巨龍火山ウンゼン Ⅲ
「首が9個は多すぎるっての……!!」
どう考えてもあの頭全部から攻撃可能だ。一度に出る量は減るかもしれないが砲台が9個あっちゃな。
俺がグングニールを撃つ前に一帯が焼け野原になる可能性の方が高いじゃねえか。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」
馬鹿でかい咆哮、そして光り始める9の砲台。
「時間が足りないね? お姉ちゃん頑張っちゃう」
「え?」
雷鳴、閃光、そして弾ける龍の頭。
「さっきのすごーくカッコ良かったからお姉ちゃんも真似しちゃった♡」
「……さいですか」
俺よりも遥かに短い溜めで、同等とまではいかないまでも準ずる威力を連射するか……つくづく越えるには遠い姉を持ったと思う。
「シンちゃんのがグングニールでしょ? じゃあお姉ちゃんのはグングヤークにしようかな」
「グングヤーク……?」
「シンちゃんのは煮るんでしょ? じゃ同じ感じで言ったら焼くかなって」
「なる……ほど?」
「でも近づいた方が早いからちょっと行くね」
姉さんののネーミングセンスにはノーコメントで行こう。
「じゃ、オレも行こうか。頭潰してくれば良いんだろ?」
「いや流石に火山を殴るのはやめた方が」
「あ゛゛?」
「分かった。何かを言える立場じゃなかったな」
瞬間移動に等しい跳躍は瞬く間に頭との距離を0にした。で、そこからどうするんだ?
まさかとは思うが本気で火山を殴り壊すつもりじゃないだろうな。
「うぉおおおらぁあああああああああ!!!」
怒号と爆発音に似た打撃音。
「やりやがった……素手で火山を解体するとか」
あの拳俺に向かって来てたよな? それを考えると背筋が凍る思いだ。
今俺の首が繋がっているのは本当に奇跡だったのかもしれない。
「だけど……まだ首は半分以上ってもうない!?」
なんかいつの間にか残りの首が壊されていた。誰がこんな事を。
「ぬううううううううん!!!!」
「はぁああああああああ!!!!」
今まで気づかなかったのは不思議なくらい暴れてる。
「白盾と赤盾がいたのか」
ひたすら拳と盾で火山を押し返す白盾、対して赤盾はなんか鉄球を振り回して火山を削っている。凄まじい戦いぶりだ。頭どころか胴体まで削り始めたぞ。
「そして黒盾か」
なんかでかい処刑台みたいなので攻撃してる。首を落とだけなら他の2人の比じゃない速さだ。あれが黒盾砦を任された奴の力か。
「時間は稼いでもらっている。なら後は俺が撃つだけだ」
1番の問題はここだ。あの龍は一見削れているように見えて全然総量は減ってない。きっと地面から材料を持ってこれる限り倒せないんだろう。
一撃で消しとばす火力が必要だ。俺にはその手段がある。
「■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」
「吠えてろ。今のお前にはそれしかできないだろうからな」
ん? 吠えた? 頭が潰されているのに?
それになんだかやけに音が近いような?
「嘘だろお前!?」
「■■■!!!」
地面から10本目の首!?
早く気づくべきだった。地面から吸い上げたもので体を作っているのなら地面があの龍になる可能性もあるという事を。
「くそがぁああああああ!!!」
グングニールはまだ撃てない。グングニールに形の変わっているカタハとオゼロも動けない。そして桜腕で体を固定している俺もすぐには。
まずいぞ、近すぎる。
「アルカァアアアアアア!!!」
最後の望みをアルカに託す。これで首が止まらなきゃ俺は黒焦げになる。
「なっ!?」
弾かれた。俺だけの腕力じゃ、傷つけることもできないのか。
壁抜けをしたところで面攻撃をされ続ければ意味がない。何より今以上に体力を使ったら二発目のグングニールは絶対に撃てない。
積みか。だが。
「諦めるかよぉおお!!!」
一度でダメなら二度、二度でダメなら何度でも。アルカが俺に応えてくれる限りは信じ続ける。
「うぉおおおおおおおおおおおおおお」
迫る顎、光る口腔、0距離での攻撃は一切の軽減なく俺を焼くだろう。
耐える術はない。
「うぉおおおおおおおおおおお!!!!!」
「■■■■■■■■■■■■■!!!!」
そして、俺の視界は赤く染まった。全身を溶岩が包む。だが不思議と熱くない。
「……なんで生きてるんだ」
俺がここで生き残る道はなかった。何か奇跡でも、まさか。
「は、はは、そういえばこれはそういうものだったな」
パラパラと落ちるのは砕け散った結晶。アルカからもらった琥珀の指輪。その効力は、一度限りの死の回避。
「アルカ、ごめん。俺はお前に貰った命をすぐに捨てちまうみたいだ」
「■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」
二度目の攻撃、依然として体勢は整わず。
「……」
頬を風が撫でた。それはどこか懐かしい。次いでやってきたのは桜の花びら。
「オイラのシンに何してんだトカゲ」
桜を纏う暴風は龍の頭を打ち砕いた。
【砕けた琥珀桜晶】
無残に粉々となった琥珀桜晶、命を救う奇跡が起きようと、時間稼ぎにしかならなかった。だが、その一瞬が必要だった。風と桜が死に追いつくには。




