槍を掲げる者
場所によってはビクトリウスはめちゃめちゃ怨みを買っているからな……そんな場所だと身の振り方を少し考えないといけないぞ。
「レブン、俺は行くよ」
「友よ、また会おう」
海の中にレブンは消えた。俺はどこに向かうべきか、目を保護している間はスカイフィッシュもイカロスも使えないしなあ。手っ取り早く空から見るという手段がないとなれば、周りの景色からどこかを類推するしかないな。
「砂浜に、岩肌か」
判断要素が何もないぞこれは、どうせ陸地であれば補給は要らない身体だ。ゆっくり歩いて村でも探すか。幸い俺はビクトリウスとして動いた経験はほとんど無い、言わなきゃばれないだろうさ。
「どっちに行こうかな」
「ワンッ」
「ん? どうしたオゼロ」
「ワンワンッ」
「そっちに何かあるのか?」
オゼロが先導するように行ってしまった、無駄なことはしないだろうからきっとあっちには何かあるのだろうな。できれば人が居て欲しいんだけど。
「こっちか、どれどれ」
岩の影? 誰かが休んでいるのか?
「うわ……これは」
あるのは串刺しの遺体。胸を槍で一突きにされたようだな。で、こんな事をする場所は1つしか無い。前は盾王の場所にいたはずだが随分遠いところに来てしまったようだ。
「槍王の領地か……」
槍王は好戦的な性格で常に戦を臨む王らしい。だが、それと同時に都市を運営する手腕に関しては素晴らしいとも言われている。愚王なのか賢王なのか評価の難しい王とのことだが。
「これが槍王領名物、串刺し処刑なんだな」
残酷な刑ではある。だが、たぶんこの罪人は苦しんではいないだろう。急所を一瞬で貫かれ即死しているはずだ。
「ある意味慈悲深いのか」
とはいえ、第1発見者がこれとは幸先が悪いな。
「ごめんなオゼロ、これは死体で」
「がう!!」
「っ!?」
オゼロが攻撃した!? つまり敵が居る!?
「どっちだオゼロ!!」
「ワン!!」
あっちか!?
「くらえ!!」
敵の居るだろう方向にアルカを振る、長さは目一杯で良いはずだ
「どわぁ!? 待て待て待て!!!」
「話ならお前を無力化した後に聞こうじゃないか」
槍持ち、鎧に紋、正式な騎士の可能性がある。殺すのはもってのほか、できるだけ傷も着けたくないが……
「この通りだ、話をしよう」
槍を地面に突き刺した? 戦闘の意思はないということか?
「……分かった」
「かかったな不審者!!」
槍を蹴り飛ばして来やがった!? もうちょっと武器は丁寧に扱え!!
「がぁぁあう!!」
あ、オゼロが取った
「え?」
「……残念だったな」
「あー、なんだ? よくぞ受け止めたな」
「どの口が言ってやがる。これで和解の道が遠くなったぞ」
「顔は覚えたぞ、さらば!!」
「あ!?」
逃げやがった!?
「待て、と言って待つような相手ではないな」
これはまずい。何がまずいって、槍王の正式な兵士に敵として報告される可能性がある
「オゼロ、追跡するぞ」
「ワン!!」
オゼロならきっと匂いで追えるだろう。それで本隊に連絡される前に話を付けなければとんでもないことになる。
「ん? なんかデカくなって」
「ォオオオオオオオオオオオオオオオン!!!」
「や、これはもう狼だぞ!?」
「オン!!」
「……乗れって言うのか」
頷くオゼロ。このサイズなら確かに乗れる。
「行くぞオゼロ」
「ォオオオン!!!」
速い!! これなら追いつけるかもしれない。
「居たぁ!!」
「げ!? 狼なんてどこから!?」
「待てやぁあああ!!!」
「待つわけないだろ!!!!!」
「いや、待たなくても良い。もう射程圏内だ」
オゼロに乗って分かった、やっぱりオゼロも賢者の石製品だ。つまり、熟練工で使い方が分かる。
「ォオオン!!」
「な!? 首が!?」
見える位置までいけば、オゼロの首が届くんだよ。
「……くそっ」
「で、お前は槍王の騎士なのか」
「言わねえ。殺したきゃ殺せ」
「俺は別に他国の間者とかじゃない。追われる立場になるのを防ぎたいだけだ」
「そんな言葉を信じられると思うか? どうやってかは知らないが海から1人で勝手に来た奴がスパイじゃないわけがないだろうが」
「……疑うのは分かる」
どう言えば良いか……この状態だと何を言っても無駄だな。
「どうしたら信じてもらえる?」
「誰がてめえを信じるかよ。それに、いつまでも生かしておくと怖い人が来るぞ」
「怖い人?」
「ああ、とても怖いお人だよ。でも頼りになる」
「まさか既に救援を呼んでいるのか!?」
「さあ、どうかな? もう時間はないぜ」
空気が震えている、何かが飛んでくるのか!?
「オォオオオオオオオオン!!!!」
「くぅうううううううう!!?」
分からない、分からないが、アルカで防げるか!?
「ヤタ!!」
「カァ!!」
アルカを構え、そして壁抜けを発動する。
「これが今の俺にできる最大限だぁ!!」
「ん? 余の敵はお前か」
一瞬、一瞬だ、槍が俺の胸をすり抜けた刹那に馬鹿げた回数の突きが俺を貫いた。
「ほう? 位相をずらしているのか。面白いな」
「っ!? お前は」
「不敬ぞ」
「ぐぅ……!?」
身体が、動かない、それに、壁抜けの使用限界まで攻撃を通過させてしまったか。
「余はロン。槍王ロンである」
【槍王】
好戦的な性格と比類無き暴の力でもって領地を治める王
領地内で同時に目撃される事があり、影武者が大量にいるのでは?という噂がある
「王サマ、もしかして分身してる?とか言われてマス」
「余にあるのはこの槍だけだぞ、余が偉大すぎて幻でもみたのであろうな!!」




