サイド・ウォータージ
朝早くに目が覚めた。開封できない封筒が今日開くかもしれない。伝説の人物である【ウルフ・リンカイ】の事が何か分かるかもしれない。僕は興奮しているようだ。
少し早い時間だが庭に出て素振りを始める。だいぶ春めいて来ているがまだ朝はすこし肌寒い。素振りをしているとだいぶ身体が温まってきた。
今朝はまだミカが起きてこない。昨日、引っ越し祝いと言いながらユリさんとワインをいっぱい飲んでいたからなぁ。今日は遅い起床かな。
一通りの素振りの型を終えた。ミカもいないから今日は模擬戦ができない。朝の鍛錬を終了にしてリビングに戻る。
ユリさんがちょうど起きてきて朝ごはんを作ってくれた。
雑誌を見ながらリビングで時間を潰した。
そろそろ訪問しても失礼ではない時間になったので王国魔法研究所に歩いて向かう。王国魔法研究所は魔法学校の隣りにあり、その職員は皆んな魔法エリートだ。
研究所に入り受付でヴィア主任との面会をお願いする。ヴィア主任は自分の研究室にいつも篭っているとの事で直接行ってくださいと言われる。
僕はヴィア主任の研究室の場所を教わり2階に登った。
僕はヴィア主任が残念美人の可能性があると思っている。研究室は汚いのでは無いかと勝手に想像していた。
ヴィア主任の研究室は2階の1番奥になっていた。
ノックをしたが反応が無く、恐る恐るドアを開けて声をかけた。
「おはようございます。アキ・ファイアールです。ヴィア主任はおられますか?」
研究室はとても綺麗に片付いていた。少し意外に感じていると奥から若い青髪の男性が現れた。
「良く来てくれたね。僕はヴィア研究室の研究員のサイド・ウォータージだ。ヴィア主任は昨日遅くまで研究していてまだ寝てるところだ。起こしてくるからそちらのソファで待っていてくれ」
サイドさんは研究室の奥に引っ込んでいった。
僕は勧められたソファに座っている。
少し経つとサイドさんがお茶を入れて戻ってきた。
「ヴィア主任は寝起きが悪くてね。すぐには頭が働かない人なんだ。現在シャワーを浴びている。その間お茶でも飲んで、もう少し待ってもらえるかな」
「わかりました。特に用事も無いので問題ありません。そういえばヴィア主任は金属性の魔法について詳しいのですか?」
サイドさんが自慢気に話す。
「ヴィア主任は金属性だけじゃ無く、全ての魔法について詳しいよ。リンカイ王国一の魔法研究者だと思っていただければ良いかな」
僕はこれを聞いて安心した。これなら封筒が開封できるかもしれない。
「アキ・ファイアールくんはBランク冒険者なんだろ。面白いダンジョンの話なんか聞きたいなぁ」
サイドさんはとても気さくな雰囲気で聞いてきた。付き合いやすいタイプの男性だ。
「サイドさんはアクロ出身ですか?」
僕は髪色と家名から想像して尋ねた。
「まぁ髪色で分かるよね。そうだよ。アクロ出身だね」
「それでは沼の主人ダンジョンの話でもしましょうか」
そう言って僕はサイドさんと雑談を始めた。サイドさんは聞き上手で会話はとても盛り上がった。
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