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白き光、毛玉の瞳

「友よ、陸だ」


 おお、ようやくか。絶体絶命の状況からはこれで抜け出せたってわけだな。


「ここまでずっと運んでもらって悪かったな」

「何を言うか。友を背に乗せる時間は至福だ。今は飢えも冷えも感じぬ」

「そう言ってくれると助かる」


 これなら次もちゃんと乗せてもらえそうだ。いつ海に出るか分からないもんな。


「我輩の牙が友の助けになれば良いのだが」

「なるさ」


これで牙を受け取ればひと段落か。にしてもスカイフィッシュの調子が戻らないうちは移動に難があるな。


「友よ、これが我輩の牙だ」

「ああ。ありが……?」


 なにこれ、牙? というよりも、白いボールって感じなんだけど。


「これは……?」

「友よ、我輩の罪をここで話そう」

「いや、それはもう良いって」

「我輩は友を陸に上げることを躊躇っていた」

「ん?」


もしかして、カタハが言ってたことは正解で、レブンは俺を海に縛り付ける気だったのか? まあ、なんとなく理由は察しがつく。孤独と飢えの中にあって両方を満たせる相手が現れたら、それはもう抱え込もうとしても不思議はない。


「友から離れれば、我輩はまた飢えと冷えに怯える日々が始まる。ゆえに、我輩は躊躇った」

「……ずっと耐えてきたんだろう。俺にはそれを責められない」

「我輩は先の戦いで、自らの本分を思い出した。海中に合わせた姿を取り、海を美しく保つ機構が我輩の根本だ。恐らく製品同士が近づいたせいで干渉したのであろう」

「そうだったのか、思い出せたんだな」

「そして、我輩は友に渡す牙をどうすべきかを考えた」

「うん?」


 俺はただ刃物として歯が欲しかったんだけど、別の意味合いで牙を渡されるっぽいな。


「我輩は海から離れられぬ、それは変えようのない規律。されど一部なら、機能を受け継いだ子機ならばどうだ。本体は海から出られずとも、動くことが可能なのではないかと考えたのだ」

「つまり、これがその子機だと」

「然り。それはレブンにしてオケアノスである我輩から分かたれた分身。擬態する能力を引き継ぎ、陸に相応しい形になるもの」

「陸に相応しい形か……」


 陸のシャチ? なんだそれ。


「うおっ!?」


 白いボールが熱を持ちはじめた、そして震えている。


「出てくる……のか?」

「生まれ出でよ!!」


 破裂、そしてずるりと這い出るもの。


「白い毛玉?」

「ワンッ!!」

「……犬?」

「ふうむ、こうなったか」

「えっと、これを持って行けって?」

「まあ、そうだ。オゼロはきっと友の役に立つ」

「オゼロ?」

「生まれ出でし子機の名だ、名がないと不便だろう」

「オゼロか、分かった」

「ワンワンッ!!」

「うわっ、ちょ、顔を舐めるなって


 すげえ懐かれてる……嫌われるよりは良いけどな。


「オゼロ。俺の言うことは分かるか?」

「ワン!」

「お手、お座り、伏せ」

「ワンワンワン!!」


 おお、すごいな。俺が何をやって欲しいかを察してやがる。もしかしてすごく頭が良いのか? それとも俺の頭の中を覗いているとか? いや、まさかな。


「よーしよしよし!! 良い子だぞぉ!!」

「くぅーん……!!」


 え? 犬可愛い、とっても癒やし。


「ははは、は」


 背骨に氷をぶち込まれるような感覚、というかこれ内部からのプレッシャーだな。


「……カァ」

「ヤタ? どうした? 俺の中で休んでいるんじゃないのか?」

「…………(ぷるぷる)」


 え、そんな悲しそうな顔する? 鳥の身体で泣けるか分からないが今にも泣きそうな感じだぞ。


「オゼロを構ってたからか!?」

「カァ……」

「わわわ、ヤタも可愛いなー!!」


 これで機嫌が取れるかは分からないが、撫でていれば良いのか!? く、デーレ姉さんとかラァみたいな感じだったら経験値でなんとか対応できるんだが。こんな風になられると、困るぞ……


「カァ!!」


 ヤタが単純で良かった!!


「あ、戻っていった」


 身体の中にずぶずぶ沈んでいくのはちょっと不気味だな。


「……良し、これから気をつけよう」

「ワン!!」


 問題はオゼロが何をどこまでできるのかだな。主に戦闘面で。


「友よ、オゼロの能力は我よりも小さい。だが、我にできることでオゼロにできぬことはないぞ」

「……それはつまり」

「期待して良いという事だ」

「なるほど、楽しみにしておく」


 とりあえずは、機会を見てテストしよう。


「がぁう!!」

「っ!? どうしたオゼロ!!」

「ワンッ」

「……鳥?」


 なんでオゼロが鳥を? いつの間に仕留めたんだ。


「今起きた事を言おう、匂いに惹かれて飛んできた猛禽をオゼロがかみ殺したのだ」

「いや、鳥なんてどこにも」

「言っただろう。オゼロは我にできることは全部できると、変形など序の口。つまりは首を伸ばして空中の鳥を捉える事など容易い」

「ははっ……期待以上だ」


 ちょっと底が見えないな。あんまり強すぎると俺の成長の妨げになるような……


「オゼロは友の目になるだろう。友の一部になってくれれば嬉しい」

「目か、オゼロは片目じゃおつりが来るぞ?」

「そんな事があるものか」


 片目になった分を補うためか、それならまあ良いか。性能過多な気もするけどな。


「ありがとうレブン、もらったオゼロは大事にするよ」

「そうしてもらえると我輩も嬉しい」

「さて……と」


 1番の問題について考える時が来たな。


「ここは、どこなんだ?」








【オゼロ】

わんわんわーん!!

わんわんっ!!

わんわわーん!!

(某の名はオゼロ。主人たるシン様のため、身を粉にする覚悟であります!!

 たとえ火の中水の中、布団の中でもお守りいたします!! 

 でも、寂しいのと寒いのは嫌なので定期的に構って欲しいであります)

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