ミカからの話
帰宅後、ユリさんが作ってくれた夕食を食べたが会話が弾まなかった。
僕とミカがいつもと違う雰囲気だからだろう。
そのままお風呂に入り、リビングのミカとユリさんにおやすみなさいを言って自室に入った。
ベットの上で考え事をする。
今日、一番最初に撃った蒼炎はとても楽しそうだった。
その感情を感じた僕が嬉しくなるくらい。
初めて蒼炎の感情に気が付いた入試の時はどうだったかなと思い出す。
凄い怒りだったなぁ。
あんなに怒ってる蒼炎に僕も煽るような感情を持ってしまったくらいだった。
今日、杖を使うと蒼炎の感情が感じにくくなっていた。
そういえば【昇龍の杖】持ってから、杖無しで蒼炎を撃つ機会がほとんどなかった事に気がついた。
もしかして結構前から蒼炎は僕に対して感情をぶつけていたのかな?
考えてもわからない事をつらつら考えていたらノックの音がした。
扉を開けるとミカがいた。
部屋に入ってもらい、ミカは椅子に座った。
僕はベットに座りミカを見つめていた。
どちらも話さなかった。
今年の1月1日に2人で食べた朝食は無言だった。その時は心地の良い静けさを2人を包んでいた。
今の無言は心を重くさせるものだった。
この重い空気を破ったのはミカだった。
顔を上げて僕を見る。
「帰りの馬車の中ではごめんなさい。私が間違っていたわ」
「そんな事はないよ。ミカは僕の事を心配してくれたんじゃないか。僕は僕で自分の我儘を通しただけだよ」
「そういう事ではないの。なんて言えばいいんだろう」
そう言ってミカは言葉を止め俯いた。
また2人の間に沈黙が訪れた。
少し経ってミカが俯いたまま話し始めた。
「私ね、何か臆病になってたみたい。アキくんがいない生活ってもう考えられなくて。蒼炎の魔法に感情があると聞いて思ったの。蒼炎の魔法って使うと全部灰にしてしまって残らなくなるでしょ。考えられない威力なのよ。入試の時の蒼炎の威力が凄かったと皆んなが言っていたけど私は直接見てなかったから、そんなもんかって思っていたのね」
ミカはそこで言葉を切り顔を上げて僕の目を見て話を続けた。
「今日の初めに撃った蒼炎を見て実感したのよ。あれは普通じゃないって。まぁ今までのダンジョンで使っていた蒼炎も普通じゃなかったけどね。今日の蒼炎は戦争を思い出しちゃったのよ。充分、戦略級の魔法だった。その後撃たれた蒼炎は普通だったけどね。ただイタズラに蒼炎の感情にストレスをかけては駄目かなって。蒼炎に感情があるって事は生きてるって事かなって。それが信じられない破壊力をもってる。その蒼炎のストレスがアキくんに向いたらどうしようと思って…」
入試の時より小さかったとは云え、確かに今日の1発目の蒼炎は大きかった。ミカが危ない魔法と肌で実感したのも分かる。
蒼炎に感情がある。だから蒼炎は生きている。良く分かった。
僕の言葉が足りてなかったと気づかされた。
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