シズカとの約束の変更
先程もらった合格者だけがもらえる資料を読んでいた。授業のカリキュラムや生活上の注意点などが書かれている。
ミカと雑談をしながらカリキュラムを見ていたら目の前にシズカ・ファイアードが立っていた。
この子もめげないなぁと思い声をかける。
「シズカさん、合格おめでとうございます」
シズカはキツい顔をして話し始めた。
「火属性の1位合格者に言われてもそんなに嬉しくないわ」
「それでシズカさん、以前私とした約束は守っていただけるのでしょうか?」
シズカのキツい表情は変わらない。そして口を開く。
「さすがに同じ学校の同じクラスでは会話が生じたりするのは避けられないわ。悪いんだけど、それは許して欲しいわ」
僕は一つため息をついて返事をする。
「確かにそうですね。分かりました。クラスメイトとして最低限生じる会話や交流は許容しましょう」
シズカがニヤリと笑った。
「ありがとうございます。アキ様の広い心に感謝いたします。それで早速なんですけどこの間の魔法実技試験の魔法についてお聞きしたいのですが」
やっぱりそうか。シズカの好奇心は底抜けだ。
面倒くさいなぁ。何とか躱せるか。
「そのような質問はクラスメイトとして最低限生じる会話とは思いませんが?」
シズカの勝ち誇った顔は変わらない。
そして僕と会話を続けようとする。
「優れたクラスメイトがおりましたら、その人から指導を仰ぎ自分の成長に繋げて行く。入学試験の1位合格者の話を聞くのはクラスメイトとして当たり前だと思います。私の質問は間違いなくクラスメイトとして最低限生じる会話だと思います」
酷いこじつけだと思った。もう会話を切り上げたい。強引に打ち切ろう。
「どうやらシズカさんとは見解の相違があるみたいだね。これは人それぞれだから良いと思うよ。僕は自分の見解を人に押し付けようとはしない。シズカさんにも同じ事をして欲しいな。ガイダンスが始まる前に資料を確認したいんだよ。今日のところはこの辺で引き下がってくれるとありがたいのだけど」
秘技!俺はしないからお前もするな!発動!
特に変わった表情を見せずにシズカが言った。
「分かったわ。でもこれから長い学園生活があるのよ。早めに教えてくれたほうが楽になると思うわ」
そう言ってシズカはミカの隣りの席に座る。
僕の耳元でミカが小声で話す。
「いつもシズカさんを見てますが心が折れずに凄いですね。好奇心丸出しです。シズカさんも言ってましたがアキくんが諦めたほうが楽じゃないですか」
今度は僕が耳元で話す。
「いろいろあるんだよ。家に帰ったら話すよ」
そう言って僕は資料に目を落とした。
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