権力の正しい使い方
朝起きてリーザさんが作ってくれた朝ごはんを食べて受験の勉強をする。
キリの良いところでミカと一緒に冒険者ギルドの鍛錬場に久しぶりに顔を出した。最近剣術は実戦主体でやっていたからなぁ。火宮のダンジョンで自分の無力さを痛感したからね。
鍛錬場は立派だった。縦50メトル、横30メトルはありそうだ。鍛錬場の隅には木製の武器がいっぱい立てかけてあった。僕は木剣を握りそれの先に重りをつけて素振りの型を始めた。久しぶりだったので剣先がブレる。丁寧に調整していく。少しずつ感覚が戻ってきた。ある程度満足できた。次の型に移る。体重移動に注意して素振りを続ける。ミカも僕の素振りを見て特に何も言ってこない。大丈夫なようだ。
素振りが終わって水を飲んで少し休憩。その後ミカと模擬戦の予定だ。
ボケっとしていたら20代半ばの男性が近寄ってきた。
身長は1.8メトルほど大きいな。身体付きはしっかりと鍛錬をしているのか引き締まっている。髪色は黒に近い茶色。魔力が無い人の髪色だ。濃い顔をしている。太い眉に大きな目。しっかりした鼻がついていて少し厚めの唇をしている。女性から見たら好き嫌いのはっきりしそうな顔である。僕の直感が囁く。関わると面倒な人だ。
「おい、お前!俺と模擬戦をやらないか」
僕は表情を変えず答える。
「いえ、間に合っております」
「なんだお前は腰抜けか。それとも剣に自信がないのか?」
そんな安い挑発には乗らない。
「魔法と比べたら剣術には自信ないですね。それでは」
そう言って僕は立ち上がりミカを呼んで帰宅した。
鍛錬が中途半端になっちゃったな。まぁ今度からは朝早く行くか。
「先程の男性と何かあったんですか?」
「いや大した事ではないな。ミカは先程の人は知ってるの?」
「顔を知ってる程度ですね。名前も知りませんし、話したことはありません」
「まぁ特徴を言えばリーザさんなら知ってるだろ」
帰宅して先程の男性の名前がわかった。覚える気がしないので忘れる。
リーザさんの話では僕とミカがボムズにくる前まではボムズの冒険者ギルドの中では5本の指には入る冒険者だったそうだ。5本の指って…。それは5番目って事だよね。じゃ今は7本の指に入る冒険者ってことか。
面倒だからリーザさんに先程の件を少し脚色して伝える。慌てたリーザさんはすぐにギルド長に報告に行ってくれた。
次の日からその男は鍛錬場の無期限使用禁止と2週間の冒険者ギルドのトイレ掃除の罰を受けてた。
権力は正しく使わないとね。
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