火吹き
今まで手を抜いていたわけじゃない。ずっと必死だった、ずっと全力だった。だけど、全部を出していたわけじゃない。
アルカが来てからずっと感じていた。条件が整った感覚。本来はこうあるべきだと示された答え。今までは純粋に数が足りていなかったんだ。高ランクの賢者の石製品の所持数が。
「制限解除」
カタハ、オゼロ、アルカのおかげで俺はもっと自由に戦える。もっと強くなれる。
賢者の石が想定していたところを超えてもっと先へ行けるんだ。
「三機融合」
今目の前の火吹きを凌駕する力が欲しい。きっとこいつはあの龍より強い。それを打倒する力はなんだ。火を打ち消すのはなんだ。
「大海式対災害用兵装」
水だ、規模を考えれば海をここに持ってくるしかないだろう。
「さっき熱を見せろって言ったな? 見ろよ、お前のために俺は海を用意した」
オゼロをメインにしてこの兵装は、俺の両腕を覆う機械の籠手。望んだ量の海水を海から引っ張り出し、そして操るもの。
「熱烈だろ?」
「何かと思えば、ただの水で我を消せると?」
「俺の言った事聞いてたか? 水じゃねえんだ。海を持ってきたって言ったろ」
海を持ってきた。というのはそのままの意味だ。見える水は確かに海と繋がっている。それが例えどんなに深いところの水だろうと。
「っ!?」
「気づいたか。超深海の水はどうなってると思う。どんだけ圧がかかっているか分かったもんじゃねえよ」
「だが」
甲高い音と共に火吹きの動体に穴が開く。超圧縮された水が奴に風穴をぶち開けた。
「ば、かな。たとえどれほど圧力をかけようとも我の身体に触れる前に蒸発するはず」
「俺もちょっと前まで知らなかった。まさか深海にあんなもんがあるなんてな」
レブンが倒したあのイカは深海からの尖兵だったらしい。オゼロから改めて聞いたが、深海には異常に重たい水がある場所があるそうだ。
「そこは異海っていうらしいぜ」
その水は水でありながら特異な性質を持ち、耐性を持たぬものを容易に溶かし込む。と思えば外界からの変化は頑なに拒むとかいう意味のわからない水だ。
レブン曰く、生命のスープに近い混沌だとか。よく分からないが。
「はははははは!!! 素晴らしい!!! まさか原初の水がまだ存在しているとは!!!」
「ああ素晴らしい。それでお前が倒せるんだからな」
話しているうちに火吹きの頭上には水の塊を展開済みだ。この水に溶かし込まれれば流石に消えてくれるだろう。
「爆ぜよ」
「ぐぁっ!?」
くそ、落とす前に爆発で散らされたか。だけど俺はすぐに水を持って来られる。火吹きはもう積んでいる。
「おお怖い。怖いから我は空から攻撃するとしよう」
「飛びやがったか!?」
炎を噴射して浮いてやがる。今まで止まっててくれたから狙いをつけられたが、このまま縦横無尽に飛ばれちゃあ厄介だ。
「楽しい!! 楽しいぞ!! もっと熱くさせてくれ!! 我はもっと熱中したい!!!」
「俺は早く鎮火させたいんだが」
「つれないな、もっと熱くなろうじゃないか」
「うるせー!!」
飛びながら撃ってくる火球やら隕石やらの威力が尋常じゃねえ。異海の水で弾かなきゃ一撃で蒸発しているところだ。
「いつまでも飛べると思うなよ」
「……雨?」
上空で弾けさせた異界の水が降り注ぐ。一歩間違えたら俺が危ないからやりたくなかったが。仕方ない。
「良いぞ!! もっとなりふり構うな!!! 情熱を!! 熱気を!!! もっと我に!!!!」
「暑苦しいわ!!」
キャラ変わってね? 一段と火勢を強めやがって。いくら蒸発しない異海の水といえど。気温を上げることで俺が倒れたら元も子もない。周囲からの変化を拒絶するってことは周囲の熱を吸ってくれない事も意味しているからな。
「もっと飛びにくくしてやるよ」
空中に水溜りを設置する。これに触れた場所は持っていかれるぞ。少しずつ追い詰めて消してやる。
「良い!! 良いぞ!!!」
「その飛行性能どうなってんだ」
間を縫って飛び回ってやがる。この程度の障害なんざ気にしねえとでも言いてえのか。なら、もっと大技を出して
「気が逸れたな?」
「っ!?」
真後ろを取られた!? いつのまに? 今も飛んでいるのは炎で作った偽物か!?
「残念だ。ここまで熱くしてくれたのに。せめて我の腕の中で灰になれ」
炎の抱擁をまともに受けたら終わりだ。水の展開が間に合うか?
いや、逆に考えろ。これは最大の好機。奴は俺に緊急回避がある事を知らない。抱擁を回避しながら、水で押しつぶして終わりだ。
「……?」
「どうした? 好機だぜ?」
「嫌な予感がする。やはり離れた方が良さそうだ」
くそ、離脱しやがった。
「代わりに我の最大火力をお見せしよう。天から降る火をお前に」
「デカすぎだろ……」
あの龍をそのまま落としているような超巨大隕石。それが俺めがけて落ちてこようとしていた。
「受けるが良い。これが火吹きの裁き」
「受けるかそんなもん。こっちも準備は終わってんだよ」
水を使って撃ち出す大技、今の俺の必殺といえばあれしかねえ。
「超圧縮異海槍術式」
速度、威力共に未知数だが。何故だかやれるという確信があった。
「うおらぁあああああああああああ!!!!」
火吹きの裁きは俺の槍と正面からぶつかった。そして数秒の均衡の後。
「見事……お前は……我を打倒した……試練の達成をここに宣言する」
グングニール・オケアノスを食らって消滅したはずの火吹きの声が俺に届いた。
【火吹きの裁き】
空より来たる炎の塊。
火吹きのテンションがMAXになった時に放たれる一撃。
実はテンションが低い時に撃つ別の攻撃の方がえげつないのはヒミツ。本当の名前はメギド 。




