屠殺場ダンジョン
屠殺場ダンジョンの中は洞窟タイプだった。幅は20メトルほど。ダンジョンの壁が淡く光っている。視界は良好だった。
ミカは念のため僕の少し前を歩いている。僕の後ろはヴィア主任とサイドさんが並んで進んでいる。
前方からオークが3匹出てきた。相変わらず豚にそっくりな顔で身体は腹が出ている。ただし力は強い。
「それでは撃ちます」
僕はそう宣言して蒼炎の詠唱をした。
【焔の真理、全てを燃やし尽くす業火、蒼炎!】
直径20センチほどの蒼い炎玉が右手より発射され真ん中にいるオークの胸に命中する。蒼い炎が広がる。命中したオークは蒼炎に包まれ消えて行く。両隣にいたオークは蒼炎の余波を受けて黒焦げになり崩れ落ちる。
「いやー!見事だね!」
ヴィア主任が叫んだ。急いで蒼炎の着弾地点に急ぐ。軽い熱気がまだあった。しかし急速にその熱はダンジョンが吸収する。白い灰と黒焦げになったオークだったものもダンジョンに吸収されていく。そして魔石が3個残った。
「見た感じファイアーボールより飛んでいくスピードは速いね。威力はファイアーボールと比べる事が間違っている。確かに蒼炎の有効範囲は半径3メトルくらいだったね。この間の試験で見たのとは全然違うね。試験のは極大魔法クラスだよね。今の蒼炎はいつもダンジョンで使用しているものと同じかな?」
興奮しているのかいつもより早口になっているヴィア主任の質問に答える。
「そうですね。いつもダンジョンで使っている蒼炎です」
「なるほど。興味深い言葉だね。通常、魔法はダンジョン内で使うと威力が落ちる。ただすぐに魔法は目標物に当たるから、その影響は微々たるものだ。ただ蒼炎の場合は延焼温度が相当高いからその熱エネルギーをダンジョンに吸収させているんだね。ただ当たるまではそんなにエネルギーが吸収されないんだよ」
ヴィア主任の言葉に僕は答えを要求する。
「つまりどういうコトですか?」
ヴィア主任はゆっくり答えた。
「この間のダンジョン外で撃った蒼炎と先程撃った蒼炎は別物としか思えないよ」
確かに試験で撃った蒼炎は僕の想定を超えて大きくなったけど…。
「でも僕は試験のときも先程も、全く同じ詠唱で蒼炎を撃ちました。それで魔法が別になる事ってあるんですか」
「ここまで威力が異なる魔法になる事は考えにくいねぇ。まぁ後日、王都の郊外で蒼炎を撃ってもらう事になると思うから」
僕はヴィア主任の言葉の言い回しが気になった。
「思うってなんですか?」
「あぁ、説明して無かったね。試験の時の蒼炎の魔法の威力が今問題になっていてね。あんな威力の魔法をボコボコ撃たれたら困るってね。今、王国の機関に研究のためダンジョン外での蒼炎の使用について了解を得ている最中なんだよ。そのうち君のところにも王国から使者が来ると思うんだ。蒼炎を許可無くダンジョン外で撃たないようにって。ただ君はBランク冒険者だろ。王国からの圧力と取られたくないんだろ。今は冒険者ギルドとかに根回し中だと思うよ」
なるほど。確かにあんな威力を外で撃たれたらとんでも無い事になる。試験の時の蒼炎の威力は戦争時などに使う戦略級の魔法に当たるだろう。
通常、戦略級の魔法になると大勢の人数で大規模な用意が必要になる。それを1人で簡単に使われたらパニックになるな。
戦争なんかには駆り出されたく無い。皆んな不幸になるからミカも戦争で奴隷落ちだもんな。
それにしても細々とダンジョン内で蒼炎を使っていれば問題無かったのかなぁ。
王都に来てからなんか嫌な事が多いな。
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