手中にありしは賢者の石
「ん……?」
あれ、普通に目が覚めたぞ。なんか最強を始めるとか言われてたような気がするんだけど?
今からどうやって最強になるのか教えてくれる流れだったと思うんだが、違うのか?
「で、なんでみんな俺から離れてるんだ?」
「違いますよシン。離れているのではありません。近づけないのです」
近づけない? なんでだ、俺の周りに障壁でもあるって言うのか。そんなものはないはずだが、母さんが嘘を言う必要もない。
ならば、何か理由があるはずだ。俺に何か変化が起こったか俺の周りに変化が起こったか、その両方か。
「なんかかゆいな」
目を擦る、そしてころりと何かが落ちた。
「え?」
擦ったのは失った方の目、つまりは緑の結晶が入ってた方だ。
で、そこから何かが落ちたと言うことはつまり。
「取れた!?」
「シン、あなたが寝てからその結晶が光を放っていました。きっとそれが原因でしょう。どうにかしなさい」
「分かってるよ母さん、すぐに解除する」
これがどんなものだろうと、使い方は分かるんだ。それが唯一俺にできること。
落ちた結晶を手に取った。その瞬間だった。
『商品コード000-賢者の石』
頭にその文字が浮かび上がった。
『またの名を万能永久電池という』
『全てはここから始まった、賢者の石の被造物でありながら唯一純粋に創造されしもの』
『好きに使え、楽しめ、汝にはもはや枷はない』
『ただ一つ付け加えるのなら、これがシンの手にあるのなら。これ以上嬉しい事はない。願わくば、賢者の石を再興せよ、世界を守れ、家族を守れ、善く在れ、それは我々ができなかった事だ』
『汝に幸あれ』
なんだ、このメッセージは、さっきの奴とは違う。別の人間だ。
誰だ、どうして俺の名前を?
『録音終わり? ちゃんと録れてっかなー、厳かな感じ出てただろ? 言うな言うな、確認するまでもない。だって俺賢者だし、え? まだ音録ってる? わー!!? バカバカバカ!!! 後進にこんな舞台裏聞かせちゃダメだろうが!!
早く切れって!! いまどきこんなドッキリ仕込むか!? いいから切れってはーやー」
ぶつりという音と一緒に終わった。どうやら声の主は賢者だったらしい。あれが序列一位かー、なんとなく賢者の石がどんな感じだったのか分かった気がする。
ゆるいなー、世界最強集団とは思えないゆるさだ。
「それで、この障壁はこの賢者の石を保護するものだと。後は俺の血を垂らせばそれで認証が進むらしいな」
もしかして、俺の目に入ってた奴を賢者の石に換えるのが最強の始まりってことなのか?
「うおっ!? なんだ!?」
石がすごい勢いで震えだした!?
俺まだ何もしてないのに!?
『認証、オーディン型の使用者、儀式を開始します』
「儀式?」
『神話再現確認。隻眼、クリア。グングニール、クリア。フギン&ムニン、達成率50%。ゲリ&フレキ、達成率50%。ユグドラシル、クリア。スレイプニル、未取得。ハングドマン、未達成。スレイプニル取得は現在不可能なため、儀式ハングドマンを実行します』
何だ何だ何だ!? 何が起こるんだ!? 儀式ハングドマンって何だ!?
「がっ!?」
首に石が巻き付いた!? 何でさっきまで石だったのに、今は縄みたいになってんだ!?
まずい、体が持ち上がってる、これじゃあ首吊りだ、死ぬぞ。
「うおぁあああああああ!!」
もがけ、縄を外せ、こんなわけが分からない儀式で死んでたまるか。
ふざけるな、あんなに継承者っぽい感じで言っておいて、賢者の石に殺されるなんて聞いてないぞ。
『ハングドマン、セカンドフェイズに移行します』
「う、そだろ」
目の前には見知ったもの、俺が撃ってたグングニールだ。何でそれがここに、俺に向けられた状態で。
『ファイア』
「ぐああああああああああ!!?」
畜生、腹が貫かれた、肉の焼けるにおいが、においが……しない?
痛くないし、そういえば吊られているのに苦しくないし、なんだこれ?
『ありがとうございます。儀式、ハングドマンをこれにて終了いたします。こちらのイベントを回収されたあなたには【Ω】のコードを差し上げましょう。上位権限を持つパスコードですのでより一層賢者の石製品をお使いいただけるでしょう』
「……は?」
『なお、生体認証も終わりましたので賢者の石はこの後好きな形に加工していただいて構いませんが。あまり小さくされると性能が落ちますので気をつけてください』
「……驚き損か」
みっともないところ見られちゃったなあ。母さんに怒られるかもしれないぞ。
「でもまあ、これで俺用の賢者の石ってことだよな」
コードとか言うのもあるみたいだし、やれることが増えるぞ。
多分。
「ん?」
障壁が消えたのに誰からも反応がない? それどころか周りに誰もいない?
俺がわちゃわちゃしているうちにどっか行ったのか? いや、それはあり得ないな。
「となると、異変が起きたと考えた方がいい」
まずは何が起こったか情報収集が必要だな。
「なんだ? これを言えば良いのか?」
頭に浮かんだ記号Ωを空中に描き、そして呟いた。
「我は石を継ぐ者」
賢者の石を通して流れ込んで来る情報の嵐。
「頭、いってえ……」
きっとこれは、賢者の石製品が拾っている情報だ。それを統合して俺にぶち込んでいる。
正直キツイが、耐えられないほどでもない。外、そして上だ。
「分かったぞ、空か」
外部からの襲撃なんて滅多にないが、上空から来られたなら比較的見つけやすいだろう。どこの誰だか知らないが、うちに喧嘩を売るとは良い度胸だな。
ずいぶんと死にたいと見える。
「試運転も兼ねてぶっ飛ばしてやる」
【賢者の石・オーディン】
え? 賢者の石をカスタマイズしたいって?
なんでそんな。専用装備ってかっこいじゃんだって?
まあそれは分かるが、それを全員分?
うっそだろ面倒くせえ。
は? 休暇一月? ……仕方ねえなあ
それで、お前はどんなのが良いんだ?
ふむふむ、北欧? 最高神?
お前、賢者だからってそこまで寄せなくても、
あ? いいからやれって?
しゃあねえなあ、仰せのままに、社長




