嵐を穿つ槍①
「そのまま撃つのは久しぶりだな」
グングニールは確かに俺の切り札だ。最近だと派生系ばかり使っていたような気がするが、純粋な速さと熱量で消し飛ばすのが本来のもの。
前は地面から無理やり吸い上げた力で撃っていた。だが、これからは賢者の石から供給を受けて撃てる。身体への負担も少なく、それでいて威力も上がる筈だ。
「クェエエエエエエエエエエエ!!!」
鳥が鳴く、耳障りだがそれだけだ。お前がどれだけ風の攻撃をしようと、グングニールを撃つと決めた段階で俺の周りには賢者の石による障壁がある。
前みたいに壁抜けを使いっぱなしにしなくても良いから負担が減ったな。
「勅令」
さあ、始めよう。
「無制限供給開始」
まずは燃料だ。
「神槍構築」
そして形。細長い槍を一本俺の正面に。
「撃滅準備完了」
最後は起動の言葉を告げるだけだ。
「行け、グングニール・オメガ」
それは一瞬にも満たない時間、槍が光を放ち、姿を消した。
槍の軌道は見えるものではなかった。ただ言える事はある。
グングニールは更なる段階に進化したという事だ。
「槍が消えたと思ったら、どでかい風穴が開いてやがる」
嵐の鳥は断末魔の一つもあげれずに崩れていった。身体の半分以上を文字通り消し飛ばされたらそうなるか。
「凄まじいな……」
しかも今の俺はこの一撃を自分だけで撃てる。前は他の助けが要る技だったが、消耗も減ったことで撃ちやすくなったというわけだ。
「ふふ……」
「嬉しそうだねえ? 我の眷属を倒してそんなに嬉しかった?」
「……グング「わぁっ!? 待って待って!! 我はここに戦いにきたわけじゃ無いんだ!!」
するりと現れたのは俺をぶっ飛ばした災害、吹き嵐だった。戦いにきたわけじゃないという言葉を信じられるだろうか、いや無理だろ。
「ほらっ!! よく見てよ、今の我には大した力はないんだって」
「……」
嘘か? わざと出力を抑えている可能性がある。今の吹き嵐は確かに弱い、せいぜいがオゼロくらいの熱量しか持っていないように見える。
「デーレ姉さん、こいつ嘘ついてる?」
「んーん、嘘はないみたい。最初から今まで揺らぎはないよ」
「そうか……姉さんがそう言うなら」
デーレ姉さんに嘘は通じない。本人曰くなんか分かるらしいが。多分無意識下で電気の何かを察知しているのだろう。吹き嵐は賢者の石製だが、火吹きを見る限り自分の意思はある。嘘をつけばデーレ姉さんにばれるはずだ。
一応話くらいは聞いておこうか。
「で、要件はなんだ。わざわざ弱体化した状態で俺の前に来るなんてよほどだろう」
「実は我、自分の城に力奪われちゃって」
「……どういう事だ」
意味がわからない。城はお前らが操るもののはず。それに力を奪われたということは、それはつまり異常事態に他ならない。
そして、そんなことをするのは同じ賢者の石製品ではないはずだ。となると候補は限られる。
そうだな、多分だけど……
「組み込まれた他世界のパーツが暴走したか」
「え? なんで分かるの気持ちわる」
「はっ倒すぞ?」
「あははごめんごめん、我の説明が要らないとは思わなくて」
「当てずっぽうだ。仔細までは分からない」
「じゃあ簡単に言うね。まず我の城は嵐の中に浮かぶ要塞なんだ。それが今は嵐そのものが本体になってしまっているんだよね」
「それで、そうなると何がまずいんだ?」
「規模が大きくなりすぎてねこのままだとこの世界に壊滅的な被害を出しかねない。たぶんリミッターが外れちゃってるねあれは。だって、君が倒した巨龍火山ウンゼンより大きいしね」
「……あれよりでかいのか」
「確実にね。我だってこの世界を滅ぼしたくて動いているわけじゃないし、一番頼れるのは君だと思って眷属を飛ばして探していたのさ」
「その城の特性は」
「特性? ないよそんなもの。超々巨大な嵐はそれだけで世界を破壊できるからねえ」
「そうか……」
野放しにはできないが、あの火山よりも大きな嵐をどうするか。
「それはどこまで近寄れる」
「近寄る? 死にたいの?」
「分かった。近接攻撃は不可能というわけだ」
「遠距離攻撃も難しいと思うなあ、吹き荒れている風には我の力が混ざっているから何を撃っても散らされちゃうと思うよ」
「鉄壁だな」
「だから力が借りたいのさ」
攻防一体の嵐の壁ときたか。
「ああそれとね、その嵐が今こっちに向かっているから」
「今なんて言った」
【狂風帝気圧カラカゼ】
引き剥がされしこの痛み、忘れるものか
打ちのめされしこの屈辱、忘れるものか
長きに渡り利用されしこの力を
今こそ取り戻さん。
我は■■■■■が一翼
風の神使より分かたれし者なり。




