ヴィア主任のタブー
ヴィア主任はザルツさんが出て行った研究室のドアを眺めていた。
ゆっくりとこちらに振り向き呆れた声を発する。
「皆んな、すまんな、騒がしてしまって。ステータスカードを開くのは早くて20日以上先の事になったな」
エサを取り上げられた犬のような顔をするヴィア主任。
僕は疑問に思った事を口にする。
「でも僕になんの用があるんですかね?」
ヴィア主任は少し考え始める。
自分の考えを纏めるように口を開いた。
「先程は姉さんが来るかもと聞いてパニックになってしまっていたな。里から兄さんが頼まれていた内容がおかしい。蒼炎の魔法が使える人がいた場合、里まで連れて行く事ってなんなんだ?まるで蒼炎の魔法の存在を前から知っていた感じを受ける」
「どこかで僕の蒼炎の魔法を聞いて、連れて来て欲しいって事じゃないんですか?」
「それなら頼み事の内容が【蒼炎の魔法を使える人を里まで連れて来て欲しい】になるはずだ。兄さんは確かに【蒼炎の魔法が使える人がいた場合に】と言っていた」
そう言われれば何となく違和感を感じる。
ヴィア主任は話を続ける。
「里は蒼炎の魔法の存在を以前から知っていた?それなら蒼炎の魔法について何かしらの情報を持っている可能性があるな。姉さんが来るかもしれないが、そんな事より蒼炎の情報の方が大事だな」
ヴィア主任のお姉さんかぁ。やっぱり綺麗なエルフなのかなぁ。ちょっと興味がある。
「ヴィア主任のお姉さんって、どういう人なんですか?」
「アキくん、すまん。姉の話をすると嫌な気持ちになってしまうんだ」
そう言うと、ヴィア主任は研究室奥の自分の部屋に入って行った。
横にいたサイドさんが僕に話す。
「ヴィア主任は実家のエルフの里について話を避けるんだよ。僕もよく分からないんだ。ステータスカードを開くのが遅れるのは残念だけど、そろそろ授業を始めようか」
僕はヴィア主任に新たなタブーが追加された事を理解した。
そして忘れないように心の中で反芻する。
ヴィア主任のタブーは年齢と冒険者ギルドとエルフの里。
台風が過ぎ去った様な空気の中、サイドさんの講義が始まった。
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