リターン・バーニング
「いつまで乳繰り合っているのだ人間」
「うぉあ!? なんでお前がいるんだ!?」
俺が消し飛ばした火吹きがそこにいた。
「我を倒したからにはそれ相応の報酬があるというのに。待っていたらイチャイチャイチャイチャしくさってからに。流石に我の導火線も有頂天というものだ」
「途中から何言ってるかいきなり分からなくなったな……導火線が有頂天ってなんだよ」
「む? 当世風の言い回しだとインプットされているが違うのか。まあ良い、なんにせよお前に渡すものがあるのだ」
火吹きの手からふわふわと飛んできたのは赤い羽のようなものだった。
「言っておくが、赤い羽根ではないぞ募金とも関係はない」
「……誰に断ってるんだ」
「いや、これも言うようにと厳重にプログラムされているのだ。なんでもケンリモンダイとかなんとか」
「なんの話かさっぱりだな」
「我もだ。とにかくそれが我を倒した証だ。無くすな、それと間違っても食べるな」
「食うとどうなるんだ?」
「全身が炎に包まれて死ぬ。厳密に言うと肉体が炎で構成されるようになる。少なくともよっぽどの特異体質でもない限りは自殺と変わらないな」
うへえ、そりゃ食うなって言うわ。
「それを食べると賢者の石製品になるでしゅか?」
「ん? まあ、そう言えるかもしれないな。ある意味我と同じものになるという事だからな」
猛烈に嫌な予感
「あーん」
「食うなー!!」
「止めないで欲しいでしゅ!! 我も賢者の石の仲間になればもっと活躍できるでしゅ!!!」
「お前自分が俺の中に入るってこと忘れてるだろ!! 適合できたとしても体内に炎の塊なんか入ってきたら俺が焼け死ぬわ!!!」
「あ」
「あ、じゃねーよ!!」
阻止するのが遅かったら、大変な事になるところだったぞ……
「でも実際に入ってるわけじゃなくて、すり抜けて留まってるだけでしゅ。別にそれで焼けたりはしないでしゅ」
「いや、そうかもしれんが。だとしても万が一があるだろうが。前みたいに水中に行った時溺れ死ぬ気か?」
「うーん……それは困るでしゅ」
「そうだろう? だから今はやめとけ。どうしてもって時が来たら俺が許可を出す」
「……分かったでしゅ」
ふー危ない危ない。
「渡すべきものも渡した。では我はこれで消えるとしよう」
「最期に一つだけ質問してもいいか」
「なんだ」
「賢者の石ってどんな奴らだったんだ?」
「創造主のことで話せる領域は多くないが……真に世界を救おうとした方達であった事は確かだ。故郷が同じような理由で滅び、ここでもそれが行われようとしているのを見て立ち上がったのだ」
「で、本当のところは?」
「……勘が鋭いな」
「まあまあ、賢者の石の連中がそんな殊勝なわけないだろ。もっと自分勝手で刹那的、享楽メインの連中だと俺は睨んでる」
「……カバーストーリー看破、条件達成。真実を話そう」
え、何その顔。微妙な顔してる。
「創造主達は……言い難いが、その、お前の言った通り大義のために動くような者ではなかった。絶大な力を持っていたが、それを基本的に自分のためにしか使わなかった。趣味に合わない事はしないし、2つの世界を見つけたのも偶然だった」
まー、そうだろうな。そんなこったろうと思ってたよ。
「だが信じて欲しい。世界を案じていたことだけは確かだ。今はもう足取りを追うことすらできないが。我々を作り、技術を残し、対抗する手段を残した。それは事実だろう?」
「いやまあ、そうだけど。誰も使い方知らない技術と殺人遺跡と化したダンジョンじゃなあ」
「お前がどう思おうと、賢者の石は世界を救おうとしていたのだ。お前が今使っているものはその証拠ではないのか? 着々と力をつけているだろう? その力で世界を守れ。そのために必要なものを賢者の石は遺している」
「……言われなくても、この世界が更地にでもされたら困る」
「なら良い。さらばだ」
火吹きが消える。
「好き勝手言いやがって、結局パックと同じような事しか言ってねえし」
それで強くなれるのも事実なのがまた。
「ん? そろそろ目が覚めるか」
浮遊感が出てきた。このまま浮ききってしまえばそれは意識の覚醒に他ならない。
「ああ、そうそう、言い忘れていたが、お前の血筋も賢者の石によるものだぞ」
「は?」
「ではな……」
「待て待て待て待て!!!! 今お前なんて言った!!? とんでもない爆弾をさらっと最期に言うんじゃねえよ!!」
「ふふふ……」
「ふふふじゃねえの!!! どういうことなんだよ!!!」
「子細は当主にのみ伝わるという、気になるのならば聞くほかあるまい……」
「あっ」
今度は本当に消えやがった。くそ、当主に聞けだと?
「家に帰る必要があるな……」
今の当主は母さんだ。聞き出す事ができるかどうか分からないが、1つ言える事がある。
「死ぬほど怖ぇ……」
【赤の羽】
ふわりと浮かぶ赤い羽。ほのかに温かく、柔らかな光を放つ。
構成要素はすべて安らぎを与えるようなものであるのに、なぜか触れる事が躊躇われる。
生きる者は本能で知っているのだ。
その熱の恐ろしさを。
焔がもたらす死を。
これはその具現。
人よ熱を使う獣よ、存分に使え。されど忘るるなかれ、熱は自らも焦がすことを。




