ところで火山はどうなった
「はぁっ……はぁっ……はは」
一歩も動けねえ。全部出し尽くした。何もする気が起きねえなもう。
だが、やったんだ。俺が火吹きを倒した。
「気持ちの良い空だな……」
澄んだ空が目の前に広がっている。龍がいた時は黒煙で塞がれていたが、今はもういない。
何も邪魔するものがない空はなんて
「シィイイイイイイイン!!!! 何寝てんだお前!! お前も手伝え!!!」
なんだよ、結構良い感じ浸っていたのに。
「一歩も動けないくらい疲れてるんだ、寝かせといてくれ」
「ああん? お前が弾けさせたせいで溶岩が飛び散ったんだが? その後片付けはお前の責任じゃねえと?」
「え?」
「良いから見ろ」
無理矢理体を起こされるとそこには死にそうな顔でぷるぷるしている盾王と、必死で溶岩を処理している赤白黒の盾がいた。
「飛んだ溶岩全部受け止めたのか……」
「見りゃ分かるだろうが。ちなみにここにいないデーレは近くの水源まで飛んだぞ」
「分かった。最後の仕事だ。幸いこれは俺がなんとかできる」
そのままだったモード・オケアノスをもう一度使う。異海の水を持ってくるのと比べれば普通の水でいいから楽で良い。
「一気に冷却する。水蒸気に気をつけろって言ってくれ」
「……仕方ねぇな。今からなんか起こるぞ!! 気ぃつけろ!!!」
この大声なら聞こえただろう。本当ならこれをするのもしんどいが、責任と言われちゃあ仕方がないか。
「海で冷やす」
見える範囲にある溶岩めがけて水を落とす。急激な冷却は凄まじい水蒸気を発生させ。一体が真っ白に染まった。
「うわっ、思ったよりもすごい」
「なんだこりゃあ!?」
「これで冷えたろ? じゃあこれで本当に空だ。何も残っちゃいねえ。おやすみ」
もう無理もう無理、はい終了はい就寝、きっと捨て置かれたりはしないって信じてる。
そうだよな? そうだよね? これで起きた時今の場所だったら泣いちゃうかもしれない。
「むっすぅ」
「え、なんでそんな機嫌悪いの」
「ぷいっ」
「ちょ、ヤタ?」
寝て早々になんかすげえ不機嫌なヤタが居た。これは、どういうアレだ? 俺なんかしたか? したような気もするし、心当たりが無いわけでもないような気がしなくもないみたいな?
「仲間はずれにしたでしゅ……」
「え?」
「我は、要らない子でしゅか」
「は?」
「きっと我のことなんてただの寄生鳥だと思ってるでしゅ!!!!」
「待て待て待て!!!! なんでそうなった!? 何がそんなに拗れた!?」
「うるさいうるさいうるさいうるさいでしゅ!!! 我も居たのに!! 声もあげたのに!! 頼ってくれなかったでしゅ!!」
「……あ」
もしかして、火吹き戦でヤタの力を使わなかったのを気にしているのか!?
「いやいやいや!!? 使おうとはしてただろ!?」
「……でも使ってないでしゅ」
「えー」
「えーじゃねえでしゅ……この満ち足りた顔を見るでしゅ」
ぼわんと浮かび上がったのはカタハ、オゼロ、アルカの顔だった。たしかに満足げな顔をしている。
「うぎぎぎ!!!」
うわっ、聞いたことない音出してる。
「ぐすっ……」
「泣いてるのか……」
「あー、嘘泣きだぞそれ。オイラは騙されないからなー?」
「っ!? どうしてここに!?」
「どうしてもこうしてもあるか。シンの腕はオイラの樹なんだから。こんなに近くに居て入れないと思うのか?」
「ここは我の領域でしゅ!! 勝手な真似は許さないでしゅ!!」
「来ちゃダメだったのか? それならごめんなあ、他のやつも引っ張って来ちゃったぞ」
わー、さっきまで見てた顔が勢揃い。
「流石に泣き落としが雑すぎるネェ、もっと機を見た方が良いんじゃないかィ」
「ご主人に飼われている者同士、仲良くした方がいいでありますよ?」
「我は飼われてねえでしゅ!! 対等の協力関係!! いや!! 我の方が上でしゅ!!」
「え」
そんな風に思ってたのか。
「そうか……ヤタは……俺を下僕だと思っていたのか……」
「え、あ、いや、クチバシが滑ったというか、勢いで言ったというか」
「いいんだ、咄嗟に出るのが本音なんだから」
「や、ちが、そんな」
「俺が勝手に距離を見誤っただけなんだ、無理をしなくてもいい。これからは馴れ馴れしくせずに距離を取ろう」
「……しゅ」
「どうしたんだ? よく聞こえない」
「い゛や゛でしゅ〜!!!」
いや音量がえぐい。大泣きとかいうレベルじゃない。絶叫?
「悪かったでしゅ……距離を取るなんて言わないで欲しいでしゅ」
「分かった。これからもよろしくな」
「えへへ……」
頭を差し出してきたな。撫でろという意味だろうこれは。
「よーしよしよし」
「むふふ〜♪」
これで機嫌が治ってくれるなら良いんだけどな。
「おや、あての中に何か燃えるものが?」
「オゼロもソワソワして来たであります」
「オイラも撫でられたい!!」
殺到して来た奴らの相手も含めてしばらく撫で時間が続いたのだった。
「そろそろ良いだろ?」
「「「「駄目」」」」
夢の中とはいえ、腕が筋肉痛になりそうだ。
【巨竜火山の残骸】
シンが内側からパーンしたせいで内部に在った溶岩を周囲に吐き出す事となった。
ある意味災害としては相応しい最期ではあったが、盾王によってその最後っ屁は無効化された。
巨竜火山ウンゼンが出現したにもかかわらず、被害が最小限に抑えられたのは盾王がいち早く前線に出たおかげである。
盾王が判断に一日かけていれば今の100倍に及ぶ土地を焦土に変えていただろう




