馬車での移動
僕はミカに小声で話しかける。
「僕、なんかビングスさん苦手かも」
ミカも同意する。
「私もダメ。アキくん気が付いた。話している最中にチラチラ私の胸や脚を見てるのよ。気持ち悪いわ」
それは気が付かなかった。女性はそういう視線に敏感って言うからな。
「あまり関わらないようにしようか。Dランク以下のダンジョンじゃあまり美味しくないしね」
その時ギルド長のビングスが1人の女性を連れて戻ってきた。
「こちらが君たちの専属になるパメラだ。パメラ、こちらがBランク冒険者のアキ・ファイアールさんで、こちらの女性がBランク冒険者のミカ・エンジバーグさんだ」
パメラと呼ばれた女性がこちらを見て挨拶する。
「パメラと申します。Bランク冒険者の専属に選ばれて光栄です。頑張りますのでよろしくお願いします」
挨拶が終わってギルド長が話す。
「じゃこの後は住む家に案内してくれ。パメラ頼んだぞ。それではアキさん、ミカさん、これからよろしくお願いします」
ギルド長室を出てパメラの後をついて行く。家までは馬車で行くとのこと。王都は広いからね。
用意されていた馬車はかなり豪華だった。
ちょっと驚いてパメラに聞いてみた。
「この馬車はギルド所有のものなんですか?」
当然のような顔してパメラは言った。
「そうですね。王都支部の馬車です。乗り心地がとても良いですよ。さぁどうぞ」
柔らかなクッションの効いた座席だった。最近いつも1番高い馬車を使ってきたから違いが分かるようになっている。これは間違いなく高い馬車だ。
僕はパメラとのコミュニケーションを図るために会話を始める。
「本当に乗り心地が良いですね。アクロ支部やボムズ支部の馬車と比べると雲泥の差です」
パメラは勝ち誇ったような当たり前のような顔をして僕との会話にのってきた。
「ここは王都ですからアクロやボムズと比べるのが間違いです。王都にはこれくらいの馬車で無いと。こちらの馬車はギルド長のビングス様が購入を決めた品のある馬車です」
「やっぱり冒険者の数も王都ならいっぱいでしょうね。納品される魔石の量も桁違いでしょうからね」
パメラは少しだけ口ごもって会話を続ける。
「まぁそうですね。王都支部は冒険者の数が多いですから」
馬車の進む方向を考えるとセンタールの北西側に進んでいる。街の様相が変わってきた高級住宅街地域だ。
馬車が止まった。何となくイヤな予感がする。
馬車を降りると少し小さめだが立派な屋敷がある。どう見ても貴族が住む家だ。僕は一応貴族だけど。
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