夢々忘るるな
また感想いただきました!! ありがとうございます!! これからも私の作品に付き合っていただければ幸いです!!
「で? 我に何か言うことはないんでしゅか?」
「なんだいきなり、こっちは疲れて寝たと思ったんだぞ」
目の前に不機嫌なヤタがいる状況に叩き込まれただけだった。これじゃ、休むに休めない。
「なーにーかー!! 言うことはぁー!! ないのかなぁあああ!!!」
なんでこんなに機嫌が悪いんだこいつ。俺が寝てるのが気に食わないのか?
「分かった、今すぐ出て行く」
「はぁ!? なんでそうなるでしゅか!?」
「いや、俺が邪魔なんだろ? 分かってる」
「そーじゃないでしゅ!! 絶対に行かせないでしゅ!!」
そんな必死に縋り付かなくても、俺をここから出すかどうかはヤタ次第なんだけどな。
「えー、じゃあなんだ……俺が言わなきゃいけないことは……」
「我、結構頑張ったと思うんでしゅけど? 命を救ったと思うんでしゅけど?」
「それには感謝してる。何か礼を」
「それでしゅ!!」
「え?」
「もっと感謝の言葉を!! もっと労いを!! さぁ!! さぁ!!」
「いや、だからここじゃ礼なんて大したことは」
「いーからさっさと抱きしめて頭を撫でてありがとうお前がいてよかったって囁くでしゅ!!!」
「……今なんて?」
「2度は言わないでしゅ……」
あ、これは従った方が良いやつだ。信じられなくて思わず聞き返してしまったけど、本当なら聞き返すのもアウトだったな。
「分かった、それを望むなら」
「早くするでしゅ……半端にしたらもう助けてやらないでしゅ」
「それは困るな。全力で甘やかそう」
「それで良いでしゅ、ぎぶあんどていくでしゅ」
「ぎ? なんだって」
「うるさいでしゅ、早く我を甘やかすでしゅ」
「分かったって
うーん、まさかここに来てヤタが構ってちゃんの甘えん坊だと発覚するとはな。まあ、そもそも群れから追い出されたっぽいし、甘えることに飢えているのは不思議じゃないか。
「むふふ〜」
「力加減は良いか?」
「くるしゅうない、くるしゅうなぁい」
「殿様か」
「もっと撫でるでしゅ、止まり木は鳥の世話をするのが存在意義でしゅからね」
「はいはい、お前がいてよかったよ。ありがとう」
「心がこもってなぁーい!! やり直しでしゅ!!」
「心を込めるってなぁ」
「妹とか姉に囁くようにやるでしゅ!!」
え? 改まって言われると難しいな。というか、囁く機会なんてほとんどなかったしな。何度かのやつだって、ラァもデーレ姉さんもすぐに座り込んでしまったし。
「“ヤタが居てくれて良かったよ、本当に感謝してる”」
「カァッ!?」
「そんなに気色悪かったか、傷つくぞ」
カラスみたいな叫び声あげやがって、やれって言ったのはお前なんだからな?
「そ、そんなふうに、姉妹に話していたんでしゅか?」
「いや、普段は違う。耳元で小さく話す時だけだな」
「だとしてもド変態でしゅ、なんであんな色気を出す必要があるんでしゅか」
「色気……? 別にこれは言われた通りに練習してただけで」
「……それは誰から」
「そりゃあ、ラァとデーレ姉さんだけど? なんでも相手にバレずに耳打ちする話し方だとか」
「仕込み方がえげつねえでしゅ……なんで実の弟とか
兄にそんなことを」
「それで、囁くのはもう良いのか」
「……良いと言うまで続けるでしゅ」
どんだけやらせる気だ。
「どーせ、ここの事はうろ覚えになるでしゅ。だから言うんでしゅが」
「え、怖い話?」
「茶化すんじゃねえでしゅ!! 黙って聞くでしゅ!!!」
「あ、はい、すみません」
重い話はあんまり聞きたくないんだけどな。
「我はもう現実では飛べない体でしゅ、片羽はもう動かない。でも、我は空を飛べる。止まり木が代わりに飛んでくれるからでしゅ」
感謝、されているのか
「そもそも、我はあの時死ぬ定めだったんでしゅ、血溜まりに沈んで終わり。でも、そうはならなかった。止まり木が救ってくれた」
まあ、成り行きだけどな
「いけすかない同族も叩き落としてくれたし」
それも成り行きだ。
「何より、我の力を使ってくれる。必要としてくれる。それが何より嬉しいでしゅ」
ヤタ……お前そんなふうに
「だからなおさら、腹立たしい」
え? おっと風向きが?
「我より早く近くにいた木、盾の女、すり寄って来た人形、血縁は多めに見るとしても。止まり木には女が寄りすぎる」
あーれー? なんか良い感じで終わりそうな風だったじゃん?
「正直言って!! そいつらを撃滅してやりたいでしゅ!!」
言いやがった、止めるか? まだ話の続きはあるのか?
「我の止まり木でしゅ!! 誰のでもなく!! 我の!! 誰にも渡さないでしゅ!!」
今は聞く時間だ。トチ狂って口を挟もうものなら今以上にヒートアップするはずだ。
「でも、我は寛大でしゅ。止まり木に嫌われたくないし、大目に見るでしゅ」
ヤタが大人で助かった……いやマジで
「た、だ、し、今までのあれこれは忘れても今から言うことだけは持っていってもらうでしゅ」
なんだ、相当大事なことらしい。
「名前だけはちゃんと読んで欲しいでしゅ、ヤタと読んで欲しいでしゅ。それだけで今は満足でしゅ」
「分かったよ、ヤタ」
「それで良いでしゅ、忘れてたら承知しないでしゅ」
こりゃあ気合を入れておかないとな。
「起きてヤタ・デシュって呼んだら。止まり木の急所を攻撃するでしゅ」
「絶対忘れないから!!」
気合を!! 入れて!! おかないとな!! 俺の俺が死にかねないぞ!!!!
【囁き殺法】
説明しようっ!! 囁き殺法とは!! タガの外れた姉妹が仕込んだとんでも能力である!!
微量の電気と砂糖による矯正が行われた結果、囁く時のみシンの声にはf分の1の揺らぎに似た効果が発生し、相手の脳を強制的にリラックスさせてしまうのだ!!!
この技術が1番効く相手は仕込んだ本人たちである事は言うまでもないが、一応言っておこう!!!




