シズカ・ファイアード
弟のガンギ・ファイアールがテーブルから離れるとすぐに今度は12歳の女の子が近寄ってきた。シズカ・ファイアードだ。
僕はおもむろに発言した。
「君は約束を何だと思っているんだ。君と僕は今後一切関わらないって約束したはずだが?」
シズカは俯いていた。その後、急にこちらに顔を向けた。強い意志を感じる目だった。その目を見た僕は【あ、面倒くさくなる】と思った。
シズカは僕の目を真正面から見つめ口を開いた。
「約束は覚えているわ。それはごめんなさい。でも気になるの。魔法が使えなかった貴方が瞬く間にBランク冒険者になるなんて。普通じゃない。蒼炎の魔法って何なの?そんなに凄い魔法なの?どうやって使えるようになったの?」
僕はため息を吐いて返答する。
「君はいつだってそうだ。世界が自分中心で回っていると勘違いしている。そう思っていて良いのはせいぜい5歳までだよ。君は自分の考えが正しいと思っていて、自分の都合しか考えない。だから約束も簡単に反故にできるんだよ」
「そんな事ないわ!私だって他の人の事も考えている!」
「まず君は自分の好奇心を満たすためだけに僕の前に顔を出した。約束を破ってまでね。そんな君に蒼炎について話すことはないよ。また他の人の事も考えていると言ったね。後ろを見てごらん。先程から僕は麗しい弟から凄い形相で睨まれているんだよ。こんな役立たずなんてほっといて婚約者にでも時間を使うほうが建設的だと思うけどね」
唖然として声が出なくなったシズカに僕は言葉を続ける。
「これ以上君と話す時間が僕にはもったいないんだよね。僕には素敵な女性が相手をしてくれているんだ。少しは気を使ったらどうなんだ」
悔しそうな顔をしてシズカが口を開く。
「分かったわ。今日は諦める。ガンギについては私は全く興味がないの。早く婚約破棄して欲しいくらいなんだから。お邪魔しました」
そう言ってシズカは僕たちのテーブルから離れていった。
「私をダシにするなんてひどくない?」
「ごめん、ごめん。でもまぁ本当のことだから。ミカとの時間は大切にしたいんだ」
「まぁ許してあげる」
それからミカと会話を楽しんだ。
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