泣き崩れた女性の対処方法
「ミカが危惧しているのは蒼炎の怒りが僕に向く事なんだね」
ミカが頷く。
僕は出来るだけ優しく声をかける。
「きちんと説明してない僕が悪いね。僕は蒼炎の感情を感じている。これは僕の中では確信していることだ。同じように蒼炎も僕の感情を感じてくれてると思うんだ」
ミカは真剣に聞いている。
僕は話を続ける。
「入学試験の時、蒼炎はとても怒っていた。それを僕は強く感じた。ダンジョンでしか使わないせいでストレスが溜まっていたんだろうとは思う。でも僕の感情にも考慮していたような気がするんだ。僕たちは王都に来てから嫌なことばかりあったよね。冒険者ギルドの食堂で店員に嫌味を言われたり、冒険者に絡まれたり、念のためギルド長からも距離を置くようにしていた。また僕は入学試験の時にダンジョン外で蒼炎を使うことを危惧していた。ギリギリまで交渉していたけど黒龍の杖も使わせてもらえなかった。あの時、試験官に揶揄されて僕は少しキレていたんだ。あの入学試験の蒼炎の怒りはダンジョン内でしか使われない蒼炎のストレス以外に僕の怒りも代弁してくれてるように感じたんだ。蒼炎が消える前に蒼炎と会話ができたような気がするし」
一度言葉を止めミカを見る。
ミカが口を開く。
「それなら蒼炎はアキくんとコミュニケーションをしているって事?」
「今日、最初の蒼炎からは楽しい感情が流れてきてね。僕も嬉しくなったんだ。なんだろう。自由を感じたのかな?僕は心の中でもっと楽しんで良いよって言っていたよ。それで蒼炎からはもっと楽しい感情が流れてきてね」
ミカは無言だ。
僕はこのまま話す。
「僕とミカはずっと蒼炎に助けられてきた。蒼炎が無ければ今頃はどうなっていたかわからない。僕が今、本当の意味で信用して信頼しているのはミカ、君だけだ。だけど同じように蒼炎を信用して信頼している。それだけ助けてもらった。もし蒼炎が生きているのなら僕やミカを傷つけることなんか無いと思っている。理屈じゃないんだこれは。蒼炎の感情と会話して、心で感じたものだから。だから心配しなくて良いよ。確信している、蒼炎は僕たちを守る魔法なんだ。これからも僕とミカを守ってくれるよ」
僕は話したい事は全部話した。蒼炎の感情を僕が信じられるのは蒼炎と感情を交わしたからだ。ミカには実感しにくいと思う。これはしょうがない。
ミカが僕を見つめて言葉を紡ぐ。
「頭では理解したけど、残念だけど気持ちが納得していないところもあるかな。それでもアキくんが決めた事に反対するのはおかしいもんね。私はアキくんについて行くと決めたのだから。私からのお願いを聞いてくれる?」
「なにかな?」
「私を1人にしないでください。お願いします」
そう言ってミカは泣き崩れた。
僕は焦った。どうして良いか分からなかった。
こういう経験は無いし、僕が今まで読んだ本にも書いていなかった。
僕はミカが泣き止むまで、ミカの身体を抱きしめるだけだった。
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