街の視線
1日休養を取り、次の日に焦土の渦ダンジョンの制覇を目指すことにした。
休養日はボムズの街をミカとぶらつく事にした。
今日のミカの格好は水色のワンピースに紺色の上着を着ていた。薄く化粧もしている。改めて見ると本当に美人だなぁ。
マジマジと見つめているとミカの顔が赤くなった。色白だから赤くなるとわかりやすい。
何となくイタズラ心が湧いてきた。
ミカを褒めてもっと顔を赤くしてやろう。
「今日のミカは一段と綺麗だ。水色のワンピースも似合っているよ。素敵だね」
そう僕が言うとミカの顔がより赤くなった。そして俯いた状態で僕に言った。
「褒めてくれてありがとう。アキくんの水色の髪色を身に付けたくてこのワンピースを買ったの。似合ってるみたいで良かったわ」
僕の髪色を身につけたいだなんて…。嬉しいやら恥ずかしやらで僕の顔も赤くなったような気がする。
「それじゃ行こうか」
恥ずかしさを取り繕うように家を出た。
ボムズの商業地区は北東にある。今日は武器屋や本屋などをぶらつく予定。
商業地区を歩いて行くと、僕を見て眉を顰める人がたまにいる。
アクロでは目立たない髪色だったから、このような久しぶりの視線にボムズに帰ってきたんだなっと思った。
実は僕はボムズでは有名人だ。悪い意味で…。
僕はリンカイ王国の南の封印守護者のファイアール公爵家の長男。貴族である。
しかし髪色のせいで公爵家からはいないものとして扱われている。この街では水色の髪色はほとんどいない。そのため街の人はすぐに僕だとわかる。街の人からは出来損ないと陰で言われ、ずっと腫れ物扱いされてきた。
髪色の話をすると、魔力が全くないと黒に近い茶色になる。平民はほとんど魔力がないため人口の9割ほどの髪色は黒に近い茶色だ。
余談だが、北の守護者のアイアール公爵家は漆黒の髪色になる。魔力が薄いと黒が薄くなり灰色となってくる。ミカの髪色は綺麗な黒色のためアイアール公爵家と関係があるのかと想像はしている。
ここボムズでは火を司るファイアール公爵家の影響が強いため、赤系の髪色が多い。火の魔力が弱くなると赤色が薄くなっていく。1割弱がこの髪色だ。
僕の髪色が目立つ理由がわかってもらえたと思う。
前方から20歳くらいの赤色の髪をした男性がこちらに歩いてきた。髪色の濃さから推測するとたぶん貴族だ。その男性は僕に気がつくとUターンして脇道に入っていった。
先日、ファイアール公爵家から分家に通達があったようだ。僕に対して干渉しないようにと。
今までバカにしていた僕に対して、どう対応したら良いのか困っているのだろう。
まぁ人の視線を気にしてもしょうがない。ボムズで一番品揃えの良い武器屋に来たので入店する。
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