魔石がステータスカードを動かすんだね。ステータスカードが反応しなくなったのは、魔石のエネルギー切れだと思うよ。ただこの魔石の欠片、今まで見た事の無いランクだ。たぶんA級魔石を加工してあるね」
A級魔石は水宮のダンジョンと火宮のダンジョンのボスから獲得できる。
今は冒険者ギルドに納品して持ってないけど。
今はもう一度、ボス蛟とボスイフリートとは戦いたくは無い。
ステータスカードを開けて、ザルツさんはコンゴに帰って行った。A級魔石が手に入ったらステータスカードに入れてくれる事を約束して。
ヴィア主任のお姉さんであるシニアさんは、僕と一緒にエンバラに行くため王都に残っている。
エンバラから連れて来ていた従者の1人を先にエンバラに戻らせ、僕らを迎える準備をさせるそうだ。
7月中のヴィア研究室はうるさくなった。やる事が無いシニアさんがヴィア研究室に毎日来るからだ。暇さえあればヴィア主任を説教している。僕は日に日にやつれていくヴィア主任を横から見ていた。
7月の末には前期テストが控えている。サイドさんは「どうせなら三本線(首席)を守ろうぜ」と言って、試験が始まる前までずっと試験対策をしてくれた。
剣術は上達していると思うが、それ以上にミカの上達のスピードが早い。これが才能の差なのか。
僕は【ミカ・エンジバーグ打倒計画第1号】の計画の見直しを迫られている。
7月末の試験は恙無く終わった。サイドさん様々である。
8月1日【無の日】、僕とミカ、ヴィア主任、サイドさん、シニアさん、エルフの従者2人の総勢7名でエルフの里であるエンバラに向けて王都を出発した。
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