鬼の問い
「ん? 電撃との話は終わったのか」
終わったというか、勝手に終わってしまったというか、姉さんが自滅したというか。これで終わったと言ってしまって良いのか分からないな。
そして、この感じだとファスカも話があるような。でも、話があるというにはあまりにも闘気がみなぎりすぎている。まるで、今から本気の殴り合いを始めるかのような。
「じゃあ、オレの話を始めよう」
「待て。さっきは家族の話ゆえに口を挟まなかったが今は違うだろう」
「あ?」
「お前は何者か」
「オレは、あいつに裏切られたんだよ。約束を、信頼を、ごっそりとな」
「裏切り……?」
裏切り? 俺がファスカを裏切った? あの短時間で裏切るようなマネをしてしまったか? あの辺りは結構必死だったから記憶が曖昧だぞ。もしかして、風のやつにぶっ飛ばされていなくなったから裏切ったと思われた?
なんにせよ、俺が今やることは一つか。
「すまなかった。俺があの場所から居なくなったことは確かに裏切りだったと思う」
「ほーん? 言いてえ事はそれだけか」
「言い訳にしか聞こえないと思うが、俺はお前に教える事を放棄したわけじゃないんだ」
「そうか、なら許す」
「え」
結構本気で怒っている感じに思っていたが、これで許してもらえた? もっとこうドロドロとしか展開になるかと思っていた。さっぱりとした性格で助かった。
「良かった、それなら」
「じゃ、ケジメの一発だな」
「ぶっ!?」
俺がファスカに殴られる? そんなことをされたら俺の頭が果物のようにはじけ飛ぶ未来が確定している。耐えられたとしても、確実に尋常じゃないダメージを負う。
「あ? 嫌なのか? 信用を回復するには禊が必要だろーが」
「お、お前の一発は洒落にならないんだよ!!」
「だからなんだよ。オレから命を狙われ続けるよりはいいだろ」
「……つまり、ここで清算しないと。ずっと追い続けると」
「おう。物分かりが良いな」
「避けたり、防いだりは駄目だよな?」
「ん? 別にいいぞ。できるなら」
ファスカの速さに対応できるか、それはかなり怪しい部分だ。姉さんの動きについていけたのは今まで見てきた動きだったのと、電撃の予兆を感知できていたことが大きい。単純に筋肉の力で早いのは、ちょっと方向性が違うというか。
まともに喰らったらやばいのはそうなんだが、対応できるかはかなり怪しい。
「というわけだ槍王。俺があいつを一発殴る権利はあるんじゃねえか?」
「……夫もそれでいいなら余は口をつぐもう」
ここで嫌ですと言える人間になりたいが。それを言ってしまうと本気でファスカとの決別を意味しかねない。なにより、ファスカに追われ続けるという状況はあまりにも危険すぎる。パンチ一発でこっちを殺せる刺客とか考えただけで背筋が凍る。
ここで一発をもらうしかないのか。
「分かった。俺も全力で対応させてもらうぞ」
「たりめーだろ。オレも全力だ」
「え?」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「全力って、おまえそれ、地鳴り倒した時の」
赤い肌に、角、運動性能を爆発的に上昇させる状態。
「いくぞぉおおおおおおおおおおおおおお!!」
「こいやぁああああああああああああああ!!」
こんなんもう、死ぬ気で迎撃するしかないじゃねえか。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
神経を研ぎ澄ませ、奴はほぼ瞬間移動する。踏み込む瞬間を見逃せば、次の瞬間には壁の染みにされてもおかしくない。
鎧の性能を限界まで引き出せ、先読みをして、拳を逸らせ。
「消えっ」
ファスカのいた場所が爆ぜた、その瞬間には既に拳は俺の顔面の前に来ている。
「ぐ」
拳が、俺の頭を粉砕、する前に、ギリギリの、回避を、いや無理だこれ、このすぐ後に俺の頭は破壊されるだろう。
いや、破壊されるくらいなら俺の方からやってやらぁ!!
「がぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「っ!?」
カタハの機能を使い、殴られる場所を爆発させて多少のダメージと引き換えに拳の殺傷力を相殺させることを狙った。
結果は成功、俺の頭は残っている。
「はぁっ……はぁっ……!!」
「お前、爆発とか無茶するなぁ」
「ファスカに殴られた方があぶねぇんだよ!!」
「ははっ、それもそうだな。爆発よりもオレの一発の方が強い」
「全くだよ……」
相手の攻撃爆発を合わせるのはこれからも使えそうだ。
「これで許してもらえたってことで良いのか」
「ああ、良いぜ。そんで約束を破ってないって言うんなら、さっさと教えてくれよ」
「あ……それなんだけどな。今はちょっと時間がないというか」
「あ゛あ゛?」
「怒らないで聞いてくれ、いまちょっと困ったことになってて手が空きそうにない」
「それはオレが手伝えば早く終わるのか」
……ファスカの手伝い、それはなかなか良い提案じゃないか?
【爆発防御】
あての爆発をそんな風に使わないで欲しかったネェ
加減を間違えば体が吹っ飛んじまうヨォ?
ま、そうなればなったで、次に身体を補うのはあてのパーツだろうから
嬉しいけどネェ




