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嵐を穿つ槍②

「だーかーらー、ここに我の城が来てるって言ってんの」

「なんで早く言わない!?」

「大丈夫、大丈夫、大きくなりすぎたせいで城の移動には馬鹿みたいに時間がかかるようになってるから」

「具体的には」

「ここに来るまでなら3日といったところかなぁ」

「……そうか」


 本当に時間はあるようだな。とりあえず避難するくらいならできそうだ。


「よし、避難するから荷物を「シン、まさかとは思いますがビクトリウスたる母達に敵前逃亡を促そうとしている訳ではありませんね?」いや、それは……」


 そうだよな、素直に避難してくれる訳ないよな。でも、家族に危険が及ぶような状態で戦うのは嫌だぞ。これが傲慢だろうと、俺は避難して欲しい。

 

 きっと俺がなんとかしてみせるから。


「お願いだよ。俺が全部やるから見ていて欲しい」

「……」


 あー、これまずいな。圧が凄すぎる。


「それは思い上がりと言うのです。借り物の力を得て溺れましたか」

「そうじゃない……そうじゃないんだ……けど」

「けどなんです? 母達は自分の身も守れない雑兵だと言いたいのですか」

「そんな……つもりじゃ」


 母さんが俺の手を握る、温かいな。この温かさを守るためなら俺はなんだってしよう。


「えい」

「はぶぁっ!?」


 身体が、浮いた、ビンタ1発で意識が飛びそうだ……


「か、母さん!?」

「良いですかシン。知らないようですから教えてあげましょう」


 教える? 何をだ?


「3日、いえ2日もあれば。ビクトリウスはどんな敵が来ても返り討ちにできるのです」

「へ……?」

「それがなんだろうと、どんなものだろうと、一切の区別無く。それがビクトリウスなのですよ」

「は、はは、なんだそりゃ……相手は世界を壊せる嵐なんだぞ」

「それがなんですか、その気になればビクトリウスだって世界を壊せます」

「とんでもないこと言うな母さんは……」


 ほんとうに、とんでもない。


 だから、頼もしい。


 ビクトリウスがどういう家か俺は忘れてしまっていたのかもしれないな。


「ふぅむ、聞こえてきてしまった。借りを返すには絶好の機会ではないかな」

「た、盾王様!?」


 そういえば今盾王がここにいるんだった、流石にこの人は帰ってもらわないと困るだろう。


 万が一があったらまずいことになるぞ。


「いや、陛下は流石に!?」

「ふふ、良いのだ。有り難いことに私は後継に恵まれている。老い先短いこの身、借りを作ったまま余生を過ごすのは肩身が狭い。この1件が終わるまで私はただのイージスだ。少々硬い老人だと思ってくれ」

「そんなことを言われましても」

「あの、配下の方々はどうしたんですか」

「ん? ああ、君が目覚める前に返したぞ。あやつらと宰相が無事ならば国は回るのだ。私に依存しない国造りを進めてきた甲斐があったというものだな」


 たぶん凄い顔して帰ったんだろうなあの3人……


「さあ、これからどうしようか、城壁を築けというのなら今からでもできるが」

「……ありがとうございます、少し時間をいただけますか」

「ああ、いつでも言ってくれ」


 盾王の援護があるとなれば、結構強引な動きをしても問題はないな。


「シンちゃん、お姉ちゃんは何をすれば良いの?」

「お兄様、ラァにもご指示を」

「ん? 姉さんとラァに俺が出す指示なんてないぞ。だって、俺が考えるより自由に動いてもらった方が良いからな。信頼してるよ」

「シンちゃんからの信頼……!」

「お兄様の……信頼!」


 実際俺の浅知恵よりも、それぞれの判断で動いてもらったほうが的確だろう。


 それに、今回俺がやる役割では他の事に気を裂いている暇はそんなになさそうだしな、


「な、なあオレはどうすれば良いんだ。あ、兄貴」

「……兄貴?」

「な、なんだよう。オレの従兄弟なんだろ、別に兄貴って呼んでも問題ないだろ……」

「いや、ファスカにそう呼ばれるとなんかこうむずがゆいような気がする」

「い、嫌か?」

「嫌じゃない、ただこう……上手く噛み合ってないだけだ」

「じゃ、この呼び方をしても良いんだな?」


 なんだ、この感じ、いや、それよりも、人を殺しそうな視線を放っているラァとデーレ姉さんに一声かけた方が良いか?


「えっと、デーレ姉ちゃんとラァ姉ちゃんって呼んでも良いか? 2人ともオレより年上だろ?」

「はうっ……!? み、認めましょう。お姉ちゃんは妹を拒みません……」

「くっ……!? 認めます、まさかラァよりも下の妹ができるなんて……」


 瞬殺だった、俺が言うのもなんだが2人とも姉妹関係に弱すぎないか。


「何はともあれ、迎え撃つ準備を始めようか」










 








 

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