ミカ・エンジバーグの事情4
ミカ・エンジバーグの視点です
「実は僕には秘密が3つある。この秘密は実力的にも権力的にも力を付けるまで隠しておきたいんだ」
「秘密!?」
「秘密を話す前に主人としてミカに命令する。僕の秘密を他人に知らせないように」
「分かったわ。隷属の紋章がある限りその命令は守るわ。秘密があるから奴隷を購入したってわけね」
「まず一つ目は既に知ってるね。僕がファイアール公爵家の人間ってことだ。本当は15歳の成人になってから家を出る予定だったんだけど状況が変わって家出してきた。冒険者ギルドが12歳から登録できて良かったよ」
まず一つ目の秘密はなんて事はない。どうせいないものとして扱われていたのだから。
主人はお茶を飲んでから静かにカードを取り出した。
「次がこのカードだ。見てもらえるかい」
ギルドカード!?何かが違う!
「こ、このカード!」
「そうだ。ステータスカードだよ。これによって自分のステータスが分かる。国宝級のお宝だね。ミカも触ってみたら?」
おそるおそるカードに触ってみる。主人のステータスは消えて、私のステータスが表示された。
呆然としている私に向かって主人は口を開く。
「自分のステータスが分かるってのはとても大きいことだね。3つ目の秘密はもう消えているけど僕のステータスに記載されてる魔法についてだ」
そう言ってもう一度主人がステータスカードを触る。
【魔法】蒼炎
蒼い炎!?
「蒼炎?聞いた事の無い魔法だわ。炎は赤じゃないの?」
「僕もそう思っていたんだけど、通常のファイアーボールと比べても蒼炎は破壊力が凄いんだ。これは実際に見てもらったほうが良いね。僕の髪色は蒼炎の色だったみたい」
「ファイアール公爵家には知らせてないの?」
「ファイアール公爵家に蒼炎の事がバレたら冒険者ができなくなる可能性があるだろ。冒険者でいろいろ楽しいことをしたいんだよ。だから家出してきたんだ」
3つの秘密はわかった。蒼炎についてバレると実家に縛られる可能性がある。冒険者になるために家出してきた。秘密を守るために奴隷を購入したのも分かった。
この主人の根本は独善的で利己的だ。他人から必要とされなくても大丈夫。自分は自分を必要としていればそれで問題無いってことか。悩んでいた自分が馬鹿みたいではないか。単純過ぎる思考に笑いが漏れた。
「あなたちっちゃいなりのくせに大胆な行動に出るのね。気に入ったわ。私も一緒に冒険者として楽しみたくなったわ。どうせ私は誰にも必要とされていないからね」
「僕も今まで誰にも必要とされてこなかったよ。だけど冒険者としてこれから楽しんでいきたい。それにミカは既に僕から必要とされているんだよ」
こんな子供の言葉にドキっとした。惚れてしまいそうになるね。この子の奴隷になるのも良いかもしれない。そう思い右手を差し出し羞恥を隠すために軽口を叩く。
「よろしくね。ご主人様」
「こちらこそよろしくミカ。でもご主人様はやめて欲しいかな?」
「じゃアキくんで!」
アキくんはまだちいさな手で私の手を固く握りしめた。
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