血縁
「良いですか、これからする話はビクトリウス秘中の秘。他言はいけませんよ」
「その前に一ついいかな」
「なんですか、母がこれからすごい話をしようとしているのに」
「膝枕されながら聞く必要ある?」
「あります」
あるのかぁ、母さんがそう言うならそうなんだろうけど。でもなあ。
「いや、姉さんとラァの目が怖いんだけど」
血走っているというか、視線で穴があく寸前というか。すごい目をしながらこっちを見てる。あと、歯を食いしばっているのか、結構な音も聞こえているんだなこれが。
正直に言って気が気じゃない。ここからの話が超重要な案件だから聞き逃せないのに。
どうする? 強引にでも抜け出すか?
「動く事は許しません」
「……はい」
動こうとする瞬間、額に指をぴたりとつける。これだけで俺の動きは封じられた。
動きの始めを潰されると動くことすらできない。
「デーレ、ラァ。あなた達もいらっしゃい、疲れているでしょう? シンの隣で寝転ぶ事を許します」
「良いの!?」
「本当ですか!?」
姉さんとラァが隣に来たか、別に問題はないけど。俺と戦ってた時よりも早かったような気がするのは気のせいでしょうか。
気のせいであってほしい。
気のせい、だよな?
『シンの旦那、残念ながらあてが壊れていないなら、さっきまでより早い事は確実サァ』
心の声に対応しないでもらえるか。今だって頭に直接話しかけてるだろ。
『ははっ、強めに繋がった恩恵でサァ。これからは内緒話がし放題……ああっ!? ちょっと、こんなのかわいい冗談ってもんだろォ!?そんな本気で回線を切断にかからなくてもいっ』
ブツリという音を最後にカタハの声は聞こえなくなった。腕と胸の辺りがざわついているから、これは多分ヤタとアルカが回線とやらを切ったんだろう。
滅多な事を言わなければ、回線の存在は許して貰えただろうに、余計な事は言うもんじゃないな全く。
「集中しなさい。それとも母ともう一戦しますか?」
「すみませんでした!!」
あんなの二度とやるか。
「マレちゃん、説得してきたよ」
「ジッ君、その呼び方は2人の時だけにしてと言ったはずだけれど?」
「ああ、そうだった。たまには子供達に両親の仲の良さを見せた方が良いと思って」
「……まあいいでしょう、ルーザスの子も疲れているでしょう。座りなさい」
「それは別に良いんだが、なんでこいつらは寝てんだ……?」
「疲れているからです」
「そ、そうか……」
すまんファスカ、うちの親は謎の説得力を出すのが上手いんだ。
しかし、なんで秘中の秘をファスカにも聞かせようとしているんだ? こんなのまるでファスカもビクトリウスの一員みたいじゃないか。
まさか。
「……母さん、隠し子とかって居たりする?」
「唐突ですね。ですが答えましょう、母が産んだのはあなた達3人だけです。邪推はよしなさい」
「ごめん母さん、でもそれならどうしてファスカにも聞かせようとしているのか教えて欲しいんだ」
「あの子はルーザスの中でも特別です。なぜならあの子の母はジッ君の妹なのですから」
「え?」
「は?」
今なんて?
「待ってくれ母さん、それならファスカは俺の」
「ええ、従姉妹に当たります」
「従姉妹!? 血縁なのか!?」
「ええ、まあ。ビクトリウスの血は入っていませんが」
「え、ええ……?」
どう処理して良いか分からない。腹違いの兄姉ですとか言われるよりはマシだが。いきなり出して良い情報じゃないだろう。
「それと、そこのルーザスは」
「母さん、ファスカだ。これからウチのゴタゴタに巻き込むのなら最低限名前で呼んでほしい。有象無象のように扱うのはナシだ」
「……分かりました。そこのファスカはまだ若いのでジッ君の妹から世話をしてほしいと言われています」
「まだ若い? 姉さんと同じくらいだろ」
若いは若いが世話をされるほど子供じゃ。
「そう見えますが、見えるだけです。身体の発育が著しくても、その子は13歳です」
「じゅうさ……!? 本当か!?」
「まぁ、そうだけど。それがどうかしたか」
「……俺よりも歳下」
「何か問題でもあるってのかよ」
「いや、ない」
少しだけ前線に出すのを躊躇うくらいだ。
「それで? 話ってのはなんなんだ、始めるなら早く始めてもらいたいんだけどな」
「良いでしょう。これはビクトリウス始まりの伝説」
【早熟】
鬼は戦えるようになるのが異常に早く、産まれて間もなくでも問題なく戦闘をこなすという。
だが、心はそうではない。いかに大きく見えようとも、その年齢に相応のものしかない。
今まで甘えることのできなかった心は、その対象を求めている。
力が強ければつ強いほど、その飢えは大きい。




