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栓をする

「世界を救う?」

「賢者の石が遺したものを本当に使えるのなら、ベータ世界、ガンマ世界の侵略を止めることができるはずデス」

「止めないと、この世界が滅ぶって言うのか?」

「もちロン、今はまだ詮が機能してイマス。デスがそれは永遠ではありまセン。それが壊れれば、このアルファ世界はベータ世界、ガンマ世界の手に落ちるでしょうネ」

「俺にその世界に行って、滅ぼしてこいと?」

「それはムリが過ぎる提案デスネ。あなたに頼みたいのは上からもう一度詮をする事デス」

「……?」


 てっきりそういう類の無理難題をさせられると思ったんだが。いや待てよ、これはたぶん詮をするというのは何か別の意味を持っているに違いない。勘だが、たぶん死ぬような目にあうんだろうな。


「……詮をするっていうのは具体的にどんな事をするんだ?」

「まあ、とりあえず最低限のダンジョンを攻略してもらって道具を集めてもらいマス。その後は詮に行って直接操作してもらえればそれで終わりデス。ひとまずはそれで時間を稼げるデショウ」

「そのダンジョンっていうのは……どれくらいあるんだ?」

「攻略の状態にもよりマスガ、まずは3つデス。最初は四魔人でいきまショウ」

「その四魔人ってのがピンと来ないが、いったいどこに居るんだ」

「ピンと来ない? ご冗談を、だってもう4つの城が出てマス。あなた意外にあの四魔人を出す条件を満たすような人が居るんデスカ?」

「城……? あいつらか……!!」


 あの災害どもを倒す……それはそもそもの目的とも合致する。あれを世に出してしまった責任が俺にはある。奴らを倒すことにもう1つ目的が追加されたと考えるか。ダンジョン攻略をする事で得られる物を考えればこの流れに乗ってしまった方が良いとも言える。


だが、言われるままに動くことには危険がある。まずパックを信用して良いか分からない。1度考える時間が必要だな。


「今返事はできない。考える時間が欲しい」

「それもそうデスネ。ここに泊まってもらっても良いデスカ王サマ」

「ん? そっちの話は終わったのか。まあ、ともかく余の夫が居城に泊まるのになんの不都合があろうか」

「オッケーだそうデス」

「そろそろ夫にはならないってことを分かってもらいたいですね」

「何を言うか。パックの協力を受けるということは余の協力を受けると言うこと。王の親族からの個人的な協力を受けられる立場はもう夫しかあるまい。もう事実上の婚姻ではないか」


 えー、そんな胸を張って言われても。事実上の結婚状態ではないと思うが、今はそれで甘んじておかないと話が終わらないだろうな。なんでこんなに結婚に拘るのかは今のところはっきりとはしていないが。


今聞いてしまうか?


「槍王陛下」

「余のことはロンと呼ぶがいい」

「……ロン陛下」

「なんだ? 夫よ」

「どうして結婚をそんなに急ぐのですか」

「そんなの余がいつ死ぬか分からぬからに決まっているではないか」

「まさか、身体が?」

「いや、すこぶる健康だが」

「ではなぜ?」

「明日空が落ちるかもしれぬ、今地面が砕けるかもしれぬ。何時だって人は死ぬ、何処だって人は死ぬ。それが真理であろう。だから余は生き急ぐ、できる事は今のうちに。掴めそうな運命は囲い込む。夫がそうだ、余が初めて見初めた相手なのだ」


 本気だ、これは本気の言葉だ。自分が本気で明日死ぬことを考えて、今できる全てを手に入れようとしている。これが槍王ロンか。


この覚悟を説得するのは大変だ、そもそも説得が可能かどうか。おそらく不可能だろう。だから俺はずるい手を使う、これは卑怯だ。それは分かっているが、ここで槍王に縛られるわけにはいかない。


「ロン陛下。私の家はビクトリウスであると申し上げました。それでも構わない、関係ないと陛下は仰せになりました。ならば、私への求婚はビクトリウスへの申し出として家長である母に話をしていただきたいと思います」

「なるほど、まずは家族に挨拶をというわけだな」

「そういうわけです。私の家は傭兵家業ですので、少し手荒いものになるかもしれません」

「構わぬ。荒い歓迎でも一向にな。それにビクトリウスは女傑の血筋であろう? 母君と会うのが楽しみだ」

「母の名は、マレフと言います」

「マレフ? マレフだと!? 死地渡りの凶刃か!?」

「ええまあ、今は一線を退いていますが」

「これは生半な覚悟では赴けぬな……文字通り死地になりかねぬ」


 家の名前、母親の異名、そんなのものを使う事はしたくなかった。それは俺のもとめる所から最も遠い振る舞いだ。今の俺では、上手く切り抜ける手段がなかった。許してくれ母さん、今から槍を持った王サマが実家に突撃してくるかもしれない。


「で、場所はどこなのだ」

「教えられません、そこも含めて当家への求婚なのです」

「むぅ……王の執務を休むわけにもいかぬ。合間を見つけて探すしかないか」

「申し訳ありません、これが当家の流儀なので」

「いや。良い。余が先に言った事だ。必ずや見つけ出してみせよう」

「ご健闘をお祈りしております」


よし、これで結婚問題も先送りにしたぞ!!



【死地渡りの凶刃】

女のいる場所はいつも最前線だった。それは死がありふれた地獄の入り口。

女はいつも無手だった。それは獲物に拘らないから。彼女が持つ武器は全てがその全性能を発揮した。

女はいつも笑っていた。自らの強さを誇っていたからだ。自分は生涯戦場にいるのだとそう思っていた。しかし女は戦いをやめた。

女が母になったからだ。


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