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白狼伝説

パーティーの空気が落ち着いてきた頃、ミカが僕が暮らしていた離れの建物を見たいと言い出した。

別に楽しいところではないが連れて行くことにした。ミカの酔い醒ましにもなるから。


本館の脇を抜け、離れの建物に近づく。こちらは人気がなく静かだ。パーティ会場の喧騒が微かに聞こえてくる。


「いつもみんながパーティーをしているときにアキくんはこの中で1人でご飯食べていたんだ。気が狂いそうにならなかった?」


「そうだね。僕は一冊の本に助けられたんだ。子どもの絵本にもなっている【白狼伝説】。その小説を何度も読んだよ。白狼と呼ばれていた冒険者が仲間と共に世界中を冒険して神獣の力を借りて化け物を倒す話さ。僕はそれを読んで冒険者になろうと心に決めたんだ。15歳になったら家を出て冒険者になる夢を持てたんだ。それで心は折れなかったね」


「そうなんだ。だったら私は【アキくん伝説】を執筆しようかしら」


「【アキくん伝説】は止めてよ。カッコ悪すぎる」


「じゃ【蒼炎の魔術師】なら良いかしら?」


「あんまり変わってないよ」


ミカと掛け合う冗談がとても心を軽くしてくれる。楽しいなぁ。


何の気なしに離れをみる。奥の大木が見える。そういえばあの祠と結界はどうなったのかな?確かめてみるか?

そう思い離れの裏に足を向ける。ミカも何気無くついてくる。

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