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双璧並び立つ

「ん……オレは……地鳴りを倒した……のか」


 軋む身体を無理矢理起こす、ここまで肉体を酷使したのは何時ぶりだ? でも、あの全能感は悪くなかった。最後の一撃は特に良かった。やっぱり良い剣だあれは。


「シン、やったな」


 近くに居るはずの相棒兼先生に声をかける、返事はない。なんだまだ寝てんのか? 仕方ねえか、オレよりずっと弱いのにあんなに頑張ったんだ。それくらいなら許してやろう、もう少し回復したら獣を捕って焼いてやろうか。肉を食えば回復も早い。


「これから、みっちり教えてもらうぜ」


 ん? 待て、寝てるにしても。あまりにも、あまりにも気配がなさすぎる。万が一、万が一だ、もう、死んでいるわけじゃ……


「シン!?」


 痛む身体を無理矢理起こす、居るはずの場所を確認する、そこには、何もなかった、死体も、なにも


「死んでは、いないのか」


 安堵する、他人をここまで心配したのはこれが初めてかもしれない。


「なら、どこに?」


まさか、まさかとは思うが、


「逃げた、のか」


 オレから? どうして? 利害は一致していたはずだ、ならなぜ?


「……お前もオレを避けるのか」


 身体に力が漲る感覚と共に、自分の身体が変わっていったのを覚えている。鏡がないから分からないが、きっと恐ろしい、醜い姿だったに違いない。


「オレを、裏切ったのか」


 あまりにも短い関係、それで信頼しあっていたというのは虫の良い話だ。それでも、それでも、それでも……!!


「オレは、お前を信じてたのによぅ」


 運命というものがあるのなら、命を運ぶというのなら、それはこれだと思った、この出会いはきっとそれなのだろうと、思っていたのに。


「ガラにもなく、少女趣味だったようだ」


幻想は要らない、今オレは何をするべきか。


「逃げたのなら、追う。手段は選ばねえぞ」


先に約束を破ったのはそっちだぜ。


「電撃に手を貸す、その方が早い」


オレの知る中で最も、シンを探すのに適した奴だ。生きているとは思っていたようだったが、まだ確信には至っていない様子が見えていた。生きていると伝え、そして、一緒に探す。


「絶対に見つけ出す、それからどうするかは……そん時だ」


申し開きのひとつ位は聞いて、そのあとボコす。


「んじゃ、行くか」


 足に力を込める、不思議だ、もう痛みはない。


「目的地は電撃、居場所は匂いで何となく分かる」


 覚悟しやがれ。


「……というわけで、お前の弟に裏切られて逃げられた」


 電撃のところまで行くのは案外簡単だった、常にビリビリしながら動いているわけじゃないからな。普段の移動はオレの方が早い。


「何を言っているのか分からないのだけど」

「言った通りだ、お前の弟のシンが約束を破って逃げた。オレだけで追うよりも、お前と一緒に探した方が早い」

「シンちゃんは、やっぱり生きているの……!!」

「あ? そう思ってたから探してたんだろ」

「可能性があるのと、確定しているのは別の事なの!!」


 うわっ、なんか泣き出した。


「……あなた、名前は?」

「ファスカ、ファスカ・ルーザス」

「そう。私はデーレ・ビクトリウスよ。これからよろしくね?」

「ああ、さっさと見つけようぜ」


 きっと、この選択は間違いじゃないはずだ。


「……それで、ファスカさん」


 ん? なんで戦闘態勢に入ってんだ。


「あなた、シンちゃんに手を出そうだなんて思ってはいないですよね」

「手を出すかどうかは、あいつの言い訳次第だな。何発か入れるかもしれねえぞ」

「……そういうことではなく」

「そういうことではなく?」


 じゃあ、なんだってんだ?


「シンちゃんは可哀想な子です。とても、とても良い子なのに。ビクトリウスに産まれた男というだけで呪いを受けてしまっている。強く、深い呪い。それでも、あの子は良い子のままだった。家族を大切にする、優しい子のままだった」

「何が言いてえんだ?」


 話が全く見えてこないぞ?


「健気で、努力家で、賢くて、可愛くて、格好いいんです」

「うん、聞こえてないみたいだな。何を確認したいんだ?」

「そんなシンちゃんを、好きにならない人が居るわけがないっ!! あなたもきっと、シンちゃんを狙うはず!! そうなればあなたは敵、協力はできないの」

「ええ……?」


 オレが思っているよりも、数倍やばいなこの姉弟。どうしたものかね。


「どうなの? あなたはシンちゃんが好き?」

「……嫌いじゃねえ」

「じゃあ……」


 天候まで変えるか、いきなり暗雲が出てきてゴロゴロと鳴り始めたぞ。


「まぁ、聞けって。これは別に、色恋の話じゃねえんだ」

「本当に……? 信じられない」

「先生になってもらわねえと困るんだよ、あいつくらいしかオレに教えてくれる奴がいねえんだ」

「困る? その力があって職人になる必要はないでしょう」

「好きでやりたいんだよ、文句あるか……!」

「へ?」


 ぽかんとしやがって、こいつも笑うのか


「……似ているわ」

「あ?」

「あなたも掴めぬものに手を伸ばし、欠けた破片を求める人なのね」

「詩を聞く趣味はねえんだが?」

「良いわ、信じましょう。あなたは敵にはならなさそう」

「わっけわかんねえ……」


まあいいか、これで協力体制ができたってことだよな?





















【雷雲】

雷に満ちた黒き従者、唸りを上げて解放の時を待つ。


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