国王陛下との会食
僕は理由も分からずにかけられる期待に困惑してしまう。
その時、会食の準備ができたと連絡が来た。
呼びに来た王宮の執事の後に続き会食の会場に入った。
会場と言うよりは部屋の一室くらいの大きさ。テーブルも大きくなかった。
ただ部屋の雰囲気はとても好感が持てる感じだった。
身構えていた僕は少し拍子抜けしていた。
案内された席に座ると飲み物が用意された。僕はさっぱりとしたフルーツジュース。ミカは陛下にワインを勧められてワインにした。
陛下の言葉が響く。
「それではアキくんとミカさんと出会えた幸運を御先祖様に感謝して乾杯!」
そう言って食事が始まった。
出てくる料理はボムズ、ウォータール、コンゴ、カッター等の名物料理と王都名物料理のパスタが締めであった。
食事中の会話は今までのダンジョン制覇の話が主だった。
デザートのケーキが出てきた。なんか見た事の無いケーキだ。一口食べると口でとろける食感だった。僕は夢中で食べていた。
その姿を見た陛下は「アキくんもやっと子供らしいところを見せたな」と喜んでいた。
食後のお茶を飲みながら雑談が始まる。
陛下から疑問点を上げられた。
「先程聞いたが本当に2人だけのパーティなんだな。アキくんが火属性、ミカさんが金属性か。パーティメンバーは増やさないのかな?」
僕は答える。
「探そうと考えたこともあったのですが、何となくズルズル来て今の状態です」
「何となくズルズルでBランクダンジョンを2つ制覇しているなんてな。凄いな」
「制覇したと言っても危なかったですから。水宮のダンジョンではボスモンスターに殺されかけました。このミカがいなかったら僕は危なかったです。火宮のダンジョンは完全にミカ1人で制覇したものですから」
陛下がポツリと言葉をこぼす。
「【囚われの剣姫】か…。」
久しぶりに聞いた異名だな。
陛下がミカの顔を見て話す。
「ミカさんはウチのリンカイ王国とカンダス帝国との戦争で捕虜になって戦争奴隷になったのだろ?不幸な戦争だった。それでもウチが問題ないと言えば奴隷解放もできるだろう。どうだ?せっかくだから奴隷から解放されないか?アキくんへの補償はこちらからするが」
その陛下の申し出にミカは悩みもせずに答える。
「誠にありがたい申し出ではございますが、その件はお受けするわけにはいきません」
「そうなのか?」
「はい、私がアキ様の奴隷でいる事は私の我儘なんです。これについてはアキ様からもご理解いただいております」
陛下は何かしらの理由があると思ったのかそれ以上強く言わなかった。
「これは気を使い過ぎたかな。この件は忘れて欲しい。それより水属性や風属性の人をパーティメンバーに加えたりはしないのか?」
僕が答える。
「どうしても実力差がありますと危険性が高くなります。王都魔法学校を卒業してから本格的なダンジョン制覇を目指す予定にしております。その時にもう一度パーティメンバーを増やすかどうか考えてみたいと思います」
陛下は寂しい声で言った。
「我が死ぬ前に封印ダンジョンの制覇を見たいが難しいかもなぁ。でもアキくんとミカさん、ゆっくりでも、まずはAランク冒険者になってくれな」
何となく寂しさを含んだ空気で謁見と会食は終わった。
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