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お兄様さえいれば良い

「あてはどうするべきかネェ」


 ラァの攻撃範囲を考えると迂闊に前線に割りこめない、今はアイドールとラァがどうするかを見ておくのが良いだろうな。


「了解サ」


 ラァが本気で攻撃すると、範囲内にあるものは全部攻撃される。俺の身体もカタハの身体も耐えられるような生ぬるい攻撃ではない。


「なかなかどうして、難しい局面で」


 今は待ちだ、アルカを振るう時がきっと来る。


「どんどんいっくよー☆」


 ハート型のビームとかいう頭の痛い攻撃がラァに襲いかかる。その一つ一つが超高熱だというのだから、見た目では判断つかないものだ。


「投げつけるほどに持てあました愛に価値があるの?」

「見えない愛よりは上等でしょ☆」

「ふふ、可哀想」

「口の減らない子☆」


 うわぁ……割り込めない空気を形勢し始めた。相容れないっていうのがひしひしと伝わってきている。これは酷い戦闘になるぞ。ドロドロのな。


「内側から湧き上がる甘い想い、汲んでも尽きない泉、与えるものではなく、ただ心を満たすの」

「一目で分かる好意、有限でもそれと分かる対価、与えることで、身体を満たす」

「「それが愛」」


 主義が合わなすぎて話が噛み合わない、一言交わす度に逆鱗をなで回しているぞ。


「やっぱり可哀想、空っぽの愛を配るのね」

「届かない愛を持ち続けるのは哀れじゃないの☆」


 ぴしり、ヒビが入る音が聞こえた。まずいぞ、これはマジの奴だ。


「あなた、好きな人がいるのよね☆」

「それが何か?」

「でも、あなたの考えじゃその想いは届かない☆」

「……」

「言わないと伝わらない、示さないと分かられない、それが愛だよ。君の好きな人はきっとお兄様なんだろうけどさ☆」


 いや? めちゃくちゃ伝わってきたけどな……


「今、ラァの愛を否定しました?」

「したよ☆」

「……」


 あ、もうダメです。ラァはもう止まりません、だって砂糖が黒糖に変わっている。本気で殺す時にしか出さないんだコレは。前に一度見たのは依頼人が俺のことを馬鹿にした時だったか? とにかく、もう問答は終わりだ。


「万死、ですね」

「あはは、アイドールちゃんこわ〜い☆」


 どこまでもキャラクターを崩さないやつだ。ラァが本気になったのが分からないほど馬鹿というわけではないはずだが。


「バイバイ」

「アーガペービーム!!」


 黒の奔流とハート型ビームが拮抗する。


「もっと欲しいの? じゃあ、あげる」

「っ!?」


 増大した黒の奔流がハート型ビームを押していく、そしてついにはアイドールに届いた。


「飲み込む、跡形もなく」

「そんな、アイドールちゃんが、押し負ける、なんて☆」

「その程度で何を満たすの? それが愛だなんておこがましい」

「うるさいうるさいっ!! これがアイドールちゃんの愛なんだよぉおおおおおお☆」


 咆哮も虚しく黒糖に飲み込まれるアイドール、これであとは黒糖に握りつぶされてしまうだろう。なかなか印象深いやつだったな。


衣装(ドレス)……変更(アップ)……最終(フィナーレ)……形態(モード)……煌めきの王(スーパースタァ)


 爆発!? やばい、黒糖が吹き飛んだ、今のラァは無防備だ!!


「委細承知、ってネェ」


 俺の身体が動く。目標、前方。標的、妹を狙う敵。攻撃方法、アルカによる斬撃。


「そらっ!!」


 しなりを伴ってアルカが征く、触れるもの全てを切り裂いて道を作る。爆心地の中心にいるアイドールを両断するまで止まらない。


「手応えありサ」


 腕に伝わる感触、なにかを断った手応え。


「ざーんねん、斬ったのは羽でした☆」

「読まれたってのかィ」

「違うよ? あんまり遅いから見えてただけ」


 アイドールの衣装がまた変わっている。今度は煌びやかなドレスかよ。成金趣味というか、ゴテゴテというか……


「アイドールちゃんのこの姿を見たのは貴方達が初めてよ。さぁ、存分に楽しみましょう!!」


 ハートビームで殴ってきたやつだ、今さら何をしてきても驚かねえ。


「いっくよー、 キラッ☆」

「っ!?」


 正面が揺らぎ、何かが発生する!?


「くそっ!? なんだそれは!!」

「アイドールちゃんの輝きは、好きな場所に好きなだけお届けできるんだよ☆」


 揺らぎの中心から光を伴う衝撃波が発生した、ならばこいつの攻撃は座標指定のものか。動けば当たらないようなもんだったら良いんだが


「みんなに溢れるくらいのキラキラをあげるの、これが私の愛だから☆」


 あ、だめだ、()()()()()()()()()()()


「さあ、愛を受け取ってね☆」


 飛ぶか? いや上もダメだ、今から下に降りることも難しい、飽和攻撃に対して壁抜けがどこまで機能するかも分からん。どうする!?


「イッツァ、ショータァイム☆」


 一面を包む閃光、視界は塗り潰されたが、不思議と痛みはない。


「こいつァ」


 俺を囲むのは黒糖の壁、ラァの防壁だ。だが、なぜだ、俺だとは思っていないはず。


「借りは返しました、次はないですよ」


 ラァ、なんて良い子なんだ。一瞬だけ稼いだ時間を恩と思ったのか。


「今からアレを黙らせます、それまで大人しくしていてください」






【煌めきの王】

輝きをあなたに届けましょう

それが私の愛だから

それで貴方が死んだとて

私はけして悲しまない

愛を渡して逝くのなら

それはきっと幸いでしょう

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