表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/107

里帰り

「はぁ……気が重い」


 蒸発した息子がひょっこり帰ってきて、家の秘密を話せだなんて言ったら絶対に怒られる。これはもう確定だ。避けられない。


 で、俺は母さんが怒った怒ったところを見たことがない。つまりは未知だ。怒ったところを見たことのない人が怒るのが一番怖いのはそこだ。


 俺がどうなるか分かったもんじゃない。


「深いため息だ。若人よ、そのように俯くものではないぞ」

「いや、とてもとても前向きになんて……ん?」


 俺の目の前にいる老人、見覚えある。盾王だ。なんで!?


「た、盾王陛下!?」

「陛下などと呼ぶ必要はない。ビクトリウスはどこの国家にも属しておらぬ。故に私を仰ぎ見る必要もない」

「で、ですがここは盾王陛下の領地」

「なるほど。ではなおさら畏まる必要はない。ここは私の領地ではない」

「へ? ではここは……?」

「あたりをよく見ると良い」

「?」


 あー、なんか見覚えあるー、なあんだ、ここ俺の部屋じゃーん、ははは、驚いたなぁ、なんて


「言ってる場合か!? なんでここに居るんだ俺は!!?」

「良い反応に腹から出ている声。身体に支障はなさそうで重畳。最も、それが良いのか悪いのか」

「なんか不穏なことを言わないでくれます!?」

「はっはっは、そろそろ時間か」

「なんのですか!?」

「平和が終わる時間。ここまでに貼ってきた盾が残り一枚になった。目覚めはせめて平穏にと思ったのだがここまでのようだ」

「え、それはどういう」


 盾王の言葉の意味はすぐに分かった。なぜなら。


「あら、起きたのね?」

「母さん……」


 扉がずり落ちるようにバラバラにされ、母さんが姿を現したからだ。その手には愛用の包丁とフライパン。


 母さんの愛用なのだから尋常なものではない。超希少な半獣半石の獣であるオリハル(コン)でできた包丁とフライパンだ。


「ほう……オリハル狐製か。ならば私の盾を割るのも頷ける」

「お褒めに預かり光栄です。今から少々お見苦しい内輪の話を始めますので応接室へどうぞ」

「うむ。死ぬなよ若人」


 行かないで欲しいというのが本音だが、今から起きる惨劇に付き合わせる事はできないな。


 さて、母さんの中にいるのは鬼か蛇か、それとも破壊神なのか。


「さて、聞きたいことを聞きましょう。あなたはこの家を捨てて外に出た、そうね?」

「え?」


 家を捨てて? 俺が? そんな事ありえないだろ。


「嫌気がさしたのか、それとも何かに絶望したのかは分からないけれど」

「待って待って、俺は別に」

「黙りなさい。母が話しているでしょう!!」

「うっ!?」


 威圧感が尋常じゃねえ。息子に向けるもんじゃねえだろこれは。


「あと少しであなたに受け継がせる準備ができたというのに。今からでも遅くはありません、賢者の石であなたは最も強き者になるの。嫌だと言うなら」

「母さん、賢者の石ってこいつらみたいなものか」


 休眠状態に入っていたカタハとオゼロを起こす。省エネ? 機能らしいがよく分からないな。


「ン? こいつァ驚きいたネェ。お初にお目にかかります、あてはカタハ。【人形工房】のはぐれものにしてシンの旦那に仕えるものでさァ。お見知り置きを御母堂」

「ワン!!」


 母さんが固まっているもしかしてまずい事をしたのか。あとはアルカとヤタ、スカイフィッシュも紹介しないといけないが……


「オイラもそうなったんだろ? 教えとかなくて良いのか?」

「いや、母さんの反応を見てからと思ってたんだけど」

「カァッ!!」


 ヤタも出てきちゃった。なんかわちゃわちゃしてしまったぞ。母さんは依然として固まっている。これは怒りの前の静けさか、呆れ返ったと言う状態か。


 もう出してしまったからに仕方ない。何事もなかったように説明をするしかないか?


「賢者の石が作った物という意味じゃなかったのか……?」

「シン……あなた」


 ゆっくりと歩いて近づいてくる。それだけの動作を止められる気がしない。どんな風に攻撃しても全部撃墜される予感しかない。


「分かっていたのね、ビクトリウスの使命を」


 え?


「せっかくだからちゃんと話しましょう。ビクトリウスと賢者の石の関係を」


 え?  


「そう、これはビクトリウスが産まれる時の話」


 なんか勝手に始まっちゃった。けどまあ、聞きたかった事聞けそうだから良いか。


「あ、それはそれとして勝手に出て行った罰は与えますからね」

「へ?」


 やっぱりダメだったー!!


「半殺し、半殺し、4分の3殺し、10分の9殺しの順でやります」

「情状酌量を要求します!!」

「却下します。理由は母を悲しませた事を相殺する事情など存在しないからです」

「そんな!!? 陪審員を呼んでくれ!!」

「シンちゃん呼んだ? ビリビリいっとく?」

「お兄様お呼びですか? 砂糖漬けになりたいならすぐにでも」

「ここは敵地の真ん中か!? 頼りにならないが、父さんなら……!?」


 父さんに加勢を要請をしようと思ったが、そんなことをしたら父さんにまで被害が及ぶかもしれない。だが、父さんならやってくれるかも……


「ん?」


 ひらひらと落ちてきたのはガタガタの文字が書かれた紙。


『生きろ。父より』

「うん。まあ、この状況なら俺でも逃げるわ」




【オリハル狐】

おいおい、この世で1番堅いものが何か知りたいのか。

鉄も鋼も金剛石もあるが、そんなものじゃ比較にならねえよ。

これはな、生きた金属なんだ。

なんで狐の形なのかって?

そんなの俺が知るかよ。

―――伝説的な金属加工職人 ドドロス

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ